深夜
奏の部屋
宵崎奏
……3小節後に転調して__
宵崎奏
……うん。この調子なら、明日には完成しそう
ピコンッ
東雲絵名
『あ、K。ちょっとサビのイラストで悩んでて意見もらいたいんだけど、見てもらっていい?』
宵崎奏
『うん、わかった。……』
___
東雲絵名
『どう?気になるところあった?』
宵崎奏
『……全体的な方向はいいと思う』
宵崎奏
『ただ、色が暗すぎるかな。この曲は、暗闇の中にいるってより、霧の中にいるようなイメージだから、それに合わせてほしい』
東雲絵名
『そっか……。じゃあ構図はそのままで色使いを見直してみようかな……』
ピコンッ
暁山瑞希
『お疲れー。遅くなってごめんね、みんな順調?』
宵崎奏
『お疲れAmia。曲のほうはもうすぐ完成すると思う』
東雲絵名
『私のほうはまだかかりそう。悪いけど、もうちょっと待ってて』
暁山瑞希
『うん、了解!じゃあもうちょっと新しい素材探してよっかな』
朝比奈まふゆ
『‥‥‥おまたせ』
暁山瑞希
『おっ、雪じゃん。お疲れー。学校の課題終わったの?』
朝比奈まふゆ
『うん。‥‥‥K。今から歌詞の調整をしたいんだけど、いける?』
宵崎奏
『うん、いけるよ』
暁山瑞希
『あっ、じゃあボク達はチャットで相談してるね』
東雲絵名
『何かあったら、チャット飛ばしてくれる?』
宵崎奏
『うん。またあとで』
朝比奈まふゆ
『‥‥‥じゃあK、ここの歌詞なんだけど‥‥‥』
宵崎奏
『うん』
______
朝比奈まふゆ
『__わかった。じゃあ今言った箇所は言い回しを調整してみる。』
宵崎奏
『うん、お願い。調整はいつ頃終わりそう?』
朝比奈まふゆ
『……明日は予備校も部活もないから、集中すれば、あさっての夜には上げられると思う』
宵崎奏
『わかった』
朝比奈まふゆ
『ただ……来週から期末テストだから、そこから月末まではあまりログインできないかも』
宵崎奏
『そっか……。じゃあ、来週以降にログインできる日があったら連絡くれると嬉しい』
朝比奈まふゆ
『うん。それじゃあ、私も作業に戻るね』
宵崎奏
……期末テストか……
宵崎奏
(もうそんな時期なんだな)
宵崎奏
(そういえば、お父さんが倒れたのもこれくらいの時期だっけ)
宵崎奏
(……お父さん……)
スーーッ
奏の父
奏はこれからも、奏の音楽を作り続けるんだよ
_____
宵崎奏
…………
宵崎奏
あれからもう、2年たったんだ……
翌日
宵崎家 キッチン
望月穂波
じゃあ今日は、掃除とお夕飯の作り置きをしていきますね
望月穂波
寒くなってきたので、今夜の分はあったかいシチューにしますね!
宵崎奏
うん、ありがとう
宵崎奏
わたしは部屋で作業してるから、よろしくね、望月さん
望月穂波
はい!
奏の部屋
宵崎奏
……ふぅ。完成した
宵崎奏
あ、キッチンからいい匂いがする。……今日はシチューなんだっけ
宵崎奏
ちょっと見に行ってみようかな
ガチャ
望月穂波
お疲れさまです、宵崎さん。今ちょうどシチューができあがったところですよ
宵崎奏
ありがとう。すごくいい匂い。今日の夜食にさせてもらうから__
グゥ……
宵崎奏
///……
望月穂波
ふふっ、よかったら今食べませんか?できたてですから、あったかくて美味しいと思いますよ
宵崎奏
……うん、そうだね。それじゃあせっかくだし、もらおうかな
望月穂波
はい。じゃあ今よそいますね。あ、熱いから気をつけてくださいね
宵崎奏
…………
カチャカチャン
宵崎奏
……そういえば、初めて望月さんがうちに来た時、作ってくれたのもシチューだったね
望月穂波
あっ、たしかにそうでしたね
望月穂波
ふふっ。あの頃の宵崎さんとは本当に全然お話してなかったですよね
望月穂波
シチューを作ったって伝えに行った時も、曲作りに集中してて全然気づいてもらえなかったですし
宵崎奏
あ……そういえばそういうこともあったね
宵崎奏
(……たしかにあの頃のわたしは全然望月さんと会話してなかったな……)
宵崎奏
(今思うと、ものすごく無愛想だっただろうな)
望月穂波
……宵崎さんと会ってから、もう2年も経つんですね
宵崎奏
……2年……
宵崎奏
(あの頃はずっと必死だったな。ひたすら曲をアップして、その繰り返し)
宵崎奏
(ご飯だって、ロクなもの食べてなかったし。そう考えると……)
宵崎奏
__昔に比べると、ゆったりした気持ちになれてる気がするな
宵崎奏
それに、昔より落ち着けるようになった気がする
望月穂波
落ち着ける……ですか
望月穂波
言われてみるとたしかに宵崎さんは段々穏やかな雰囲気になってる気がします
望月穂波
きっと、一緒に曲を作られている皆さんがとてもいい人達なんでしょうね
宵崎奏
え?
望月穂波
ほら、気持ちを打ち明けられる人達が近くにいてくれると、穏やかになれませんか?
宵崎奏
気持ちを……
宵崎奏
……たしかに、そうだね
誰もいないセカイ
巡音ルカ
……退屈だわ
巡音ルカ
あの子達、新しい曲を作ってるから忙しいのかしら
巡音ルカ
ねぇ、ミク、ひとりでいた頃はすごく退屈だったんじゃない?
初音ミク
……ちょっと。でも……
初音ミク
まふゆ達がここに来る時は、寂しい気持ちもあるから。だから、いっぱい来なくても大丈夫
初音ミク
今は元気なのかなって、思うから
巡音ルカ
あら。__ふふ、たしかにそんな考えかたもあるわね
巡音ルカ
でも、ここに来る時に寂しそうなら__、私達のほうから様子を見に行けば、楽しそうなあの子達に会えるんじゃないかしら?
初音ミク
……楽しそうな……
初音ミク
そういう風に考えたこと、なかった
巡音ルカ
でしょう?……そうだわ、今から一緒に会いに行かない?
初音ミク
……え?
巡音ルカ
ふふ、我ながらとってもいいアイディアだわ。さぁ、行きましょうミク!
クグッ
初音ミク
え……わわわ……
コツンコツン