テラーノベル
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黒いフードに長いブーツ。
影に隠れた顔は 笑っているのだろうか。
両手には大量の宝石が装飾された 指輪や腕輪。
そして、それらと調和を成さない 1本のナイフが握られていた。
ジユ
カイ
ダダダダダダ_ッ!!
カイに手を引かれ 一目散に走り出す。
すぐに背後からの足音が増えた。
速い。
チラリと後ろをみた途端、 男は既に追いついていた。
それどころか、 ナイフを高々と振り上げ 今にも振り下ろそうとしている。
ジユ
ドン_!
カイ
すかさずカイの背を押し、 間一髪で避ける。
ッタ…ブン_!!!
そのまま地面に手をつき、 男の顔面に向かって 右足を放った。
ガシッ
しかし男の左手がそれを阻み そのまま突っぱね返される。
ズザ……
ジユ
逃げても無駄だ。 追いつかれる。
やるしか無い。
カイを庇うように前に立ち、 男の動きを目で追う。
男は、一切無意味な行動をしない。
態勢を直し、ナイフを握り直し、 一歩、一歩と近づいてくる。
その一挙手一投足が、 明確な殺意を持っていることを 物語っていた。
緊張…いや恐怖か。
下手すれば死ぬ。
"死ぬ"。
冷たい汗が身体の熱を奪う。
相対に、 掌にじんわりとした熱が籠る。
そして同時に、震えていた。
ジユ
杖を手に取り、 男に向かって振り回す。
しかしそれは当たりもせず 空を切る。
再び大きく構え、 男の足元を狙って突いた。
ザス_!!
しかし、狙いも威力も甘い。
トンッ…
ジユ
男はそれを踏み台にし、 素早く距離を詰めてきた。
完全に間合い。
ひとたび目を閉じれば、 数秒後には意識もろとも 消し飛ぶだろう。
ジユ
終わりだ。
見えぬ眼光に そう言われた気がした。
突然で、 あまりに理不尽な最期。
世の中にはこういうことも あるのだと、文字通り 命を賭して知ることになった。
ザク
ジユ
ジユ
カイ
びちゃっ…
カイ
そう。
文字通り、 「命」を賭して知ることとなる。
それは己ではない、他人の命。
友の命、家族の命。
血が。
鮮やかな紅が彼岸の花を咲かす。
その根はじわじわと育ってゆき、 やがて一面に咲き渡った。
カイ
ジユ
カイ
視力と、意識が、 しだいに遠のいてゆく。
ゆっくりと沈むように、 紅の中に誘われていった。
ジユ
ジユ
_むくり
ジユ
ジユ
思い出す。
思い出させられた。
誰もいない、 何かがあったこの空間と 目の前の血溜まりに。
……
ジユ
ジユ
ジユ
≮んだ
俺のせいで
ヾんだ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ザ…
ジユ
ザ…
ジユ
ザ…
ザッザッザッザ_!!!
身体を必死に突き動かす。
希望を追い求める感覚と 絶望の暗闇に身を投じるような 感覚に頭が混乱する。
それでもただ、上り続けた。
地上へ。
ジユ
ジユ
奥の方から、 淡い光が揺れる。
影だ。
誰かが光に当てられて、 長い影を作っている。
あれは、きっと……
ジユ
ジユ
グルルルル…
ジユ
誰か。
…ですらなかった。
目の前の異形の怪物は、 黒と白の身体と澄んだ青の瞳を 持っていた。
首は少し長く、図体は家畜と 比べものにならない。
それでいて鋭利な爪と歯を持ち、 黒灰のような身体を白骨の外骨格が 覆っていた。
ジユ
ギリギリギリ_……!!
その巨躯が身を捩るたび、 鎧のような骨殻が擦れて音を立てる。
ただ一時、目の前の何かに ただ見惚れていた。
グルル……
目が合う。
混ざり気がなく、 全く澄んだ青だ。
しかしそれはあまりに純粋で。
生物としての本能を ひしひしと感じる。
弱肉強食 闘争本能
そんな感じだ。
ジユ
ドカ…!!
ジユ
長い尾から放たれた一撃が、 腹部を抉るように殴った。
ドッ!!_ガッ!_ズザ_……
二度、三度と 地面に身体を投げ打つ。
目測、20mは飛んだだろうか。
ジユ
視界と脳が揺れる。
直接殴られていないのに 頭が痛い。
腹の重く鈍い激痛は 遅れてやってきた。
仕方なく、その場に うずくまってまってしまう
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
不気味さや畏怖なんかより、 純然たる力と未知の塊。 無力感で、何もかもが一っ気に どうでもよくなった。
ジユ
あきらめた。
身体は動かないし、痛いし、 カイもいない。
ここで生きたとして、 何になる。
そんなことまで考えた。
せめて最期に呪ってやろう。
カイを罪人と罵った 地下の連中を。
カイを見捨てた両親を。
カイを殺したあの野郎を。
守れなかったこの俺を。
『……ジユ。』
ジユ
目を開いた。
視界が綺麗になって、開けた。
そして分かった。
ジユ
ジユ
ジユ
満天の、曇天。
青い空は、どこにもなかった。
『終わるのか?』
『自由を手に入れたばかりなのに』
『何ひとつ』 『成せないまま?』
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
俺、さっき…
"呪う"って言ったか?
ジユ
ジユ
は、ははっ…!
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
ザ……ッ
燃え尽きた灰のような土を 踏みしめる。
まるで大きな何かの存在の 怒りか、憎悪か、強い負情が 染み付いているようだ。
ジユ
謎の心地よさに支配される。
まるで、
何ていうか、
……もういい。
これはきっと、 言葉で形容できない "キョウキ"だ。
パキ……
パキパキ…ッ
無から有を生み出す。
柄は木製。 明るい茶色で指の型が 造られていた。
刃は金属製。 刃渡り20cm程度の片刃だった。
まずは、形。
パキン……!!
黒、という色だけの物質が 柄と刃を手中に形成する。
次に、性質。
ズオ……
黒が彩度と明度を手に入れ、 挟間の現を歪めて顕現する。
カチャリ_
それは、人を殺す凶器。
それは、命を奪う狂気。
そして、友の命を奪った凶気。
ジユ
ジユ
ズオッ…!!!!!
ナイフが黒い閃光を放つ。
それは稲妻。
周囲を焼き焦がし、差し貫く 闇の一閃。
刃は刀のように伸び、 その硬度と切れ味はもはや 金属のそれを超えていた。
バチバチ_ッ!!!
スラッ…
ジユ
ジユ
ジユ
ジユ
— 傷 害 —
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