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「天国への道」※暇潰しに

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「天国への道」※暇潰しに

1 - 「天国への道」※暇潰しに

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2018年09月28日

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サムという1人の青年がいた

白く透き通った肌に、ゴボウのように細長い手足

一見大人しそうな見た目だが

その生活ぶりは実に派手だった

連日ギャンブルや酒に溺れ、

毎晩のように女を抱いた

裕福な家庭で甘やかされて育った為、金に困ることはなかったが

ギャンブルで大負けすると、 憂さ晴らしに盗みを働いたり、

小さな動物を拷問してそのまま殺したりしていた

かわいそうに、サムの憂さ晴らしのために犠牲になった動物は数知れない

サムは、人間のクズだった

そんな派手な暮らしを続けてきた彼だが

終り方は実にあっけないものだった

酔った勢いで屋根に登り、

そのまま落下してしまったのである

サムは即死

その魂は地獄へと真っ逆さまに落ちた

サム「おぉ、神よ」

サム「神よ、なぜこのような仕打ちを」

サム「私は、地獄に落とされるような悪いことは一切しておりません」

地獄には、サムの叫び声がこだました

周りには同じように地獄に落とされた者の魂がうようよいて

サムと同じように嘆き、苦しんでいた

悪魔は、そんな彼らを捕まえ、拷問する

(俺も同じように拷問されるんだ…)

サムが怯えていると

1人の老人が声をかけてきた

老人「わたしはシド 娘を守るために娘婿を殺め、地獄へ落ちた 青年よ、お前はなぜ今ここにいるのだ」

サム「ここに来た理由は分からない、俺は全うに生きてきたつもりなんだ」

シド「そんな人間は、地獄になど落ちない 神は見ている」

サムは、 本当は自分でも分かっていた

自分がどんなに酷いことをしてきたか

でも認めたくはなかった 自分が地獄に落ちるような人間であることを…

シドは続けた

シド「神は慈悲深きお方だ 地獄の我々のことも常に見守っていらっしゃる」

シド「自分の行いを反省し、地獄で拷問に耐え続ければ、 神は必ず救いだして下さる」

サム「なぜそのように思う」

シド「聞いたのさ、 神の使いが天から降りてきて、 ほんの一握りだが魂を選別し連れていくらしい」

サム「どこへ?」

シド「天国だろうな」

サム「まさか!」

シド「信じるか信じないかはお前次第だ わたしは信じ、神の救いを待つ」

サムは考えた

所詮は老人のざれ言…

だがもし本当であれば このチャンスを絶対に逃してはならない

悪魔の拷問は想像を絶する苦しみだったが 彼は耐え続けた

それは決して簡単な事ではなかったが

神の救いを信じ、ひたすら耐えた

生前の自分の行いを反省しながら

シドの話を聞いてから どれくらいの年月、地獄の生活に耐えてきたのだろう

サムは諦めかけていた

その時、

真っ暗だった地獄の空に1つの光の玉が浮かぶ

そしてゆっくりと地に向かい降りてくる

悪魔は拷問を止め、その場にひれ伏す

(まさか、これって…?!)

サムはじっとその光を見つめた

光の玉はやがて人の姿に変わり

地獄に住む者たちへ語りかける

神の使い【神のご慈悲により 選ばれし魂を天へ連れてゆく】

(やっぱり…神の使いだ!)

サムは祈った

このチャンスを逃したら

次はいつになるか分からない

連れて行かれる者の名前が次々と呼ばれる

そして最後の一人は…

神の使い【サム、サム・◯◯ソン】

(俺だ…!)

