―気が付くとオレは、いわゆる「裏稼業の雑用係」のような存在になっていた ある時は運び屋、ある時は詐欺師、ある時は殺し屋、ある時は――― 今日のオレは誘拐犯だった。 ターゲットは美しい少女。なるほどこれなら 「買っていく」人間も多いはずだ。 ……そんな事を考えたところで、少年は自嘲ぎみに笑う。 全く、オレもこっちの水に染まったものだ。 それからほどなくしてターゲットが見つかる。 もう躊躇いはしない。そんな物は捨てていた。 ナイフを持って襲い掛かる。殺すつもりはない。脅すための物だ。 少女がこちらに気付く。脅し文句を言おうと思った。その時。 少女が武器をを出す。長さ1フィート程度の短剣。 オレは軽く舌打ちする。手間が増えた。 刹那。少女が襲って来る。とっさにナイフで受け止め、横に流す。 甲高い金属音が響く。この少女、ただ者じゃない――! 上も言っていた。「派手に抵抗するようなら●ろせ」と。 これで懸念が消える。全力で切りかかる。こちらも素人ではない。 短剣とナイフが切り違う。実力は互角。 相手が短剣を無理やり離し、突きを放って来る。 バックステップで避けると眼前0.5インチに先端があった。 次はこちらから仕掛ける。 相手の肩先に刃を乗せた瞬間、そこを守ろうとした相手の鳩尾に蹴りを入れ、 よろめいた所で短剣を弾き飛ばす。 勝った。そう思った所で、少女は一言。 「――全て背負う必要は、ないのよ?」 ――弾いた短剣が地面に刺さる音が聞こえるまでに、ひどく時間がかかった。