テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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ばいおれんといんふぇるの！！

第8話 - 第8話甘くて辛い？バレンタイン♡

2025年02月18日

#VIOLENT_INFERNO

#一次創作

へる

甘くて辛い？バレンタイン♡

みんなが寝静まるはずの真夜中…

ドラン

むにゃ…

ドラン

のど、かわいた…

目を擦りながら冷蔵庫のあるキッチンへ向かう

ガチャ

ドラン

ほよ？

ドアを開くと甘い香りが漂う

ドラン

テオくん！！

テオドール

ドラン様。

テオドール

どうなさいましたか。

ドラン

あっ、えと

ドラン

お水飲みたいなーって

ドラン

テオくんこそ、どうしたの！？

テーブルの上に大量のお菓子の材料が並んでいる

テオドール

明日…いや、もう日付が変わりましたね。

テオドール

2月14日。

テオドール

何の日かご存知ですか？

ドラン

えー…

ドラン

わかんないや

テオドール

バレンタインデー。

テオドール

一般的に意中の相手にチョコレートを渡す日です。

ドラン

いちゅー…？

テオドール

"意中の相手"とは…。

顔の横に両手でハートを作る

テオドール

"好きな人"のことです。

ドラン

す、

ドラン

好きな人…！

つられてドランもハートを作る

ドラン

ということは、テオくんも！！

テオドール

ふふ、僕は違いますよ。

テオドール

毎年、日々の感謝を込めて

テオドール

お嬢様にスイーツを作っています。

ドラン

そっかァ。

テオドール

そしてチョコレートならリュウも喜ぶでしょうし

テオドール

もちろんドラン様にも。

ドラン

あたしの分も！！

テオドール

本当は渡すまで秘密にしておこうと思ったのですが。

ドラン

えへっ。

ドラン

もう見ちゃったのはしょうがないし、あんま眠くなくなっちゃったから

ドラン

作ってるの少し見てていい？

テオドール

…。

思いついたようにドランの瞳を見る

テオドール

…せっかくなのでドラン様も作りませんか？

ドラン

えっ

テオドール

リュウに。

ドラン

………

ドラン

うん！！！

チョコレートを作ろう！

身だしなみを整えたドラン

ドラン

ほぁー

ドラン

エプロン！！

テオドール

ふふ、お似合いです。

テオドール

さて、何を作りましょう。

テオドール

ドラン様、今まで料理はしていましたか？

ドラン

たまーにね！！

「ドランにメシを作らせちゃいけねぇんだ」

いつしかのリュウのセリフを思い出す

テオドール

(簡単なものにするか…。)

