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スマイルさんに連れてこられたのは

会社から歩いて数分のところの地下にある、お洒落な飲食店だった。

慣れない雰囲気に、周りのキョロキョロしながらスマイルさんの後を追う。

店員さんに案内されたのは、これまたお洒落な個室だった。

店員

ごゆっくりお過ごしくださいませ。

店員さんが引き戸を閉めると、個室は完全個室になった。

外から中の様子も見れなくなる。

sm

何か、食べたいものはあるか?

br

え、えっと…

スマイルさんからメニュー表を受け取る。

メニュー表を見るが、横文字ばかりでよく分からない。

br

肉料理なら、なんでも…

sm

飲み物は?

br

アイスコーヒーで…

sm

分かった。

スマイルさんはそれだけ言うと慣れた様子で店員さんを呼び、

メニューを注文した。

店員さんが引き戸を閉めると、個室に静けさが訪れる。

静かな個室に聞こえるのは、店内に流れるエスニックな音楽だけだった。

sm

急に誘って悪い。

静かな空気が漂う中、スマイルさんの低い声が個室に響いた。

br

あ、いえ…

僕がそう言うと、個室は再び静かな空気に包まれる。

br

あ、あの、!

このままじゃ気まずいだけだ。

br

どうして、僕を誘ったんですか…?

静かな空気に耐えきれず、ずっと気になっていたことを聞いた。

するとスマイルさんがゆっくりと視線を上げ、僕の方を見た。

吸い込まれそうなほど綺麗な紫色の瞳が僕を捉える。

sm

…そうだな。

sm

俺も周りくどいのは好きじゃない。

sm

だから、この際はっきり言う。

sm

分かっているとは思うが、

sm

俺は『Sub』だ。

br

ッ…

あぁ、やっぱり。

先日の出来事は夢ではなかったんだ。

分かってはいたけど、スマイルさんの口からはっきり言われると

頭が鈍器で殴られたような強い衝撃が走る感覚がした。

sm

…俺はここ数年間、自分のダイナミクスを隠して生きてきた。

sm

俺がSubだとバレたのは、お前が初めてだ。

br

あ…えっと…

sm

謝らなくていい。

sm

あんなところに診断書を置いた俺が悪いからな。

br

いや、そんなこと…

制止したスマイルさんの声も聞かず、診断書を見たのは僕なのに…

sm

俺は別に、口封じのためにお前を飯に誘ったんじゃない。

sm

…この情報をどうするかはお前に任せる。

br

え…?

sm

人に言いたければ言えばいいし、

sm

距離をとりたいならとればいい。

sm

お前の好きにしろ。

br

スマイルさんはそういうと、テーブルに置かれた水が入ったグラスを手に取った。

グラスに入った氷がカランと音を立てる。

… 僕は、昔からよく人に関わってきた方だ。

だから、スマイルさんの様子の違和感にもすぐに気づいた。

br

…それ、本心じゃないですよね?

sm

僕がそう言うと、スマイルさんは驚いたように目を見開いた。

なんてことないように淡々と言ったスマイルさんの言葉。

それが、僕にはスマイルさんの本心に聞こえなかった。

淡々と喋る口とは対照に、

スマイルさんの震えている手、

苦しそうな顔。

それを見れば、スマイルさんが嘘をついていることはすぐに分かった。

sm

何言って…

スマイルさんの気持ち、全部は分からなくとも少しなら分かる気がする。

br

これは、僕の憶測なんで間違ってたら申し訳ないんですけど

br

スマイルさんって、ダイナミクスのこと嫌いですよね?

