テラーノベル
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月曜日の朝、教室に入ると、緑はすでに席に座っていた。
いつものように、机に肘をつけて外を眺めている。
桃 。
緑 。
今までと同じやり取りのはずなのに、胸がきゅうっと締め付けられる。
きっとそれは、緑の"視線の先"が、もう私じゃないから。
彼の目は、数秒後には教室のドアをちらりと見る。
次に誰が入ってくるのか、それが"あの子"なのかどうかを。
私の席は、緑の隣。
距離にして、わずか数十センチ。
でも、その距離が今は遠く感じる。
緑 。
授業の合間、ノートにいたずら書きをしていた緑がぽつりといった。
桃 。
緑 。
緑 。
緑が楽しそうに話す度、私は笑顔を作る。
でも、胸の奥は痛い。
ほんの少しずつ、彼の世界から私がはじかれていく気がする。
緑 。
桃 。
桃 。
緑 。
"みんなで"。その言葉が、胸に刺さる。
私はきっと、これからもその「みんな」の中に居続ける。
緑の隣の席にいるのに、心の距離はもう埋まらない。
気づけば、ノートの端に無意識で書いていた言葉が目に入った。
《好きになっちゃ、だめなのに》
すぐにそれを、シャーペンでぐしゃぐしゃに塗りつぶした。
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