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藤野 翠
広瀬 優杏
優杏と私は思わず声が出た
それくらい、おばあさんの作ったカレーは 本当に美味しかった
おばあさん
広瀬 優杏
おじいさん
藤野 翠
おばあさん
家で食べるカレーとは全く違う
家のカレーはいつもルーだけど、 ここは野菜の味がしっかりしてる…。 なんか、家族の温もりまで伝わってくる みたい
同じメニューでも、地方や家によって こんなに違うんだ
藤野 翠
広瀬 優杏
木製の古い家具
どこか安心感のある家
つい長居したくなってしまう
藤野 翠
おばあさん
藤野 翠
おばあさん
おばあさん
おばあさんはそう言っておじいさんの方を 指差した
おじいさんは罰が悪そうに笑う
藤野 翠
二枚のお皿を重ね、ふと優杏の様子を 見やった
まだ半分残ったカレーを食べている優杏を 見て、少し微笑みながら台所へ向かった
おばあさん
藤野 翠
蛇口でお皿を洗っている私の後ろで、 炊飯器に余ったお米をラップに包みながら おばあさんが聞いてきた
そういや、親や家庭のことを何も聞かずに 家に入れてご飯も……
おばあさん
おばあさん
藤野 翠
おばあさん
藤野 翠
おばあさん
藤野 翠
藤野 翠
朝起きられなくなったのも、 成績が悪くなったのも
朝起きられなかった日、 集中できずほとんど課題が進まなかった日……
全部、自分がちゃんとやれなかったからだ
お母さんに、午前の出られない授受は その日のうちにその分勉強しろって 言われてたのに
みんなはちゃんとやってるのに。 優杏はあんなに強いのに
私があそこで生きれなかったのは、 自分が未熟だから……
おばあさん
藤野 翠
そんな綺麗事、何回も聞いた
そう言っておきながら、それとは反対の 態度と視線を向けてくるのが大人たちだ
おばあさん
おばあさん
おばあさん
懐かしむような、でもどこか切なげな 声だった
おばあさん
おばあさん
おばあさん
おばあさん
私はおばあさんの方を振り返った
おばあさんの肩が震えてる
おばあさん
おばあさん
藤野 翠
思わぬ出来事に、私は声にならない声が 喉で潰れた
おばあさん
おばあさん
おばあさんの手は止まっていた
でも、炊飯器の蓋は開いたままで
おばあさん
おばあさん
おばあさん
おばあさん
……それで、ここまで話してくれたんだ
おばあさん
おばあさん
おばあさん
おばあさん
思わず手を握り締め、 胸の奥が締め付けられる
おばあさん
おばあさんの話は、本気の言葉だった
先生たちのマニュアル通りの言葉じゃない
藤野 翠
藤野 翠
私には、これしか言えなかった
藤野 翠
藤野 翠
優杏のときも、おばあさんのときも、 なんで私は………
ガラッ!
広瀬 優杏
広瀬 優杏
勢いよくドアを開けて優杏が台所へ 入ってきた
藤野 翠
私には、力なく名前を呼ぶことしかできない
優杏は軽く私の肩を叩いて蛇口の前に立った
おばあさん
おばあさんは、目元を拭いて笑って答えた
広瀬 優杏
おばあさん
おばあさん
おじいさんもおばあさんも、 断りづらい頼み方するんだから……
広瀬 優杏
優杏がそう答えたから、私も首を縦に振った
その後は、お風呂に入って洗濯物を畳んで 四人でテレビを見て
掃除するときには、棚の上に結花ちゃんと 思われる子とその両端におばあさんと おじいさんが笑顔で映っている写真を 見つけた。 足元にはソラもいる
結花ちゃんもおばあさんもおじいさんも 心底幸せそうに笑っていて、 いつ撮ったものかは知らないけど、 とても自殺しそうには見えなかった
藤野 翠
怖くなかったのかな
藤野 翠
結花ちゃんみたいな人、 まだまだ沢山いるんだ
夜も遅くなり、布団を持って二階の 二人で寝るには広すぎる部屋に案内された
おばあさん
広瀬 優杏
二人で、深々と頭を下げた
おばあさん
おばあさん
藤野 翠
電気を消して、布団を被った
今日はほんといろいろあって疲れたなぁ……
藤野 翠
田舎の夜は、都会と違って静かだ
微かな風の音しか聞こえない
広瀬 優杏
藤野 翠
疲れてるのに眠れない
それは優杏も同じようだった
誰にも知られずこんな遠くまで来るのなんて 初めてだから、心臓がずっとドキドキ うるさくて
藤野 翠
気持ちを紛らわすために私は言った
でもこれは本当。心の底から思ってる
広瀬 優杏
優杏は、そう短く返しただけだった
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
あぁ、そうだった
優杏って人に対する観察力凄いんだった
感が鋭いっていうか……
藤野 翠
あのおばあさんの話は、私の口から 言うものじゃない
そう思って、言葉を濁した
『たった一人の、愛しい孫娘やったから』
『でも、去年……結花、自殺してもうて』
『君らには自覚ないかもやけど、必ず誰か 本気で翠ちゃんのこと想って心配しとる人が おるから』
あの時のおばあさんの言葉
藤野 翠
本当に?
私のこと心配してくれてるの?
広瀬 優杏
藤野 翠
優杏が布団から跳ね起きて、 カーテンを開ける
窓も開けて、瓦の屋根の上へ乗り出した
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
そう言って、優杏は上を見上げた
きっと、目線の先には……
藤野 翠
二階の低い屋根
足をかければ簡単に乗れる高さだった
私も恐る恐る瓦の上に足を伸ばす
少し滑った
藤野 翠
広瀬 優杏
優杏が軽く私の手を引く
互いに支え合って、さっき優杏がいた 位置よりは少し窓際だけど、もう真上に 天井は無い
上を向けば、夜空が見える
私は、優杏のアイコンタクトを受けたと 同時に見上げた
藤野 翠
思わず感嘆の声を漏らした
都会では見られない、想像できないくらい 沢山の小さな星が夜空いっぱいに 広がっている
人工の眩しくて痛い光じゃなくて、 優しくて綺麗で。 遠くの彼方まで無限に続いてて
月は、細い三日月
ネットの映像やプラネタリウム、 修学旅行のときとも何か違う
そのなんとも言えない感情に飲まれて、 気付けば私は首が痛くなるほど夜空を 見上げて釘付けになっていた
「少しだけ」って言ったのに
広瀬 優杏
藤野 翠
ここが屋根の上だと言うことも忘れて、 優杏と私は時を忘れて夜空に魅入っていた
……ここでしか見れない景色
私たち、本当に遠くまで来れたんだ
ずっと眺めていたいけど、このまま 消えてしまいそうで、形に残したくなった
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
下手でも、誰かに何かを伝えられる絵が 描けるのかな
私はスケッチブックと色鉛筆握った
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コメント
1件
関西弁を聞いていると、たつやくんの登場を期待してしまっている自分がいる……何故だ...ッッ!これは翠ちゃんと優杏ちゃんの物語だろう..!!やめろ自分ッ!!考えるなっ!! 今回もとっても面白かったです!!
#オリジナルストーリー