スマイルさんに連れてこられたのは
会社から歩いて数分のところの地下にある、お洒落な飲食店だった。
慣れない雰囲気に、周りのキョロキョロしながらスマイルさんの後を追う。
店員さんに案内されたのは、これまたお洒落な個室だった。
店員
店員さんが引き戸を閉めると、個室は完全個室になった。
外から中の様子も見れなくなる。
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スマイルさんからメニュー表を受け取る。
メニュー表を見るが、横文字ばかりでよく分からない。
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スマイルさんはそれだけ言うと慣れた様子で店員さんを呼び、
メニューを注文した。
店員さんが引き戸を閉めると、個室に静けさが訪れる。
…
…
静かな個室に聞こえるのは、店内に流れるエスニックな音楽だけだった。
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静かな空気が漂う中、スマイルさんの低い声が個室に響いた。
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僕がそう言うと、個室は再び静かな空気に包まれる。
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このままじゃ気まずいだけだ。
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静かな空気に耐えきれず、ずっと気になっていたことを聞いた。
するとスマイルさんがゆっくりと視線を上げ、僕の方を見た。
吸い込まれそうなほど綺麗な紫色の瞳が僕を捉える。
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あぁ、やっぱり。
先日の出来事は夢ではなかったんだ。
分かってはいたけど、スマイルさんの口からはっきり言われると
頭が鈍器で殴られたような強い衝撃が走る感覚がした。
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制止したスマイルさんの声も聞かず、診断書を見たのは僕なのに…
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スマイルさんはそういうと、テーブルに置かれた水が入ったグラスを手に取った。
グラスに入った氷がカランと音を立てる。
…
… 僕は、昔からよく人に関わってきた方だ。
だから、スマイルさんの様子の違和感にもすぐに気づいた。
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…
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僕がそう言うと、スマイルさんは驚いたように目を見開いた。
なんてことないように淡々と言ったスマイルさんの言葉。
それが、僕にはスマイルさんの本心に聞こえなかった。
淡々と喋る口とは対照に、
スマイルさんの震えている手、
苦しそうな顔。
それを見れば、スマイルさんが嘘をついていることはすぐに分かった。
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スマイルさんの気持ち、全部は分からなくとも少しなら分かる気がする。
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コンコン
ちょうどそのとき。
引き戸がノックされ、料理を持った店員さんが引き戸を引いた。
店員
店員
店員さんの声と共に、テーブルに温かな料理が置かれる。
僕の方に置かれたのは、牛肉のロティだった。
美味しそうな匂いが、鼻腔を擽る。
店員
…
sm
店員さんがいなくなって僕が美味しそうな料理を眺めていると
スマイルさんがそう言った。
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料理を口に運ぶと、柔らかい肉が口の中に広がる。
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口に運んだ肉を堪能していると、
向かいで抹茶パスタを食べていたスマイルさんが口を開いた。
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スマイルさんの瞳が悲しげに伏せられる。
スマイルさんのそんな悲しそうな表情を見るのは、初めてだった。
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目を奪われそうなほど綺麗なスマイルさんに問われ、
僕はゆっくりと頷いた。
sm視点
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学生時代
同級生
同級生
同級生2
同級生2
担任
ある日、担任に大事な話があると呼び出された。
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担任
担任
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担任
担任
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担任
担任
担任
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sm 父
sm 母
sm 母
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元々3人で暮らしていたその家は、
独りで暮らしはじめると、とても広く感じた。
…両親が今どうしているかは知らない。
知ろうとも思わない。
何をしても、褒められるのはいつもDomだった。
周りの大人や同級生はみな、『Subの俺』を見下していた。
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悔しかった。
何度も、自分がSubであることを恨んだ。
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本当は、人にバラしてほしくない。
態度を変えてほしくない。
俺を…
俺を『Sub』として見てほしくない。
今の職場は学生時代と比べ、ダイナミクスを気にしている人は少ない。
それは充分、分かってる。
だけど
それでも
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もし、俺がSubだと言って周りの反応が変わったら?
Subであることを噂され、見下され、蔑まれてしまうかもしれない。
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『Subのくせに。』
『Subだから。』
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…
テーブルの上に置かれた抹茶パスタは、とっくに冷めきっていた。
コメント
2件
話の展開が超好きです!!あと、smさんの食べてたパスタめっちゃおいしそう...