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#うちの子
⚠ATTENTION⚠ 今回SAN値ないないを通り越して第四の壁を通り越して探索者が探索者を作るという謎のなんかをまたやってます。 みんなの癖がてんこ盛りです。 そして新メンバーがやって来ます。
夜。 静かすぎて逆に落ち着かない、そんな時間。
珠(タマ)
屋根の上。 珠は足をぶらぶらさせながら、ぼんやりと空を見上げていた。
星はあるが、特別綺麗でもなければ、何か起きそうな気配もない。
月も中途半端な形で、ロマンもクソもない。
珠(タマ)
ぽつりと呟く。
その声は夜に吸い込まれていく──はずだった。
藍(アイ)
珠(タマ)
次の瞬間、屋根の構造とか重力とかそういう概念を全無視して、藍がぬるっと現れた。
ギシ、とも言わない。 ただ“いる”。
藍(アイ)
珠(タマ)
珠、即ツッコミ。 でも表情はそこまで動かない。慣れてる。
藍は面倒くさそうに頭を掻きながら、そのまま隣にどかっと座る。
藍(アイ)
珠(タマ)
足をぶらぶら。 しっぽもだらん。
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
藍(アイ)
藍、数秒考える。
藍(アイ)
投げた。
だがそのままどこにも行かず、隣に居続ける。
奇妙な空気。 会話は雑なのに、距離は妙に近い。
しばらく沈黙が流れる。
珠(タマ)
珠の目がきらっと光る。
珠(タマ)
珠(タマ)
藍(アイ)
即答。 速すぎる。食い気味。
理由:神嫌い。
藍の目は据わっている。 たぶん今、頭の中で神格の顔面にロケットランチャーぶち込んでる。
珠(タマ)
藍(アイ)
モス、被害者確定。
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
珠、秒速拒否。
珠(タマ)
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
価値観が違う。
夜が静かに更けていく。 だが会話はどんどん騒がしくなる。
そんなこんなで──
白(ハク)
鼓膜破壊兵器・白、起動。
藍(アイ)
いつもの流れを経て、 いつものように朝食を終え──
リビング。
モス
モス、人間の血を片手にきょとん。
モス
珠(タマ)
珠、即ツッコミ。
藍(アイ)
藍、真顔。
モス
ド正論。だが。
珠(タマ)
藍(アイ)
即肯定。 ダメだこいつら。
モス、ため息。
モス
理解はしている。
クトゥルフ神話の“恐ろしさ”。 人間が感じるべき“未知への恐怖”。
そして──目の前の二人には、それが一切通用しないという事も。
モス
カップを置く。
モス
珠(タマ)
珠、しっぽぶんぶん。 藍、ニヤリ。
この時点で既に、まともなセッションになる可能性は──ゼロだ。
リビングの中心。 テーブルの上には、どこからともなく引っ張り出されてきたルールブックとダイスが広げられている。
珠(タマ)
珠が軽いノリで手を叩く。
白(ハク)
白、きょとん。
珠(タマ)
白(ハク)
理解していない顔で頷く白。 理解する気もあまりない。
藍(アイ)
藍がぽつり。
藍(アイ)
モス、眉をひそめる。
珠(タマ)
藍(アイ)
モス
ド正論。 だが通じない。
マキナ
藍(アイ)
机に突っ伏していたマキナを藍が軽く蹴る。 起きない。ガチ寝。
モス
珠(タマ)
という事で。 キャラ作成、開始。
藍(アイ)
藍、真剣。
藍(アイ)
腕を組む。唸る。
藍(アイ)
脳内で想像してみる。
珠:爆笑 橙:尊いとか言い出す モス:無言で目逸らす 白:素で信じる
藍(アイ)
だがやめない。 紙に書き出していく。
