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コメント
2件
めっちゃ面白いです! 描き方お上手ですね!!
赤 。
朝のHRが終わった直後、後ろの席の赤が俺に小声で言ってきた。
緑 。
赤 。
赤 。
__やっぱり、誰かに見られてたか。
赤 。
赤 。
赤 。
噂。
そう、いつも彼女を語る時は、そればっかだ。
だけど俺は_昨日、知ってしまった。
怖くて無表情で誰も寄せつけない彼女が、スイーツを前にしたとき、すごく幸せそうに笑うってことを
緑 。
赤 。
赤 。
赤 。
たしかに。
クラスでも誰とも話さず、何か言えば「は?」「別に」としか返さない。
机に寄せ書きのような落書きをされたこともあったが、彼女は一切気にしていないようだった。
でも、それが全部"作られたイメージ"だったら?
偶然かもしれないけど、昨日、ミルフィーユを差し出したとき、彼女の手が少し震えてた気がする。
「ぶっ飛ばす」と言いながら、目はちょっとだけ不安そうだった。
そのギャップが、妙に胸に残っている。
放課後。
帰りの支度をしていると、教室の後ろの窓から見覚えのある後ろ姿が見えた。
__橙だ。また、どこかへ向かっている。
昨日と同じカフェか?
気づいたら、俺の足は動いていた。
彼女は路地裏にある猫カフェに、昨日と同じようにふらりと入っていった。
俺はしばらく迷ったあと、店のドアをそっと開けた。
橙 。
カフェの奥、昨日と同じ席。
橙は、スプーンを口に運びながら、少しだけ目を細めて言った。
緑 。
橙 。
彼女は視線を窓の外に戻す。
でも、その横顔は昨日よりも少しだけ柔らかかった。
怖いと思ってた。
みんながそう言うから。
でも、それは表面しか見てなかっただけで_
俺だけが、知っている気がした。