テオドール

トリュフにしましょう。

ドラン

とりゅふ？

ドラン

わかんないけど、

ドラン

うん！

テオドール

では、チョコレートを細かく刻んでください。

まな板の上に板チョコを置き、包丁を手渡す

ドラン

ほぁ〜

ドラン

これ使ったことないけど、こうだよね

左手の手のひらでチョコを押さえつけ右手で持った包丁を振り上げる

テオドール

うぉあぁっっっ！！！

テオドール

ストーップ！！

ドラン

ほよ？

指スレスレで手を止める明らかに長い爪を切り落とす位置に包丁がきている

テオドール

ちょっと！

テオドール

もう少し安全にできませんか！？

ドラン

え〜

ドラン

というか、これを細かくすればいいんでしょ？

製菓用の分厚く硬いチョコをいとも簡単に割る

ドラン

えいっ

パキャッ、パラパラ…

最後に握って細かく砕く

テオドール

…。

テオドール

すごい、ですね…。

ドラン

えへー。

ドラン

あっ

ドランの熱で表面が溶けて手にチョコがついている

ドラン

ありゃ。

テオドール

なるほど。

テオドール

手を使って成形するレシピは少し難しそうですね。

ドラン

んー、じゃあ

ドラン

"気をつける"よ！

テオドール

そういう問題なのでしょうか…。

ドラン

次やろ！

テオドール

わかりました…。

テオドール

では、生クリームを温めましょう。

鍋に生クリームを注ぐ

ドラン

温めるのなら得意だよ！！

テオドール

いや…。今回は火加減が重要なのでコンロで

ｺﾞｫｯｯ

テオドール

あ"…。

ドラン

どう？

ドラン

あったまった！！？

一瞬にして生クリームの半分は黒く焦げもう半分はボソボソと固まってしまった

テオドール

はぁ。

鍋の中身を適当な皿に移し新しい生クリームを再度鍋に注ぐ

テオドール

いいですか？ドラン様。

テオドール

料理は全て"適切な加減"が重要なんです。

ドラン

ほよ。

ピッ

コンロに火を灯す

テオドール

生クリームは加熱しすぎてはダメです。

テオドール

焦げたり、分離するので。

ドラン

そっかァ

小さな泡が出てきたところで火を止める

テオドール

こんな感じです。

テオドール

もう能力は使わないでくださいね。

ドラン

あい。

テオドール

次は、先程のチョコレートにコレを加えます。

ドラン

わかった！

テオドール

入れたらなめらかになるまで

テオドール

ヘラで混ぜておいてください。

ドラン

よいしょっ

少しの間ドランから目を離し、先程まで作っていた自分の料理の様子を見る

テオドール

(失敗しようのないレシピを選んだつもりだったのに…。)

テオドール

(ドラン様をナメていたな…。)

テオドール

(だが、生クリームの加熱さえ終わればなんの問題も)

バリッ、、バリッ

テオドール

………。

テオドール

ドラン様。

テオドール

なんですか、その音…。

またかと言わんばかりの表情で音の方向へ振り向く

ドラン

んー？

ドラン

さっきの入れただけだよ！

鍋に入ったクリームだけでなく、失敗した半焦げクリームまで投入している

テオドール

………………｡

テオドール

…ふふっ、あははははっ

あまりのアホさ加減に笑い出すテオドール

ドラン

え、なんかおかしい！？

テオドール

なんで入れたんですか(笑)

ドラン

もったいないしー

ドラン

おにくも少し焦げてたほうがおいしいよ！！

テオドール

ふっww

テオドール

どうしましょ、コレ

ドラン

えー、別に大丈夫だと思うけどなぁ

テオドール

そうですね。
アイツなら食うか(笑)

