記憶の中の

アイツの 両親から順に、 出棺していく

大勢の モブと違って なにかに耐えるような顔をしていた

その目元は 赤く腫れていて 長く泣いていたのがわかった

アイツが生きていた時

挨拶で 会った時は あんなに やつれていなかった

交通事故だったから、 顔以外は ぐちゃぐちゃに なっているのを知っている

知らせを聞いて 飛んでいった時、 目も当てられないほど悲惨だった

今は 棺桶で 顔だけ見えるように 施されているが、

アイツの 両親は、 知っているのだろうか？

身体が 潰され、 四肢が あらぬ方向にまがり、

内蔵が飛び出し、 尋常ではない 自身の血を浴びていた

息子の姿を

知ってしまったのだろうか

ああ、 次は 俺が 献花する 番だったか…

献花は 故人の 血縁者や 関わりが深かった人から順に行うらしい

アイツの 両親が 要らない気を回してくれた

ああ…

ダメだ……

ごめん、、

ごめん、にいちゃん、、、

でも、ダメなんだ……

まだ 幼さが残った顔には、 大量の 粉が使われていた

青白さを 目立たせないように 化粧を使ったためだった

その表情は 酷く安らかで 怖いくらいに 凪いでいた

そういえば、 納棺前に 『エンゼルケア』と 呼ばれる処置が行われるらしい

死後硬直によって強ばった 筋肉を ほぐして、 穏やかな表情にする、と聞いたことが あるから そのせいだと思う

いつもなら、、

いつもなら、……

アホみたいな間抜け面 しながら俺の名前を呼ぶのに

小さなことでも 過剰に反応して、 コロコロ 表情が変わるのに、、

年上ヅラして、俺の手を引いたり、、

寒いからって 変な理由つけて 俺の隣で 映画見たり、

笑って 、手を繋いで、、

愛し合って……

このまま つづくと思ってた

ずっと つづくと思ってた

フィールド上では 殺しあって、

フィールドの外では 愛し合って、

穏やかに、、

このまま……__

アイツの 頬に触れた

苛立ちに よって ボロボロになった花を アイツに渡す

きっと アイツなら、 こんな 花でも 呆れながら 感謝するだろう

それとも 怒って もう一度と ねだるだろうか

献花した後、俺は 葬儀を後にした