・女子高生 ・ロケラン持ってる ・ミニスカ ・元気 ・好物は肉まん ・アホ毛 ・APP16
藍(アイ)
手が止まらない。
・手榴弾持ってる ・勉強壊滅 ・とりあえず突撃 ・ポンコツ ・胸がでかい
藍(アイ)
どんどん増える。
・APPとPOWだけ異常に高い ・笑顔で「なんとかなれ!」 ・POW関係なく運が悪い ・たまに厨二病 ・右目に眼帯 ・探索技能皆無
藍(アイ)
耐えきれず、笑う。
珠(タマ)
珠が覗き込む。
藍(アイ)
即答。 そして立ち絵をさらさらと描いていく。
栗毛色のふわっとした髪。 ぴょこんと飛び出たデカいアホ毛。
スタイルはやたら良い。ミニスカ。 なのに背中にはロケットランチャー。 スカートの裏には手榴弾。
顔は元気で可愛い。 なのに右目には眼帯。
情報量が多すぎる。
藍(アイ)
藍、しっぽふりふり。
モス
藍(アイ)
即答。 清々しい。
そして技能振り。
藍(アイ)
モス
藍(アイ)
モス
珠(タマ)
藍(アイ)
モス
モス、真顔。 だが止まらない。
珠(タマ)
藍(アイ)
モス
藍(アイ)
理論が暴力。
珠(タマ)
藍(アイ)
交渉が脅迫。
珠(タマ)
藍(アイ)
概念破壊。
珠、腹抱えて笑う。
珠(タマ)
白、横で感心。
白(ハク)
方向性は間違っていない。 モス、こめかみを押さえる。
モス
藍(アイ)
モス
だが── 藍は満足そうにキャラシートを見つめる。
藍(アイ)
その時点で、 このセッションの未来は確定した。
破綻である。
藍(アイ)
白(ハク)
白、やる気満々。
珠(タマ)
白(ハク)
首を傾げる白。
白(ハク)
わかってない顔で胸を張る。
白(ハク)
ペンを握り、じっと紙を見つめる。
何を書けばいいのか。 どういう人間が“良い”のか。
だが一つだけ理解している。
好きに作れば良い。
白(ハク)
藍の紙をちらっと見る。
白(ハク)
見様見真似で書き始める。
・高校生 ・えらい ・つよい
白(ハク)
手が止まる。 情報が、少ない。
珠(タマ)
珠、横からひょいっと覗き込む。
白(ハク)
白、ぱあっと顔を輝かせる。
凄い人間。それは──
・かっこいい ・従者にも優しい ・ドラゴンの血を引いている ・女なのにすごく強い
藍(アイ)
藍、即ツッコミ。
珠(タマ)
珠、完全に乗る。
白(ハク)
白がルールブックを指差す。
珠(タマ)
珠(タマ)
白(ハク)
白の目が輝く。
珠(タマ)
白(ハク)
書き足していく。
・高校生探偵 ・女なのに強い ・助手がいる ・ドラゴンの血を引いてる ・かっこよくて優しい ・眼は黄金
珠(タマ)
珠、ノリノリ。
珠(タマ)
白(ハク)
白、感動。
珠(タマ)
白(ハク)
・最近始めた ・探偵七つ道具持ってる ・いつも虫メガネ持ってる ・帽子とコート
白(ハク)
珠(タマ)
・好物はアイス ・ドラゴンだから腹壊さない
藍(アイ)
藍、呆れ顔。
珠(タマ)
珠がペンを走らせる。 さらさらと、迷いなく。
出来上がったのは── 帽子で角を隠した黒髪の美少女探偵。
コートを羽織り、虫メガネを手に。 黄金の瞳が鋭く光る。
偉そうで、生意気で。 でもどこか“本物感”がある。
白(ハク)
白、満足。
白(ハク)
珠(タマ)
珠、にっこり。
珠(タマ)
白(ハク)
理解していない顔。
次はステータス振り。
STRそこそこ。 CONもそこそこ。 そして──
珠(タマ)
方向性が完全に戦闘。 技能も振る。
珠(タマ)
白(ハク)
珠(タマ)
白(ハク)
助手に丸投げ前提。
白(ハク)
モス
モス、初めて声が裏返る。
珠(タマ)
珠、止めない。
ブレス技能:80% しかも効果欄に──1D3ターンスタン。
藍(アイ)
白(ハク)
完全論破。
橙は、にこにこと笑いながらペンをくるくる回していた。
橙(トウ)