テオドール

多分固まらないので、もう少しチョコ足しましょう。

分量合わせ(+焦げを隠蔽する分)のチョコを追加する

ドラン

おー！とろとろじゃなくなってきたね！！！

テオドール

固さはいい感じです。

テオドール

そのまま少し置いておいてください。

周りをある程度片付けてオーブンシートやスプーンを用意する

テオドール

次はこれを一旦、少しづつ分けます。

テオドール

次の段階で丸めるので、下準備です。

ドラン

まるめる！

テオドール

あ、ドラン様は…。

テオドール

こっちの方がいいですね。

熱伝導で溶けないよう、木製のスプーンを渡す

ドラン

ありがとうー！

クッキングシートに少しづつ分けていく

テオドール

…ドラン様。

テオドール

もう少し均等にできませんか？

明らかに一つ一つ大小の差が激しい

ドラン

うー、同じようにしてるんだけどなぁ…

テオドール

まぁ、慣れですね。

テオドール

なるべくで大丈夫です。

ドラン

テオくんみたいに器用にできたら良いんだけど！！

テオドール

確かに手先が器用だと様々な場面で役立つのは確かです。

テオドール

なにか、細かい作業を趣味にしてみてもいいかもしれません。

ドラン

趣味かぁ。

テオドール

料理でも、編み物や裁縫などもいいですね。

ドラン

ほぁー

ドラン

編み物…そういうのやったことないなぁ

ドラン

テオくんはできる？

テオドール

そうですね、一通りはできます。

ドラン

そか！じゃあ後で教えてほしいな！！

テオドール

はい、是非。

そうこう話している間に分け終わる

テオドール

では、少し冷蔵庫で冷やします。

テオドール

10分ほど待っていてください。

ドラン

わかった！！

チョコは待ち時間がもどかしいね！

休憩時間！！

引き続き調理を続けるテオドールを椅子に座って眺めるドラン

ドラン

ねぇ、テオくん

テオドール

なんですか。

ドラン

テオくんはさぁ

ドラン

おりゔぃあのこと、好きじゃないの？

ｶﾞｯ

包丁で刻んでいたナッツが1粒弾き飛ぶ

テオドール

あ。

テオドール

…急にどうしてそんなことを聞くのですか。

ドラン

さっき「僕は違う」って言ってたから

ｳｨｰﾝ

小型掃除ロボが現れ、落ちたナッツを吸い込む

ドラン

それとも"らぶ"じゃなくて"らいく"ってやつ？

ドラン

おりゔぃあに教わったよ

テオドール

…そうですねぇ。

テオドール

感情って、好きか嫌いか以外にもあるじゃないですか。

テオドール

僕のは、「like」と言うより「respect」です。

ドラン

また知らないのがでてきた…

テオドール

お嬢様は僕の何よりも大切な人です。

テオドール

お嬢様の為なら命だって惜しまない。

テオドール

でもこの気持ちは、愛とはベクトルが違うと思うのです。

ドラン

むー。

噛み砕いて伝えようとするテオドールの言葉をイマイチ理解できていないドラン

テオドール

例えば、

テオドール

ドラン様が苦手なことを簡単にできる人がいたらどう思いますか？

ドラン

すごいなー！ってなる！！

テオドール

そうですね。

テオドール

その感情が大きくなると、"尊敬の念"となります。

ドラン

うん…。

テオドール

そしてやがて"信仰"に近い感情へと成長することもあるのです。

ドラン

しんこう…

ドラン

その人のことを"すごーくすごい！！"って思ってて

ドラン

あたしもそうなれたらいいなー！っていっぱい思うって感じ！？

ドラン

この前の女神様みたいな！！

最近訪れた街の中心にそびえ立っていた真っ白の女神像を思い浮かべる

テオドール

その捉え方でいいと思います。

テオドール

とはいえ、信仰も愛の一種という考え方もあるので

テオドール

明確な答えを提示することはできないのですが…。

テオドール

少なくとも、"ドラン様の仰っている「Love」"は

テオドール

僕のお嬢様に対する感情と少しズレています。

ドラン

そっかー。むずかしいなぁ

頬杖をついて唇を尖らせている

ドラン

でもね！

ドラン

おりゔぃあは絶対テオくんのこと「らぶ」だよ！！

テオドール

………。

忙しなく動いていた手がピタリと固まる

