遠い 遠い時の果て
そこに住まう人は皆
霧谷雪さん
永遠の命をもつ世界での話
霧谷雪さん
(赤い実の成る木の下)
霧谷雪さん
生まれながらに
霧谷雪さん
死の呪いがかけられた少女の話
霧谷雪さん
色付いた町外れ蒼く光る赤い実のお菓子屋
霧谷雪さん
(ちょっぴり寒くなった今日は妙に誇らしげ)
霧谷雪さん
(自信作を売りにゆく)
霧谷雪さん
(待ってて今度こそ美味しいんだから)
時計の見える市驚いた
霧谷雪さん
珍しく賑やかね
霧谷雪さん
物憂けな街の隅ひとり
霧谷雪さん
赤い実のパイはどうですか
霧谷雪さん
自信作なの!ニコ
「そんなのひとつも売れないさ」
霧谷雪さん
……ッッッ
少女を見て蔑む人達
霧谷雪さん
(みんなと何も変わらないのに)
霧谷雪さん
美味しくできたのに…
霧谷雪さん
ぁ、あの…
もぶ
…
霧谷雪さん
……ッッッ
霧谷雪さん
今日も声は届かないのね
霧谷雪さん
まるで透明になったみたいだわ
霧谷雪さん
そうして誰もが知らぬ振りをした
何故なら少女は呪われてるから
霧谷雪さん
(死んだ世界で唯ひとり生きていた)
少女の話
夜なべでアレンジパイとにっこりスマイル
霧谷雪さん
(引っ提げ)
少女はまだ諦めない
時計塔の針も空を指して
霧谷雪さん
お腹も鳴るそんな時間
ふと後ろから人が少女を押す
霧谷雪さん
(甘い籠は落ちる)
霧谷雪さん
ぁ…ッ
お菓子を踏みゆく人達
霧谷雪さん
平気な顔…してさぁッ
霧谷雪さん
(惨めに拾い集める)
霧谷雪さん
(ふともうひとりの手が)
ハグ
あ、
霧谷雪さん
!?
霧谷雪さん
(どろどろのパイを徐に口に入れて)
ハグ
「おいしいね」!ニコ
霧谷雪さん
…!
その言葉で心は溢れた
まるで輪郭を描いたみたいだわ
ハグ
…スッ
ハグ
ん
霧谷雪さん
(そして彼女(彼)は手を差し出した)
霧谷雪さん
(何故なら少女に呪われているから)
死んだ世界で唯ふたり生きていた
遠い物語
霧谷雪さん
(街の人達は哀れむ)
霧谷雪さん
赤い実を食べて呪われた者を…
ハグ
…?ニコ
霧谷雪さん
(永遠に生きれずに死ぬのさ)
嗚呼なんて可哀想な話
霧谷雪さん
(ふたりは笑う)
ハグ
ニコ
霧谷雪さん
…!(それでも笑う)
霧谷雪さん
ニコ
とっても素敵な呪いね
霧谷雪さん
(例え明日死んでも)
霧谷雪さん
『今』が確かで大切になるから
ハグ
…?
ハグ
もう声は届かないのね
霧谷雪さん
まるで透明になったみたいだわ
ハグ
そして誰もが知らぬ振りをした
霧谷雪さん
何故なら世界が呪われているから
ハグ
永遠の呪いは解かれていた
霧谷雪さん
まるでふたりの方が狂ったみたいだろう
ハグ
そしていつか笑うように眠る
霧谷雪さん
何故ならふたりは放たれてるから
ハグ
死んだ世界で唯
霧谷雪さん
ふたりだけが
幸せだった
ハグ
ふぅ、
ハグ
またまたボカコラありがとうございました
ハグ
またしてくれると嬉しいです
ハグ
じゃ、おつハグ