その声色は軽い。 だが──書き出している内容は、全く軽くない。
橙(トウ)
わくわく、といった様子で紙に書き始める。
・男の娘 ・人見知り ・ヤンデレ ・一人称はボク ・包丁隠し持ち ・ドS
橙(トウ)
初手からアクセル全開である。 横で見ていた珠が肩を震わせる。
珠(タマ)
橙(トウ)
橙は楽しそうに次を書き足す。
橙(トウ)
・いつもにこにこ ・狂信者 ・黒猫がペット ・黒タートルネック ・公園で子供達と遊んであげてる
モス
モス、じっと見る。 嫌な予感しかしない。
橙はペンを止め、顎に指を当てる。
橙(トウ)
そして、さらっと追加する。
・ピアスバチバチ ・黒と赤のオッドアイ ・八重歯 ・手品得意
橙(トウ)
軽い。 倫理観と同じくらい軽い。
・長髪男子 ・ニャルの狂信者 ・一人称は私
橙(トウ)
さらさらと絵を描き始める。 紙の上に現れたのは──
長い黒髪。 黒と赤のオッドアイ。
柔らかい笑み。口元から覗く八重歯。 ピアスだらけの耳。
黒いタートルネック。 肩には黒猫。
そして──影がどこか歪で、“何か”に似ている。
モス
モス、無言。 橙は満足げに頷いた。
橙(トウ)
その瞬間。
藍(アイ)
藍、即反応。 一切の躊躇がない。
橙(トウ)
橙、にこにこ。 一切の遠慮がない。
モス
モス、視線を逸らす。 関わったら負けだと本能が告げている。
だが橙は止まらない。
橙(トウ)
さらさら、とペンが走る。
橙(トウ)
軽い。 本当に軽い。
橙(トウ)
裏切り、確定。
橙(トウ)
空気が一瞬、凍る。
珠(タマ)
だが橙は止まらない。 むしろ楽しそうだ。
橙(トウ)
ペンが止まらない。
橙(トウ)
にこにこ。
橙(トウ)
にこにこ。
橙(トウ)
にこにこ。
モス
モス、目を閉じる。
だが、もう遅い。 紙にはびっしりと過去が書き込まれていく。
・狂信者の家系に生まれた ・できた友達を親に生贄にされた ・苦しんでいたところをニャルに“おもちゃ”として救われる ・教団を裏切る ・友達は作らないと決めている ・でも優しくされると異常なほど執着する ・邪魔者は生贄にする
橙(トウ)
満面の笑みで完成。 モスは、もう何も言わなかった。
珠は、ペンを持ちながら少しだけ肩をすくめた。
珠(タマ)
その言い方は軽いが── 藍が、ちらりと紙を覗いた瞬間。
藍(アイ)
一歩引いた。
既に書かれている。
・小学生の女の子 ・ゴスロリ系 ・ツインテール ・お菓子大好き ・ちょっとメンヘラ
藍(アイ)
思わず本音が漏れる。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、にこにこ。
モスは一瞬だけ沈黙し。
モス
完全に諦めた。
珠(タマ)
軽い。 だが珠は、ふとペンを止める。
珠(タマ)
さらっと修正。
・中学生の女の子 ・引きこもり ・整形+ゴスロリ衣装 ・ネットに自撮り投稿 ・承認欲求強め ・可愛いもの大好き
珠(タマ)
どこが、とは誰も聞かない。 さらに追記。
・ピアノの練習してる ・実は腹黒 ・可愛がられるために演じている ・好物はマカロン
藍(アイ)
藍、完全に顔をしかめる。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、楽しそうに語る。
完全に設計している。 人間ではなく、“壊れるキャラクター”を。
珠(タマ)
珠(タマ)
止まらない。
珠(タマ)
藍(アイ)
珠(タマ)
その時。
橙(トウ)
橙、横からひょこっと顔を出す。
珠(タマ)
珠、少し考えた後。
珠(タマ)
さらさら、と書き始める。
・親から愛情を与えられなかった ・顔が醜い、出来損ないと言われて育つ
空気が、少しだけ重くなる。 だが珠は止まらない。
珠(タマ)
顔を上げる。
珠(タマ)