ドラン

おりゔぃあはあたしと2人の時ね！

ドラン

たくさんテオくんの話してるんだよ！！

ドラン

テオくんのこと大好きなんだよ！！

椅子の背もたれの隙間から出しているしっぽがゆらゆらと嬉しそうに揺れている

テオドール

…はは、

テオドール

そんなことないですよ。

ドラン

いや、そんなことあるって！！

ドラン

すっごく楽しそうな顔するもん！

ドラン

おりゔぃあの部屋にある"まんが"？の女の子とおんなじ！！

テオドール

………………｡

止まっていた手が再び動き出すボウルと泡立て器の当たる音が小刻みに聞こえる

テオドール

…少しでも僕の存在がお嬢様にとって良いものであるなら嬉しいです。

テオドール

ただ、お嬢様にとって絶対的存在に位置するものは科学です。

テオドール

それに比べたら僕の存在意義なんて極わずかにすぎません。

テオドール

ですからそれは、ドラン様の思い違いです。

無表情のまま淡々と述べる

ドラン

なんか難しくてよくわかんないけど

ドラン

テオくんがいる時といない時で

ドラン

おりゔぃあ、全然違うんだからね！！！

ドラン

もっとね、あたしは2人に仲良くなってほしいんだ！！

ドラン

それに、テオくんもたまにおりゔぃあとおんなじ顔してるから…

ドラン

2人とも"らぶ"だと思ったんだもん！

テオドール

…本当ですか？

ドラン

え？

テオドール

顔に出てるんですか？

ずっと無表情だったテオドールだが、ドランの発言に微かに眉をしかめている

テオドール

…というか、どんな顔ですか？

ドラン

えっとね、

ドラン

"まんが"？で、どきどきしてる時の顔みたいな…

テオドール

………してないです。

テオドール

…断じてしていません。

心を落ち着かせるためか冷たい自分の両手を頬に当てている

ドラン

テオくんってさ

ドラン

無表情な時が多いから、逆にわかりやすいよね

クスッと笑うドラン

テオドール

はぁ〜…。

テオドール

………。

テオドール

……ドラン様って、本当に正直ですねぇ。

テオドール

お願いですから、普段から僕がドラン様と話していることは

テオドール

あまりお嬢様に言わないでくださいね。

ドラン

ほぇ。

テオドール

とにかく、お嬢様は僕が幼い頃からの憧れです。

テオドール

お嬢様が自由に心置きなく研究ができる環境をつくり、守ること。

テオドール

それが僕の使命です。

テオドール

お嬢様の創りあげるものを傍で見届けたい。

テオドール

僕はそれ以上何も望みません。

ドラン

んー。

ドラン

でもね、おりゔぃあ、テオくんと距離が遠いって言ってたの

ドラン

あんまり仕事ばっかりしないでほしいって…

テオドール

…ドラン様。

テオドール

僕は2度も大きな失敗を犯しました。

テオドール

…お守りすると言いながら、僕のせいで取り返しのつかないことに。

テオドール

あの身長も、両腕も…。

器具を持つ手に力が入り、嫌な金属音が小さく響く

ドラン

うーむ

ドラン

…過去のことはわからないけど

ドラン

腕は、あたしやりゅーのためでもあったんだから

ドラン

テオくんのせいじゃ…

テオドール

違います！

急に声を荒らげる

テオドール

お嬢様が"選んだ"んです！！

テオドール

自分の両腕でなく「僕の命」を！！

テオドール

あの時、僕が犠牲になっていれば！！

「お主のような出来損ないの邪魔者を救うと思うか。オリヴィアがお主を選んだのじゃ。」

「愛しき姫の願い、仕方がなく叶えたまで。可哀想に。研究者の両腕は命も同然だろうに…」

「紛れもない、これはお主の罪じゃ。」

「死にたきゃ勝手に死ね。オリヴィアの覚悟を無下にする気があるのならな。」

テオドール

………。

自分に向けられた冷たい少女の声を思い出す

ドラン

大丈夫…？

テオドール

すみません。この話はやめましょう。

テオドール

これからも僕は

テオドール

お嬢様の道具としてこの身を捧げるつもりです。

ドラン

…わかったよ。

ドラン

でもね、もう少しでいいから

ドラン

オリヴィアとの時間を増やして欲しいんだ

テオドール

…そうですね。

テオドール