サムは選ばれた

そして、光の輪に入り、地獄を去る

その輪の中には、シドの姿もあった

神の使い【着いたぞ】

サムたちが連れてこられたのは天国

…ではなく

1つの扉の前だった

神の使いは彼らを扉の前に集めると、こう続けた

神の使い【地獄より選ばれし者たちよ お前たちには最後の試練が待っている】

神の使い【この扉の中は、天への道が続いている そこを通り、試練を終えたものだけが 新たな天の住人と認められる】

神の使い【天への道を、ただひたすら進め その先に黄金色の扉が見えたら、その扉を開けるのだ 開けた先に、わたしは待っている】

サムは内心ホッとしていた

扉を開け、ただ進めばいいだけ

神の使いはこう続けた

神の使い【ただし、この扉の番人は地獄から来たものをたいへん嫌う 様々な声色でお前たちを誘い、 最後まで試したがるだろう】

神の使い【道中、まやかしを見ても、決して声をかけるな そしてまやかしに声を掛けられても、決して返事をするな 掟を破った者は】

神の使い【地獄に再び落ち、二度と天へと上がることはできない】

再び落ちる…

あの地獄へ…

二度と出られない

地獄から 二度と

サムは一瞬だけためらった

だが、せっかく掴んだチャンス

俺は神に選ばれたんだ

失敗は許されない

深呼吸し、サムは扉を開けた

とても暗い

バタン!

扉が閉まると、辺りは闇に包まれた

サムは、ただひたすら前に進んだ

どこへいけばいいのか、どこまでいけばいいのか全く分からなかったが、 ただただ進み続けた

「おい…おいお前…」

耳元で聞きなれない声がする

「こっちは違う 俺がお前を正しい道へ連れてゆく」

サムには分かっていた

これは、扉の番人の試練であることを

その声は暫く囁きつづけたが、やがて消えた

サムはひたすら進み続けた

「サムや」

今度は聞きなれた声がする

亡くなった祖母の声だ

「天国からお前を迎えに来たんだよ 暗くてよく見えないんだ、声を出しておくれ?」

大好きだった祖母が呼んでいる…

けれどもサムには、これも番人の試練だということがわかっていた

やがて祖母の声も消え、再び静寂に包まれた

サムは前に進み続けた

「青年」

目の前に人影がうっすらと現れた

地獄で会った老人、シドだった

シド「青年、よく耐えたな 私だ、シドだ 黄金の扉を見つけた 疑うことはせずついてきて欲しい」

シドも、サムと同じように天への道を進んでいる

もしかしたら、偶然鉢合わせたのかもしれない

ただ、サムには分かっていた

これも、扉の番人によるまやかし

シドもサムと同じ状況に置かれているのであれば、 自分に声をかけることはないと思ったからだ

サムは進み続けた

かなり長い時間歩き続けたところで

一筋の光が見え始める

(光…黄金色の扉?!)

サムは走った

ついにたどり着いた

黄金色の扉

その扉の前には神の使いが待っていた

【よく耐えた、サム 天の住人となるからには、 常に淀みない清らかな心を持ち続けよ よいな?】

サム「はい、心得ました」

サムは心が浄化された気がした

これまでの自分を改めるんだ

清らかな心を持ち続け

天の住人に相応しい者となる為に…

【さぁ、この扉の先に進むのだ】

サムは扉に手をかけた

そして勢いよく扉を開け、

地獄へ落ちた

「…え?」

サムは状況を理解できなかった

試練は?

天への道は?

俺は説明通りにしっかり動いたはずだ

神の使いの言うとおり

誰の声にも

誰の姿にも動じることなく進み

黄金色の扉の前で神の使いが優しく語りかけてくれ…

黄金色の扉の前で…?

神の使いは何と言っていた?

神の使い【天への道を、ただひたすら進め その先に黄金色の扉が見えたら、その扉を開けるのだ 開けた先に、わたしは待っている】

【開けた先に、わたしは待っている】

開けた、先に…?

俺が話しかけられたのは…

サムはそこで全てを理解し、激しく後悔したが

もう遅かった

どんなに嘆いても、助けを呼んでも

サムは神に選ばれることはもう二度とない

サムは地獄で

ただただ叫び続けていた…

そんな彼の姿を、天から見つめる男がいた

シドだ

シドは、黄金色の扉へ一番にたどり着いた

すぐ近くには、サムの姿もあった

不安そうにキョロキョロと動き回るサム

まやかしならば自ら話しかけてくるはず

シドは意を決してサムに話しかけた

黄金色の扉のありかが分かったと

なのにサムは、聞く耳を持たず

違う方向へと進んでしまった…

シドはじっと目をとじ、

そして、天の国へと姿を消した

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