コンコン

ちょうどそのとき。

引き戸がノックされ、料理を持った店員さんが引き戸を引いた。

店員

お待たせいたしました。

店員

こちらお料理になります。

店員さんの声と共に、テーブルに温かな料理が置かれる。

僕の方に置かれたのは、牛肉のロティだった。

美味しそうな匂いが、鼻腔を擽る。

店員

ごゆっくりお過ごしくださいませ。

sm

…温かいうちに食え。

店員さんがいなくなって僕が美味しそうな料理を眺めていると

スマイルさんがそう言った。

br

…いただきます。

料理を口に運ぶと、柔らかい肉が口の中に広がる。

sm

…そうだな。

br

口に運んだ肉を堪能していると、

向かいで抹茶パスタを食べていたスマイルさんが口を開いた。

sm

broooockの言う通りだ。

sm

…俺は、ダイナミクスが嫌いだ。

br

スマイルさんの瞳が悲しげに伏せられる。

スマイルさんのそんな悲しそうな表情を見るのは、初めてだった。

sm

…昔話をするのはあまり好きじゃないが、、

sm

聞きたいか?

目を奪われそうなほど綺麗なスマイルさんに問われ、

僕はゆっくりと頷いた。

sm視点

sm

俺は、昔からSubというだけでたくさんの差別を受けてきた。

br

sm

…学生時代は特に酷かったな。

学生時代

同級生

スマイルって成績めっちゃいいよな〜

同級生

進路とか困らねえだろあんなん。

同級生2

え、お前知らないの?

同級生2

アイツ、『Sub』だぜ?

担任

スマイル。

ある日、担任に大事な話があると呼び出された。

sm

…はい。

担任

大学の、指定校推薦の件なんだが…

担任

悪いが、お前じゃなくて他の奴を推薦することにした。

sm

は…?

sm

俺を推薦してくれるって言ったじゃないですかッ!

sm

な、なんで…ッ!

sm

俺は評定の基準だって満たしてるし、どこも問題なんて…

担任

だってほら、、

担任

お前…『Sub』だろ?

sm

は…?

担任

Subを推薦するよりDomのやつを推薦した方が

担任

高校側としても都合がいいんだ。

担任

悪く思わないでくれ。

sm

…どれだけ優れた能力があっても

sm

どれだけ良い結果を残しても

sm

『Subだから』という理由で、誰も俺を認めてくれなかった。

br

ッ…

sm

同級生も、周りの大人も…

sm

…家族さえも。

br

えっ…

sm 父

なんでSubなんだ!!

sm 母

アンタがSubじゃなければ!

sm 母

私たちは幸せになれたのに!!

sm

両親は、俺がSubであることを恥じていた。

sm

俺がどんなに差別を受けても

sm

『お前がSubだから悪い』とよく言われた。

br

br

そんなっ…!

sm

…俺の両親はSubのことを『失敗作』だと思っていたからな。

sm

俺の存在は、邪魔でしかなかったんだろう。

br

ッ…

sm

…俺の家、覚えてるか?

sm

あの家は俺が買ったわけじゃない。

sm

俺の両親は、俺が高校を卒業してすぐに家から出て行った。

sm

あの家は、その時両親に押し付けられたものだ。

br

元々3人で暮らしていたその家は、

独りで暮らしはじめると、とても広く感じた。

…両親が今どうしているかは知らない。

知ろうとも思わない。

何をしても、褒められるのはいつもDomだった。

周りの大人や同級生はみな、『Subの俺』を見下していた。

sm

みんながダイナミクスだけで俺を判断した。

sm

誰も『俺自身』のことなんて見ちゃいない。

悔しかった。

何度も、自分がSubであることを恨んだ。

sm

…broooockの言う通りだ。

本当は、人にバラしてほしくない。

態度を変えてほしくない。

俺を…

俺を『Sub』として見てほしくない。

今の職場は学生時代と比べ、ダイナミクスを気にしている人は少ない。

それは充分、分かってる。

だけど

それでも

sm

俺は、周りにSubだと公表するのが怖い。

もし、俺がSubだと言って周りの反応が変わったら?

Subであることを噂され、見下され、蔑まれてしまうかもしれない。

sm

もう…嫌なんだ。

『Subのくせに。』

『Subだから。』

sm

もう…あんな思いはしたくない。

テーブルの上に置かれた抹茶パスタは、とっくに冷めきっていた。

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