最近、お嬢様にも働きすぎだと指摘されているので…。

ドラン

うん！

ドラン

おりゔぃあも喜ぶよ〜！！

テオドール

…きっと、お嬢様も話し相手ができて嬉しいのだと思います。

テオドール

これからも、お願いします。僕にはできないことなので。

ドラン

もっと話せばいいのになぁ

テオドール

僕ももう少しドラン様のように正直になれたらいいのですが。

ドラン

大丈夫、テオくんならできるよ！！

テオドール

…ありがとうございます。

2人とも表情に笑顔が戻る

ドラン

でも、やっぱり"らぶ"って素敵だと思うの！！

ドラン

あたしはね！りゅーのこと、絶対"らぶ"だよ！！！

ドラン

大好き！！！

屈託のない、キラキラとした笑顔を見せる

テオドール

………。

テオドール

…そうでしょうか。

思わず、小さくつぶやく脳内に何かが引っかかっていた

時折見せる今とは全く別の表情愛と呼べるのか、黒くドロドロと滲み出る感情

何が本当の彼女なのか、未だにわからない

ドラン

ん、ごめん
なんか言った？？

テオドール

…！

ドランの問いかけに、はっと我に返る。

テオドール

あ、いえ…。

テオドール

ドラン様の、言う通りだと思います。

にっこりと笑みを浮かべる

ドラン

えへへー！

テオドール

そろそろ、続きをしましょうか。

ドラン

うん！

調理を手早くキリのいいところまで終わらせて作業スペースを片付けるテオドール

さて！完成まであと少し

作業再開！

テオドール

あとは丸めて、トッピングをするだけです。

ドラン

わかったー！

テオドール

手で丸めてしまえば早くて綺麗なのですが…。

ドラン

むー。

温かな手をぐーぱーぐーぱーしている

テオドール

この作業もスプーンでやりましょう。

ドラン

うい。

スプーンでひとつひとつ丸めていく

テオドールが作ったものは綺麗に整列していくが反対にドランの方は歪なものが不均等に並んでいく

ドラン

無理かも…

テオドール

大丈夫ですよ。

テオドール

コーティングしてしまえば気になりません。

ドラン

テオくん優しい…！

ドラン

あ、これさ！

ドラン

何個か中に何か入れてもおもしろそうじゃない？

テオドール

ふふ、いいかもしれません。

テオドール

何を入れましょう。
お菓子作りの材料なら一通りあります。

ドラン

えーっとねぇ

冷蔵庫をいろいろ探り、いくつか持ってくる

ドラン

これとか！！！

テオドール

…えッ、。

ドランが持ってきたのを見ると…

・唐辛子・タバスコ・からし・ワサビ・角切りベーコン・ささみ

テオドール

あー、えっと

テオドール

ドラン様の好物ですね…。

ドラン

うん！！！

テオドール

あの…やめたほうが…。

ドラン

絶対美味しい！！！

キラキラの目を輝かせている

テオドール

…えっと、食べ合わせというのもあります。

テオドール

1つずつチョコと合わせて試してみたらいかがですか…。

あまりの期待の眼差しにダメだと言えない

ドラン

わかったー！

手元の歪なチョコに大量のタバスコをかけて食べる

ドラン

これは…

ドラン

おいしい〜！！！！！

テオドール

…はは。

予想通りの展開ドランの舌の馬鹿さ具合はみんな既に知っている

テオドール

(リュウ…。)

テオドール

(悪いな！)

心の中でリュウに謝罪し、潔く諦める

テオドール

ドラン様、お嬢様はシンプルなものが好きなので

テオドール

ドラン様とリュウの分だけでいいですよ。

ドラン

うん！！

ドラン

2個ずつ作るー！

テオドール

全て丸め終わったら

テオドール

仕上げにココアパウダーをまぶします。

テオドール

せっかくなので数種類用意しましょうか。

ココアパウダー・粉砂糖・抹茶パウダー砕いたナッツ・きな粉を持ってくる

テオドール

少し出して、これを上で転がします。

ドラン

おー！！！

あっという間にお店に並ぶようなカラフルな見た目のトリュフに変身する

テオドール

多少形が歪んでいても、この工程でだいぶ改善されますよ。

ドラン

わーい！！

楽しそうに粉をまぶすドラン

ドラン

…そうだ！

ドラン

粉といえば…

テオドール

(あぁ、嫌な予感がする)

