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五十嵐の親父のもとに、お中元で桐箱に入った佐藤錦が届いた。親父達だけで食べるには量が多すぎるということで、俺達にもお裾分けしてくれたのだ。
佐古大和
高砂明夫
久我虎徹
最初のうちは、さくらんぼに舌鼓(したつづみ)をうっていたのだが、皿に乗っている茎が目に入る。俺は徐(おもむろ)に、茎を摘まみあげる。
そういや、よく茎結びの練習してたよな
昔を懐かしんで、茎を口に含み、久々に茎結びに挑戦してみる。
昔取った杵柄(きねづか)。ここ数年してなかったが、舌が動きを覚えており、茎を折ってら輪っかを作り、長い方の端を輪っかの中に押し込み、結び目を作る。
会心(かいしん)の出来に、他の人にも見て欲しくて、近くにいた兄貴達に呼び掛ける。
佐古大和
んべっと舌をつきだし、舌の上の結んだ茎を見せる。
仙石薫
一条康明
佐古大和
久我虎徹
仙石薫
高砂明夫
一条康明
他の兄貴達も、俺の後に続き、口に茎を入れた。
一条康明
仙石薫
一条の兄貴と仙石の兄貴は同時に舌をつきだした。そこには綺麗な結び目のついた茎が乗っていた。
高砂明夫
高砂の兄貴が出来たと、やや自信なさそうに舌を突きだした瞬間、響(どよめ)きが起きる。
佐古大和
仙石薫
一条康明
高砂の兄貴の舌の上には、ドイツのパン菓子のプレッェルを連想するような、ハート形をした茎が乗っていた。
どんな舌使いすれば、こんなのが出来あがるんだ?知りたいような知りたくないような。
その後も続々と『出来た』と声があがる中、一人だけ、未だ声が上がらず、もたついている兄貴がいた。
佐古大和
佐古大和
久我虎徹
佐古大和
俺の顔面に、久我の兄貴の右フックがめり込む。
久我の兄貴と戯(たわむ)れていると、俺の背後から守若の兄貴が、ひょっこりと顔を出す。
守若冬史郎
佐古大和
俺は自信満々に、結んだ茎を守若の兄貴に見せた。
守若冬史郎
何時もの調子で、守若の兄貴が、伝説の男と囃(はや)し立てる。
兄貴が俺を伝説の男とよいしょするのは、何時もの事だ。それなのに何故だろうか。先程から、薄(うす)ら寒いような、悪寒(おかん)のようなものを背中に感じるのは。
守若冬史郎
佐古大和
守若冬史郎
佐古大和
目の前に整った守若の兄貴の顔。そして、唇の柔らかな感触と共に、喋りかけて開いていた口の隙間から、守若の兄貴の舌が侵入してきた。
吃驚(びっくり)して、俺の舌は縮(ちぢ)こまる。そんな俺の舌を捕まえようと、守若の兄貴の舌は奥へ奥へと侵入してくる。
口の中という狭い空間、俺の舌は意図も簡単に、守若の兄貴の舌に捕(と)らえられてしまった。
口内に侵入してきた時のように、荒々しく、貪(むさぼ)られるって思っていたのに、守若の兄貴の舌は、舌先でちょんちょんと俺の舌を突っくだけだった。
兄貴に似合わず、扉をノックするように、可愛らしく舌先で突っかれるもんだから、強張っていた俺の体から、力が抜ける。
なんというか、拍子(ひょうし)抜けである。
その瞬間を待ってました!とばかりに、先程まで俺を突っいていた舌が、ベロっと勢いよく、舌の上を舐めあげた。
俺の口から、唾液とともに、甘さを帯びた吐息が漏(も)れる。
互いの唾液が行き交う。
唾液の滑(ぬめ)りも手伝ってか、守若の兄貴の口淫(こういん)に激しさはないも、口の中を入念に舐められる気持ち良さに、段々と俺の膝から力が抜けていく。
今にも崩れ落ちそうになる膝を俺は、鼓舞(こぶ)し、辛うじて立っている状態を保つ。
舌の動きに気を取られていると、守若の兄貴がそっと指を絡めてきた。口淫と同じく優しさを孕んだ仕草が、更に俺を追い詰めていく。
上顎のあたりを舐められた瞬間、余りの気持ち良さに、なけなしの力を込めて、踏ん張っていた膝から、力が抜ける。
とうとう俺は、守若の兄貴が口を離すよりも先に、その場にへたりこんでしまった。
守若冬史郎
守若の兄貴は、子供のような無邪気な笑顔で、勝利宣言すると嵐のように去っていった。
颯爽(さっそう)と去っていく背中を見つめたまま、立つことすら出来ない俺。
佐古大和
守若の兄貴はキスが上手かった。上手かったのだが
明日から、どんな顔して、守若の兄貴と顔を会わせればいいんだぁぁぁーーー///!!
取り敢えず今は、この顔の熱を冷ますのが先決だ。
無意味だと知りながらも、俺は手で顔を扇(あお)いでみた。
おわり
あとがき 大塚愛の『さくらんぼ』を聞きながら書いた。おかしいな、曲調も歌詞も可愛い曲なのに、何故こんな話が出来上がるのか、本当不思議である。根っから腐れ遊ばしてるんだろうな(ヽ´ω`) 興味あれば、『さくらんぼ』の曲を聞いてみて下さいな。 さくらんぼの茎を結べたらキスが上手いっていのは、実際に関係性はない。ただ単に、舌を器用に動かせる=キスが上手いだろという流れから、茎を結べたらキスが上手いという風潮が出来た。 ただ、茎結びは、アンチエイジング効果や口臭軽減効果はあるらしい。 果物にも花言葉がある。 さくらんぼは『小さな恋人』