起立、気を付け、礼 その合図とともに速攻で荷物をまとめて 私は教室を出た
翼
(今日は短縮だから放課後暇なんだよな)
そんなことを考えながら昇降口まで行く
翼
(テストも終わったし……しばらく暇になるなぁ…どうしようか)
いつものように曲でも聞こうかと 音楽プレイヤーを取り出す
翼
……?
翼
(イヤホンが……ない…?)
翼
(教室!?まずい、今日は金曜日だ……土日に音楽を聴きながら勉強できなくなる?そんなの生きてけない)
踵を返し、急いで学校に戻る
翼
はぁ……はぁ……疲れた…最悪
誰もいなくなったであろう教室の戸を開け 自分の席へと向かう
その時
???
わぁっ!?
翼
……!!?
背の低めなクラスメイトがいた
???
か、鴉山(からすやま)……さん……
翼
あ、は……はい
会話のした事の無いクラスメイトとの 気まずい時間が流れていく
???
あ、あの!
先にこの空気に耐えられなくなったのは 彼女の方であった
???
鴉山さんも……忘れ物ですか?
翼
……え、アッ、はい
???
あははっ、一緒ですね
翼
う、うん……そうだね
???
あはは……
翼
あは、は……
翼
(ど、どうしよう……)
翼
(何を話せばいいか分からない……!)
そう、お察しの通り、 鴉山 翼(からすやま つばさ)は 普段からクラスメイトに無視をされていたため 会話をするスキルを失っていたのだ
翼
(どうしようどうしよう……)
翼が走って逃げようかと頭に浮かんだ時、 彼女が言った
???
あの、もし良かったら……一緒に帰りませんか?
翼
………え?
彼女が言った意味を翼は理解できなかった
翼
(話すだけでもキツイのに……???)
それでも彼女はまっすぐとした瞳で
???
私、クラスのみんなと話したことはあるけど、鴉山さんとは話したことないからさ……話してみたくて………ダメ、かな……
すぐにまっすぐとしていた瞳は しおらしくなり 背筋も丸くなり完全に縮こまってしまった
翼
え、いや!いいよ!全然大丈夫だよ!帰ろっか!!
翼
(ん〜っ!……なにやってんだ私ィ…)
???
え、いいんですか!や、やったーっ!
善良な心が残っていた翼は反射的に答えてしまった
???
そういえば鴉山さん私の名前、知らないですよね?
翼
あ、その、ごめんなさい
???
あははっ!いいんですよ!謝らなくて
彼女は可愛い笑顔を浮かべながら言う
???
私の名前は
成虎
成虎 こがね(なるとら こがね)です!