何やら冷蔵庫から持ってくる

ドラン

あった〜♪

嫌な予感はもちろん的中手には粉唐辛子…

テオドール

ドラン様は、本当に辛いものがお好きですね…。

ドラン

うん！！

ドラン

おいしい！！！

普通のチョコと、タバスコ入りを2つずつ赤にする

テオドール

最後にカップに入れて完成です。

テオドール

数が多いので、箱に入れずこれでいいですね。

他に何に使うのか、トリュフにピッタリのたくさんの正方形に仕切られた容器を持ってくる

ドラン

よいしょ、よいしょ！

ドラン

わー！売ってるやつみたいだね！！

ドラン

…………

ドラン

よし

ドラン

完成ーっ！！！

テオドール

お疲れ様です。

こうしてドランのチョコレート作りは無事(？)完成したのであった

ドラン

ふぁぁ〜

ドラン

できた！って思ったら眠くなってきちゃった

テオドール

冷蔵庫に入れておきます。

テオドール

もうゆっくり休んでください。

テオドール

とはいえ、もう数時間もすれば朝ですが。

ドラン

うん、そうするよ〜

ドラン

テオくんはまだ作る？

テオドール

はい。こちらももう焼くだけです。

ドラン

なんかごめんね！私が来たせいで長引いちゃって！

テオドール

そんなことないですよ。

テオドール

久しぶりに誰かと料理ができて楽しかったです。

ドラン

あたしも楽しかった！
ありがとう！！

ドラン

でも、テオくんも休んでね！！

テオドール

はい。

テオドール

では、おやすみなさい。

ドラン

おやすみ〜！！！

2人の反応が楽しみだね！！！

2月14日の朝、バレンタイン♡

オリヴィア

〜♪

リュウ

お嬢、随分と嬉しそうだな

オリヴィア

ふふふ〜、リュウくん！

オリヴィア

今日1番喜ぶべきなのは貴方よ♡

リュウ

あ？

毎年のことなので、朝から機嫌のいいオリヴィア

ドラン

んふ〜

遅れてドランも降りてくるいつもよりも眠そうだが、表情はにこにこ

リュウ

…？

リュウ

ドランも嬉しそうだな

コンコン

テオドール

入りますよ。

オリヴィア

はーい♡

ガチャ

ドアを開けるテオドール横の台に置かれた大きなケースを持ち上げる

リュウ

……あ"ｯｯｯ！！！

テオドール

Happy Valentine.

まるで工芸品のように美しくチョコやホイップで飾り付けられた大きなガトーショコラ

3人の視線を集めながら机に置かれる

リュウ

え"ッ、なんっ
え！？

何の日かもわからず甘い香りに脳が錯乱するリュウ

リュウ

うまそ…

ドラン

すごーい！！！

ドラン

美味しそー♡

オリヴィア

おっきい〜！！

オリヴィア

今年はガトーショコラね！

テオドール

いつもと違うものを、と思いまして。

テオドール

今回はナッツをふんだんに使っております。

オリヴィア

ほら〜、言ったでしょ？

オリヴィア

バレンタインはリュウくんが喜ぶ日！！

リュウ

………(ぽけー)

オリヴィア

聞いてないわね

テオドール

切り分けましょう。

包丁を入れると、中にゴロゴロとナッツが入っている

オリヴィア

こんなにナッツを使うなんて珍しいわね

テオドール

いつもスイーツの材料を購入している店のオーナーが

テオドール

異国の旅行土産としてくださったのです。

テオドール

かなり質のいいものですよ。

オリヴィア

そんなに仲良いのね

テオドール

リュウが来てから利用する機会が大幅に増えましたので…。

話しながら切り分けたガトーショコラを 3人の目の前に置いていく

テオドール

では、どうぞ。

リュウ

はむっ

瞳がきらりと輝く

リュウ

うめぇぇぇ！！！！

リュウ

いつものケーキと違うけどすげぇウマい！！！

ドラン

ほんとだ！！！

ドラン

味が濃いのにたくさん食べれそう！！

オリヴィア

ナッツの食感がいいわね

オリヴィア

それに比べて、生地は口に入れた瞬間溶けるようで

オリヴィア

良いコントラストだわ

オリヴィア

上のチョコレートもとっても美味しい

テオドール

それは良かったです。

感想を聞いて笑みを浮かべるテオドール

テオドール

今年は、もう1つあります。

リュウ

まだあるのか！？

ドラン

むふーっ

テオドール

こちらです。

色とりどりのトリュフを机に置く

リュウ

おおーっ！！！

ドラン

むふむふーっ

オリヴィア

あら、こんなこと初めてね

テオドール

(あの、お嬢様。)