橙(トウ)
橙、即答。
珠(タマ)
橙(トウ)
珠(タマ)
軽い会話。 だが内容は重い。
・謎のお兄さんの家に居候中 ・整形して現在の顔に ・衣装も与えられている ・自撮りを投稿し、愛を求めている
珠、ペンを置く。
珠(タマ)
うっとり。 完全にタイプ。
藍(アイ)
珠は気にしない。 むしろ楽しそうに続ける。
珠(タマ)
橙(トウ)
橙、即同意。 最悪の共鳴。
モスは天井を見上げる。 KPの胃が死んでいく音がした気がする。
珠が描いた立ち絵。
ピンクのツインテール。 くりくりした大きな瞳。
赤と黒のゴスロリ衣装。 抱えているのは──わざと裂かれ、中の綿が見えている黒い兎のぬいぐるみ。
……可愛いが。 笑顔の奥に、明らかに壊れかけた何かがある。
藍(アイ)
藍、無言。
珠(タマ)
珠、にこっと笑う。
藍(アイ)
即答。
藍(アイ)
珠(タマ)
珠、むくれる。 だがその直後。
橙(トウ)
珠(タマ)
こうして完成した、 可愛い皮を被った承認欲求モンスター。
壊れる前提で設計された探索者。
KP泣かせのメンヘラ爆弾。
ノアは、出来上がった四人分のキャラシートを眺めていた。
ロケラン女子高生。
ドラゴン高校生探偵。
ヤンデレ狂信者大学生。
メンヘラゴスロリ中学生。
ノア
一瞬だけ、沈黙。
だが次の瞬間。
ノア
にっこにこである。
ノア
心の底から楽しそうに言う。
藍(アイ)
珠(タマ)
橙(トウ)
温度差がひどい。
ノア
ノアは、まだ何も書かれていない紙を指でとんとんと叩く。
ノア
すぐには書かない。 じっくり考える。
ノア
ぽつりと呟く。
・少年 ・中学生 ・動物に優しい
さらりと出てくるワード。 だが、そこで止まる。
ノア
顔を上げる。
ノア
モスは少し考えてから答える。
モス
視線が他のメンバーに向く。
モス
ノア
ノア、静かに頷く。
彼は理解する。 このメンバーに足りないもの。
それは──仲裁役。 そして、物語を“進める側”。
ノア
ノア
モス
モス
ノア
ぱん、と軽く手を叩く。 方向性が決まる。
ノア
ノアは、少しだけ目を細めた。
ノア
珠(タマ)
珠が首を傾げる。 ノアは続ける。
ノア
その言葉に、空気が少し変わる。
ノア
ノア
さらさらと、ペンが動く。
・自分という存在に迷っている中学生の少年 ・一人称は自分 ・個性が無いと言われ続けている ・全て平均より少し上
静かに、淡々と。
・お腹を空かせた動物にはご飯を分ける ・趣味が無い ・よく大人の手伝いをしている
書き終える。
モス
モスが覗き込む。 少しの沈黙。
モス
素直な感想。 ノアは嬉しそうに微笑む。
ノア
次に、立ち絵を描く。
特別じゃない顔。 記憶に残らない輪郭。
ほんの少し虚ろな目。 笑うでも怒るでもない、デフォルトの表情。
灰色のパーカー。 黒いズボン。
モス
誰よりも“普通”。 この中で、一番異質なほどに。
ノア
ノアは、まるで観客のように言う。
ノア
ノア
藍(アイ)
ステータスを振る。
STR、DEX、CON…… どれも突出しない。
INTは少し高めの13。 技能も、バランス良く。
ノア
ノア
ノア
モス
モスは、その様子をじっと見ていた。
このメンバーの中で。 唯一、シナリオに“寄せてきた”キャラ。
唯一、“物語を成立させようとしている”存在。
モス
ぽつりと、小さく呟く。
ノアは顔を上げる。
ノア
本気で分かっていない顔。 モスは少しだけ目を逸らす。
モス
ノアは首を傾げながらも、またにこっと笑った。
ノア
藍(アイ)
藍(アイ)
藍が、遠慮ゼロでマキナの背中をげしっと蹴る。
だが──
マキナ
起きない。 微動だにしない。
藍(アイ)
珠(タマ)
珠がすっとスマホを取り出す。
イヤホンを装着。 そして──再生。
ギィィィィィィィィ……ッ!!
