Side 鶴蝶 自分が担当している案件の情報を灰谷兄弟が持っていると聞いた俺は早速灰谷蘭に電話をする
「突然悪いが、あの案件に絡んでる情報がなるべく早めにほしい」 「ああ、あれな。うちにあるから勝手に持ってけ〜。ファイル名は○○、パスはいつもの+○○。じゃ」
俺たちは今マイキーを首領とする組織を創るための資金集めに明け暮れていた。主に金の工面に長けている九井の指示で動く形となるため、都度綿密な情報交換や打ち合わせを行う場所が必要となる。まだ固定の事務所がないため、今は灰谷兄弟が住んでいるマンションの一室を借りることが多い。そのため、各々スペアキーを所持して勝手に入れるようにしているのだ。
俺はいつも通り来客用の駐車場に車を停め、エントランスを通ってエレベーターに乗り込み、目的の部屋にたどり着く。カードキーを差し込んで鍵が開いたのを確認し玄関のドアを開ける。パソコンのある部屋まで行って必要な情報だけをUSBに取り込みさっさと帰って、さっさと担当の案件を片付けてしまおう。
…数分前の俺はそう思っていた
鶴蝶
扉を開けたら女がこちらを見て突っ立っていたので、反射的に拳銃を構えるこの部屋にはそれなりの量の情報が保管されているが、大した情報じゃない内部関係者なら誰でも見られるものでパスワードも各案件の担当者に聞けばすぐに答えるレベルだ。となると、内部に裏切り者はいないだろう。外部の人間がこの部屋を嗅ぎつけて潜り込んできた可能性が高い。
しかし、女はかなり若く見えた。恐らく10代であろう。見つかったことに驚いているのか、拳銃を向けられていることに怯えているのか、どちらかはわからないが青ざめた顔をしている。 「動くな」という俺の指示に背きそうもないことと、血の気の引いた顔色から見るとおそらく素人だ。もしかしたら、灰谷兄弟との痴情のもつれによる報復が目的かもしれない。こんな金にならなそうなガキにまで手を出してんのか?と一瞬疑問が浮かんだが、あの二人ならやりかねない。
ここに居る理由を吐け。正直に言えば生かすか殺すか考えてやってもいい。
Side 芹 やばい…これはやばい。扉を開けた男は、頭から顔にかけて大きな傷があった。生まれて初めて死を覚悟したし、驚くほど急速に血の気が引いていくのを感じる
鶴蝶
男はこちらに拳銃を向ける。私は息を止めた。少しでも動いたら殺されるそう思った。
昔から蘭ちゃんと竜ちゃんに言われ続けていることがある。『万が一事件に巻き込まれたら絶対に相手に逆らうな素直に従ったほうが生きて帰れる確率が上がる』私は頭の中でそれを復唱する。なるべく落ち着いて、相手には逆らわない。
ここに居る理由を吐け。正直に言えば生かすか殺すか考えてやってもいい
ここに居る理由をこの人に話す意味とは?私も侵入者ではあるが、この部屋は元々兄達の持ち物なのだ。理由なんてなくても私がここに居ること自体に問題はないはず。何をどう答えれば正解なのか。男の意図がまったく掴めない。しかし、相手の意図をはかるには時間がない。返答の速度も生死に直結するだろう。私は唇に力を入れ素直に答えた。
灰谷 芹
すると男は少し目線を下げて考える素振りをしてから、いきなり携帯を取り出し誰かに電話をかけ始めた。
鶴蝶
目的の相手に繋がらなかったのか舌打ちをする男。するとまた電話をかけ始める。同じ人にかけているのか、別の人にかけているのかはわからないが今度は繋がったらしい。
「…もしもし、忙しいとこ悪いな。灰谷のとこに怪しいガキがいるんだがどうする? ああ、さっき連絡したけど繋がらねぇ。 わかった。たぶんあっちには三途がいるだろうから暴走しないように一本連絡入れておいてもらえると助かる。 じゃ。」
私のことをどうするか誰かに相談しているようだった。そして、会話の中でこの男は「灰谷」としっかり名前を呼んだ。もしかしたら兄達が目的でこの部屋に乗り込んで来たのかもしれない私は二人がこの場にいなくてよかったと、心からそう思った。
Side 鶴蝶 「二人の仕事内容が知りたくて」俺はその答えを限りなく黒に近いグレーと捉えた。痴情のもつれであれば「復讐がしたくて」という類の返答になるだろう。「仕事内容について知りたい」はどちらかというと外部スパイ側の返答だ。この部屋にいるということは灰谷絡みである可能性がかなり高い。とりあえず灰谷兄弟に連絡をすることにした。…が、何コール待っても出ない 面倒くさいことになったなとイライラしてきて思わず舌打ちをする。
鶴蝶
仕方ない。報告ついでにマイキーの指示を仰ぐか。 「…もしもし、忙しいとこ悪いな。灰谷のとこに怪しいガキがいるんだがどうする?」 『灰谷には確認したのか』 「ああ、さっき連絡したけど繋がらねぇ。」 『とりあえず拘束して倉庫に連れていけ。一応何か知ってるかもしれないから、拷問は灰谷達にさせろ。俺から連絡しとく。』 「わかった。たぶんあっちには三途がいるだろうから暴走しないように一本連絡入れておいてもらえると助かる。 『わかった。』 「じゃ」
例え女であろうがガキであろうが、内部関係者が誰もいない状況で、この部屋に一人でいたというのであればその時点でアウトだ。マイキーの指示は然るべきものだった。俺は拳銃を向けたまま女に近づき手首に手錠をかけた。このままだと見た目がいかにも過ぎるので、自分が羽織っていたシャツを脱ぎ、手首を隠すように女に羽織らせる
女は泣くことも喚くことも命乞いをすることもなく、俺の言うことを聞いた
#6話へ続く
コメント
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今垢から失礼します🙇♀️ほんとに黒歴史ストーリーしかないんでお願いしますtiktokの方を見て頂きたいです😭アカウント消せばよかったんですけど消し忘れました、どうか、見てないでいただきたいです🤦♀️🙌🏻見てしまった人は、忘れてください🙇♀️
めっちゃ舌打ちしてた
自分もめっちゃドキドキしてたwww