オリヴィア

？

テオドール

(実は…。)

2人に聞こえないように耳打ちする

テオドール

(ということで焦げたクリームが入っているのです…。)

テオドール

(僕が食べたところ、食感と味に影響はありますが)

テオドール

(材料もいいものですし、食べられはします。)

オリヴィア

(なるほどねぇ。
まぁ、そのくらい大丈夫よ)

リュウ

なんだ？

テオドール

あっ、いや

テオドール

なんでもないです。
食べていいですよ。

テオドール

とりあえずこれどうぞ…。

リュウ

やったぜ♪

自分で丸めた、形の綺麗なものを渡す

リュウ

……ん

テオドール

……。

口に入れるなり、何かに気づいたようにテオドールの顔を見たあとドランに視線を移す

ドラン

……(にぱっ)

リュウ

流石"テオドール"。
やっぱすげぇ美味いな〜

ドラン

そうだねぇ〜♪

テオドール

(流石リュウ…。)

テオドール

(ドラン様が夜起きていたことも知らないだろうに)

テオドール

(一瞬でバレたな…。)

オリヴィア

そうね！トリュフも美味しいわ♪

オリヴィア

(確かに言われてみれば少し舌触りが悪いのと焦げた匂い…)

オリヴィア

(でも意外とわかんないかも)

ドラン

ほらりゅー！

ドラン

まだあるよ！
こっちも食べて！

リュウ

お、おう

ドラン

はい、あーん♡

多少強引にリュウの口へトリュフを入れる

リュウ

ん…

リュウ

んぅ"ｯｯ！？

リュウ

ぐむ"ｩｯｯ！！

たちまち涙目になり口を押さえて下を向く

ドラン

どう！？どう！？
おいしい！？

リュウ

ん"ん"ん"ん"ｯｯｯ

明らかにおいしいという反応ではない

オリヴィア

ちょっと、どうしたの！？

オリヴィア

大丈夫！？

テオドール

(お嬢様…！)

テオドール

(多分あれ、唐辛子が入ったやつです。)

テオドール

(恐らく相当辛い種類の…。)

オリヴィア

あー…(察し)

リュウ

(ごくんっ)

汗を浮かべ、すごい形相で口の中のものを飲み込む

ドラン

ねぇ！！！
おいしかった！？

そんな姿もお構いなしに期待の眼差しで問いかける

リュウ

………

リュウ

…あぁ。

オリヴィア

(リュウくぅぅぅん！！！)

テオドール

(お前って奴は…！！)

オリヴィア

(なんて優しい男なの…！！)

ドラン

でしょ！！！

ドラン

あのね！
もーっとおいしいやつあるの！

リュウ

…へ？

テオドール

あっ。

ドラン

はいっ、あーん♡♡♡

ドランの手には、真っ赤なトリュフ…

リュウ

あ…ぅ

リュウ

テオ、助け…っ

テオドール

………。

テオドール

(ごめんな。)

