君の好きな髪型が、ポニーテールだと知ったのは、
教室の後ろの方の、男の子たちの会話から。
翌朝、
お試し感覚で結んでみたポニーテールは、
なんだかスースーして違和感。
やっぱ解こうと、ゴムに手をかけて下にずらしていけば、
もう既に、髪にはアトが付いていたのが分かり、
─ため息ひとつ、髪を結び直した。
似合ってないと思われるかもしれない、
なんて考えながら廊下を歩いてゆけば、
…まさか朝っぱらから君と鉢合うとは。
「結んでるなんて珍しい」
すれ違いざまにそう言われ、
「今日体育あるから。」
とだけ答えた。
「気づいてくれたんだ」
「君が好きだって言ったから」
浮かんだ言葉は沢山あったが、
結局選んだのは、ノーリスクノーリターンな言葉だった。
そんな君に彼女が居ると知ったのは、
また教室の後ろの会話だった。
聞いて、理解した瞬間、
どうしようもなく、結んだ髪をまた解きたくなって、
「そういえばアトが付いてたんだ」と思い出して、
泣きそうになった。
結んでいる訳でもないのに、スースーする。
バッサリ切った髪はもう結べないから、
アトがつくこともない。
髪が短いってこんな感覚なんだ。
……風を、感じる。
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