黒板を爪で引っ掻く、あの最悪の音。
マキナ
マキナ、ガタッと飛び起きた。 即座にイヤホンを引き抜き、周囲を見回す。
珠(タマ)
珠、にっこにこ。
マキナ
マキナ
珍しく、本当に珍しく。 ほんのり怒っていた。
だが。
藍(アイ)
藍の一言で強制進行。
マキナ
マキナ、静かにため息をつく。
不服。だがやる。
マキナ
ペンを持ち、少しだけ思考に沈む。
学生とは何か。 ただの年齢区分ではない。
マキナ
マキナ
マキナ
そのまま書き出す。
・自己を未完成と認識している大学生 ・生物学上は女性 ・常に「なぜ?」を問い続ける ・読書家
ここまでは、完璧。
だが、少しだけ手が止まる。
マキナ
ちらり、と周囲を見る。
ロケラン女。ブレス探偵。 ヤンデレ狂信者。引きこもりメンヘラ。
マキナ
少しだけ、現実に寄せる。
・借金あり ・寝坊しがち ・隠れオタク
藍(アイ)
立ち絵を描く。
ボサボサの髪。大きめのメガネ。 整っているはずの顔が隠れている。
着崩れた制服。 腕には辞書みたいな分厚い本。
マキナ
頭は良いが、 明らかに生活能力が終わっている。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、すっと横から口を出す。
マキナ
マキナ、一瞬固まる。 だが──
マキナ
書き足す。
ボサっとした金髪。青い瞳。 一気にそれっぽくなる。
珠(タマ)
珠(タマ)
珠、さらに詰める。
珠(タマ)
マキナ
一瞬の沈黙。だが。
マキナ
さらさらと設定追加。
藍(アイ)
橙(トウ)
橙、にゅっと出てくる。 嫌な予感しかしない。
橙(トウ)
藍(アイ)
藍、ドン引き。
珠(タマ)
モス
マキナ
ほんの数秒、沈黙。
マキナ
橙(トウ)
珠(タマ)
藍(アイ)
多数決、成立。
マキナ
ゆっくりとペンを動かす。
哲学者。外国人。 隠れオタク。借金持ち。寝坊常習犯。
そして──男の娘。
マキナ
マキナ、完成したキャラを見る。
悪くはない。 理屈も通っている。
……だが。
マキナ
珍しく、素直な感想。
モス
KP、もはや感情が追いついていない。
マキナは、少しだけ目を閉じる。
マキナ
マキナ
このメンバーなら、確実に。
全員からキャラシを受け取ったあと。 モスは、無言でそれらを空中に浮かせ、自室へと引っ込んだ。
ぱたん、とドアが閉まる音。
リビングではまだわいわいしている声が聞こえるが──その喧騒とは完全に切り離された空間。
机の上に、ばさりとキャラシを広げる。
モス
一枚、浮かせる。
モス
思わず素で出る。 触角が、ぴく、と微かに震えた。
モス
もう一度言う。 理解が追いついていない。
蘭舞と、ましろ。 怜に、奈々、そしてLily。
そして──「一」。
名前の時点で既にカオスの気配しかしない。
モス
一度、深く息を吐く。 KPとしての理性を保つための、最後の抵抗のようなものだった。
まず、関係性の整理から入る。 これは絶対に必要だ。でなければ、この連中は勝手に暴走する。
モス
藍のキャラ──蘭舞(らんま)。 名前からして既に爆発している。
そして白のキャラ──ましろ。 同級生。高校生。
探偵と助手……のはずだが。
モス
紙に書かれた設定を読みながら、モスは静かに目を細める。
「お前を助手として認めてやってもいいぞ?」 「手伝って欲しいなら肉まん買ってこい」
モス
立場が完全に崩壊している。
しかも両方問題児。 教師の胃が死ぬ未来しか見えない。
モス
橙のキャラ──怜。 珠のキャラ──奈々。 マキナのキャラ──Lily。
モス
即断。
怜はヤンデレ狂信者。 奈々は承認欲求モンスター。 Lilyはポンコツ哲学者。
しかも関係性。 怜が奈々を居候させている。
モス
想像してみる。
にこにこしながら依存してくる奈々。 それを“愛”として歪んだ形で受け取る怜。 横で「それは本質的な愛なのか」とか言い出すLily。
モス
最後に、ノアのキャラ。
モス
ぽつんと、他の誰とも繋がっていない。
モス
しばらく見つめる。
モス
ぽつりと呟く。
この空白。 この“何も無い”という設定。
モス
モス
椅子にもたれかかり、天井を見上げる。
