波留
こっちに来ないでっ!

奏斗
ちょ、おい!話を聞けって!

波留
(どうせ別れ話でしょ……?嫌だよ……。)

波留
やだ、聞きたくないっ!

私は机の上にあった自分の筆箱を彼に向かって投げた。
奏斗
おい、あぶねえだろ!?

波留
なんで避けるの……。か弱い女の子の攻撃なんだからちょっとくらい当たりなさいよ、ばかぁ……っ

視界がどんどんぼやけていき、ついに涙が溢れ出した。
奏斗
俺、痛いの嫌いなんだよ

そう言って、彼は私の腕を引っ張り自分の方へ抱き寄せる
波留
ちょっと、なにしてっ……!

奏斗
だから、俺痛いの嫌いなんだって……

波留
えっ……?

奏斗
お前が泣いてんの見るの嫌なんだよ……。だから、泣き止んで……

波留
誰のせいで泣いてると思ってんのよ……

奏斗
……俺のせいだよな、本当にごめん

奏斗
でも本当に心当たりがないんだよ。だからさ、教えてくんね?

波留
……っ。この前、ショッピングモールで奏斗と綺麗な女の人が歩いてた……。

奏斗
え……?

波留
それが、すごく悲しかったし、なんかモヤモヤした……

奏斗
……それ、ほんと……?

波留
うん……

奏斗
やべぇ……嬉しすぎるんだけど……。

波留
ちょっと、こっちは真剣に悩んで……

奏斗
多分その女の人、姉貴

波留
……へ?

奏斗
だから、俺の姉ちゃん

波留
そう、なの……?

奏斗
うん、安心した?

波留
うん……

奏斗
さっきお前が泣いてるとこ見るの嫌だって言ったけど撤回するわ

波留
え?

奏斗
だってお前が泣いてたのって、ヤキモチだろ?

波留
……!

奏斗
だから、めっちゃ嬉しい。そんなに俺の事好きなんだ?

波留
っ〜〜!

波留
そーだよ、好きです、だーいすき

波留
(もう、半分やけだ)

波留
ほーんと、いじわる……

奏斗
そんな俺が好きなくせに?

波留
そーだけど何か文句でも……っ

奏斗
ばーか。あるわけねーだろ

奏斗
むしろ嬉しすぎるっての

奏斗
ぜってぇ離さねーから、覚悟しとけよ