リュウ

…ッ、

リュウ

〜〜〜〜〜〜ｯｯｯｯｯｯ！！！

バレンタイン、天国と地獄をみた

しばらくして…

リュウ

ぐすっ、ぐすっ……

ボロボロと涙を流してガトーショコラを食べるリュウ

ドラン

…なんで泣いてるの？

オリヴィア

リュウくん、完食したわね

テオドール

ドラン様の分まで食べさせられるとは…。

ドラン

『そんなおいしいなら、あたしの分もあげるー！』

オリヴィア

あの子、悪気は一切ないのが困るのよね

オリヴィア

でも、ちょっとリュウくんも良くなかったわよねぇ

ドラン

『あれ？りゅーもしかして辛いの苦手？』

リュウ

『い、や…そんなこと…ない…』

リュウ

『ちゃんと…おい…し……』

ドラン

『そっか！じゃあまだあるよ！！』

テオドール

あのタイミングで素直になればドラン様も止まったかもしれないのに…。

オリヴィア

普段は煽るし、意地っ張りなくせに

オリヴィア

こういう時だけどうしてあんななのかしら

テオドール

悲しませたくないのでしょうね…。

オリヴィア

そういえば、前にドランがリュウくんは

オリヴィア

あたしの作ったご飯残さず食べてくれるーって言ってたわ

オリヴィア

優しいわね

テオドール

ドラン様に対してだけではないと思います。

テオドール

リュウは、野菜がものすごく苦手なんです。

テオドール

でも、依頼先などでご馳走になった際は必ず残さず食べています。

テオドール

顔に出ているのが気になりますが…笑

オリヴィア

ええ。それに

オリヴィア

食事が揃うなり、すごい速さで全部の料理に手をつけてw

オリヴィア

リュウくんってどうしてあんなに気が回るのかしら

テオドール

はは、ドラン様は食い意地を張っていると怒っていますが…。

テオドール

…やっぱり、毒味をしてくれているのでしょうね。

テオドール

幸い、今まで食事に毒を盛られたことはありませんが…。

オリヴィア

依頼人が善人とは限らないし、いつあたってもおかしくない…

オリヴィア

ほんの少し毒に耐性があるってだけで、すぐ体を張るんだもの！

オリヴィア

私たちが助かってきたのは事実だけど。

オリヴィア

解毒剤を何種類作ってきたことやら…

ドラン

えへへー、実はね

ドラン

あたしがテオくんと作ったんだよ！！！

今更わかりきったことを嬉しそうに話すドラン

リュウ

ああ。

リュウ

ありがとな。

ドランの頭をぽんぽんと撫でる

ドラン

えへー

リュウ

…来年も期待していいのか？

ドラン

ほよ？

ドラン

うん！！！

リュウ

…激甘なやつで頼むわ

リュウ

俺は甘いのが1番好きだからな

ドラン

わかった！！！

満面の笑みが溢れる

オリヴィア

リュウくん、完全に扱いをわかっている…！！

リュウ

…それにしても

リュウ

チョコレートを食べる日なんてものがあるんだな

4切れ目のガトーショコラを頬張りながら呟く

ドラン

あのね、バレンタインだって！

ドラン

好きな人にね！チョコレートを渡すの！！

リュウ

んぅｯｯｯ！！？

身体がガタリと揺れる

リュウ

……ドランは、テオドールの手伝いか…。

ドラン

いーや？

ドラン

あたしはりゅーに食べて欲しかったんだよ！！

リュウ

…ｯ。

顔が熱くなるのを感じる

さっきの｢来年も期待していいのか？｣という発言深い意味のないはずだった台詞が急に恥ずかしくなる

リュウ

さっ、さっきの！！
無しだ！！

ドラン

え？どれ？？

リュウ

いいから！！忘れろ！！！

ドラン

ほよ〜

オリヴィア

ふふ、仲いいわねー

テオドール

そうですね。

オリヴィア

……

テオドールのスーツの裾をくいっと引っ張る

テオドール

…どうなさいましたか？

オリヴィア

私からも、ありがとう

オリヴィア

毎年のことだけど…

オリヴィア

来年も期待しているわ

テオドール

…はい。

テオドール

お嬢様に喜んでいただけるよう、全力でお作りします。

オリヴィア

…やったぁ♪

バレンタインもみーんな仲良し♡

ホワイトデー編に続く！！

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へる

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ばいおれんといんふぇるの！！

第8話 - 第8話甘くて辛い？バレンタイン♡

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