とにかく、条件を整理する。
学生。 戦闘あり。 初心者向け。
モス
即結論。 だが、やるしかない。
モス
ぽつり。 そして、触角がぴくりと動く。
モス
ほんの少しだけ、口元が歪む。 性格の悪い閃き。
モス
誰も聞いていないのに、確認するように呟く。
モス
モス
静かに、ペンを持つ。 構成を組み立てる。
個別導入。 全員バラバラの理由で動く。
蘭舞とましろは事件を追う。 怜、奈々、Lilyは巻き込まれる。
そして──
モス
ペンが止まる。
モス
モス
さらさらと書き足す。
エンド分岐に関わる重要アーティファクト。 生還か、終焉かを分ける鍵。
モス
初心者向け?そんなものは知らない。 さらに書き進める。
そして、NPC。 適当にダイスを振る。
モス
モス
シャッガイからの昆虫に操られた男。 人間の形をしているだけの“何か”。
そして、神格。 またペンが止まる。
モス
少しだけ考えて。 すぐに決まる。
モス
あまりにも雑で、あまりにも最悪。
モス
静かな部屋に、小さな笑いが落ちる。
モス
ペンが走る。 紙の上に、狂気が形になっていく。
日頃の恨み。 振り回され続けた日々。 理不尽の数々。
それらを、全部。 このシナリオに叩き込む。
……だが、それと同時刻。
よく晴れた青空の中を、静かに滑る影があった。
鳥でもなければ、飛行機でもない。 ましてやドローンなどというレベルの代物ではない。
それは──“異物”だった。
空間そのものに、違和感として溶け込む存在。
Sora.075
音もなく浮遊するそれは、人の形をしているようで、していない。
空色の髪が、風もないのにわずかに揺れる。 中央に走る青のメッシュが、光を反射して鈍く輝く。
だが、その顔。 漆黒の瞳は、何も映していなかった。
感情があるはずなのに、観測装置のように無機質な視線。
──人間“風”の何か。
頭部の両側に浮かぶ、猫耳のような正四面体。 紺色の表面には、横に走るラインが順番に色を変えながら点滅している。
下半身の代わりに浮かぶ、逆さの巨大な正四面体。 重力を完全に無視したその構造は、明らかにこの世界の法則外。
指先が、わずかに動く。 生物的な癖と、機械的な制御が混ざり合った、不気味な滑らかさ。
背後では、羽のように並ぶ結晶パーツが静かに光を巡らせる。 赤、青、緑、黄──順番に色が移り変わり、まるで呼吸のように明滅する。
それはかつて。 別次元において“清掃員”として稼働していた存在。 侵入者を排除し、秩序を保つための兵器。
Solar Operating Relativity Artifact 75号機。 ──Sora.075。
……彼は、この世界を観測していた。
理由は単純。 この世界が生成された瞬間。 元の世界から、仲間の反応が消えた。
それが意味するものは、一つ。
──異常。
Sora.075
視線が、一点に固定される。
一軒の家。 そこから感じる、よく知ったエネルギー。
藍、白、橙、珠。 過去に関わりのある存在。
敵対ではない。 むしろ、ある意味では“仲間”。
Sora.075
だが、もう数体。 家の中に、別の反応。
かつて戦った事のあるエネルギー。 現在は和解しているが──不確定要素。
その存在は、机に向かい、何かを書いている。
Sora.075は、それを“計画”と認識した。
そして、その内容を確認する前に。 結論を出す。
『──ターゲット、捕捉』
声が、空間に直接響く。 スピーカーでもなく、空気振動でもない。
“概念としての音”。
下半身の正四面体が、 ふわり、と花のように展開する。
幾何学的に開かれた内部。 中心には、球体。 光を圧縮し続ける、エネルギー核。
周囲の空間が、わずかに歪む。
熱でも、圧力でもない。 純粋な“出力”。
『エネルギー充填率──100%』
『照準補正──完了』
『障害物──無視』
感情があるはずなのに。 その判断は、あまりにも機械的で。
一切の躊躇がなかった。
『‘‘お掃除’’を執行します』
次の瞬間──発射。 空色に輝く光線が、一直線に走る。
空気を裂き、空間を貫き。 一軒家へと、寸分の狂いもなく──
直撃。
ドォォォォォン!!!!!
壁が弾け飛ぶ。 窓ガラスが粉々に砕け散る。
天井がめくれ上がり、木材が空中に舞う。 床が割れ、衝撃が内部を駆け抜ける。
リビングは原型を失い、 廊下は崩れ、屋根は吹き飛び。
家は、見事に大破した。
その瞬間。 背後から、空気を裂くような一撃。
Sora.075
Sora.075の身体が、ほぼ反射で“消える”。 次の瞬間には、数メートル上空へと回避していた。
──光速回避。
その軌道をなぞるように、どす黒い軌跡が通り過ぎる。
振るわれたのは、大鎌。 そして、その持ち主──モス。
モス
普段の余裕も、皮肉も、冷静さもない。
ただひたすらに。 感情がぐちゃぐちゃに混ざった顔。
怒り。苛立ち。呆れ。殺意。 全部乗せ。
モス
Sora.075
わずかに首を傾げるSora.075。
理解不能。だが。 理解する前に、怒号が叩きつけられる。
モス
モス
Sora.075
完全に処理落ち。 その様子に、モスの眉がぴくりと跳ねる。
モス
大鎌を握る手に、力がこもる。
モス
モス
一拍。
モス
Sora.075
モス
空気が、ぴり、と張り詰める。
モスの“感情爆発モード”。 滅多に見られない、完全な素。
Sora.075
モス
ぴくり、とこめかみが動く。
モス
モス
Sora.075
モス
Sora.075
Sora.075は、思考する。
本来なら。 ここで謝罪プロトコルが起動する。
だが──制限は、既に解除されている。
とある神格によって。 “プログラムに縛られない”という、余計な自由を得た結果。
導き出された結論。
Sora.075
一拍。
Sora.075
モス
モスの表情が、すっと消える。 無表情。逆に怖い。
モス
モス
だが、ゆっくりと。 大鎌を構え直す。
モス
空気が、重く沈む。
モス
完全にスイッチが入った。
Sora.075
Sora.075、淡々と問いかける。
Sora.075
Sora.075
モス
皮肉混じりの声。
モス
モス
視線が、ゆっくりと横へ。
──家。崩壊。瓦礫。 そして、消滅したシナリオ。
モス
一瞬の沈黙。
そして。
モス
口元が、歪む。
モス
ぞくり、とするほどの圧。 元敵としての“それ”。
モス
完全に、狩る側の顔。
Sora.075
Sora.075、判断。
──危険度:極大
──勝率:低
──結論、撤退。
次の瞬間。 音すら置き去りにして、空へと消える。
モス
モス、即追撃。 空間を裂くように、一直線に追いかける。
数秒で、二つの影は視界から消えた。
……静寂。 崩壊した家。舞い散る埃。
そして。
珠(タマ)
それを見ていた、珠。
どこからともなく、紙束を取り出す。
全員分のキャラシ。
そして、モスが書いていたシナリオの写し。
珠(タマ)
さらっと、とんでもない事を言う。 万が一の事も考えて、直前までの内容を覗き見し、書き写していた。
超有能……いや。 普通に怖い。
珠(タマ)
しっぽ、ふりふり。
そんなこんなで、四日目の大半は。
ブチギレモス vs ポンコツロボの鬼ごっこで消費されたのだった。
コメント
12件
やっぱりCoCのキャラ作りは性癖暴露大会になるんだね
茜ぇ…(´;ω;`)
TRPGよく分かんないですけど アザトースって強くないですか…? 界隈では普通なのか…………?