Side 蘭 今日は朝早くからとある組織の尾行をしていた。俺たちがバックについてた賭場でイカサマして多額の金を持っていった組織だ。尻尾を掴めば多少無理やりにでも金を取り戻せるうえに、他の賭場でも同じようなことが起こってるらしいので掴んだ情報を横流しすればそれも良い値段になるだろう。
灰谷 蘭
灰谷 蘭
灰谷 蘭
運転席でハンドルに両腕を乗せて項垂れる竜胆。最近まともに芹と一緒にいる時間が取れていない。俺も竜胆もフラストレーションが溜まっていた。この件は使えないディーラーを雇った九井の落ち度も大きい。仕事はほぼ九井が配分しているため、上手く尻拭いすれば一週間くらいの休みはもぎ取れるだろう。
久しぶりに芹連れてどっか旅行でも行くかぁとぼんやり考えていると賭場の監視カメラの確認をさせてた部下から連絡がくる。証拠が上がったようだ 俺はすぐに動画を送るよう指示を出す
灰谷 蘭
灰谷 竜胆
尻尾さえ掴めば、あとは力でねじ伏せるだけ。相手が返金にYesを出すまで煮るなり焼くなりだ。拷問と変わらない。殺せないのが少し面倒だが、竜胆が言うようにストレス発散くらいにはなるだろう。今日のスーツはおじゃんだなと思いながら車のドアを開けた。
Side 芹 私は男の言うことに従い、後に着いていく。来客用の駐車場に停められた黒塗りの高級車の後部座席に乗せられ、竜ちゃんの眼鏡を取られ、目隠しされる。あまりにリアリティがなくて「よくドラマで見るやつ…」などと他人事のように思ってしまった。
30分くらい車に揺られていただろか その間、男と私の間には一切の会話もない。無言の車内で私は腹を括り始めていた。どうせ殺されるならそれまで楽しいことでも考えていようと開き直る。先程までの恐怖が嘘のように、映画ごっこの末に殺されそうなこの状況がしょうもなさすぎて笑えてくるレベルだ。
あ〜こんなんで死んじゃったら蘭ちゃんも竜ちゃんも怒るかなぁ。できれば「芹はほんとマヌケだな」って笑い飛ばしてほしいなぁ。二人の声、二人の仕草、二人の愛おしい笑顔、思い出せば思い出すほど独り占めしていた私は幸せものだと実感して目頭がじんわり熱くなる。まぁ、このまま普通に生きてたら寿命的に兄達のほうが先に死ぬことになるので、それを見ずに死ねる人生もなかなか乙かもしれない。
キュ
車が停車する。目的地についたのだろう。男は後部座席のドアを開けて私を下ろす。目隠しはまだ取ってもらえないようだ。しばらく歩くとシャッターの開く音がする。ホコリと鉄が入り交じるようなニオイ。廃工場もしくは使われていない倉庫のようなところだろう。
鶴蝶
当り前だが椅子などは用意されていないため、地面に座らされる。足から伝わる地面の冷たさに少し心細くなった
春千夜
春千夜
今まで聞いたことのない声が聞こえる全身に力を入れ歯を食いしばる。
スルッ
急に目の前が明るくなった。目隠しを外されたようだ。私は久しぶりに入り込んできた光に上手くピントが合わせられず、数回瞬きをする。
ピントがあった私の瞳に映ったのは、透き通るような桜色だった。西洋画に描かれる天使のような、オーダーメイドの高級フランス人形のような、この世のものとは思えないような美人がこちらを不機嫌そうに見ている。
春千夜
春千夜
春千夜
こっっっわ。見た目と中身がこんなにも一致しない人は初めて見た。本当にこの人が発した言葉なのか疑ってしまうくらいだ。冷静に考えたら、殺人鬼と一緒にいるような人が天使なわけないだろうけども。しかも、この人さらっとクスリって言いましたよ。絶対やばいクスリじゃん。ほんとに死なないのそれ???死ぬ一歩前までは行くんじゃないの???どうせ殺すなら一思いに殺して欲しいんだけど。
鶴蝶
鶴蝶
鶴蝶
え、待って。今「灰谷達が来るまで待て」って言いました???なんで???もしかして私を人質にして呼び出したり…とか…。一気に血の気が引いていく。私はどうなってもいい、そもそも自分が撒いた種だし。しかし、私のせいで二人の身に危険が及ぶなんてそんなのは絶対に嫌だ。是が非でも阻止しなければならない。なんでもいいからこの二人が蘭ちゃんと竜ちゃんから手を引く方法を考えなければ…
灰谷 芹
ガッ
口を開いた瞬間、天使のような悪魔に頬を殴られた。あまりの衝撃に一瞬何が起こったのかわからなかったがジワジワと頬の熱を感じ始める。たぶん口の中も切れており、血の味が充満している。いえば生理と同じ感じだ。
私の胸ぐらを掴んで瞳孔ガン開きの悪魔さん。通常であれば怖すぎて手も足も出ないだろう。しかし今は大好きな蘭ちゃんと竜ちゃんの身の安全が私にかかっているのだ。使命感からか不思議と恐怖は感じなかった。
灰谷 芹
春千夜
鶴蝶
鶴蝶という男が額に手を当てて呆れたようにため息をつく。私はまた殴られてしまう前に言い切らなければと、早口で勝負の条件を提示する。
灰谷 芹
灰谷 芹
灰谷 芹
捕まってる人質からの提案が受け入れられる可能性なんてほぼ0だと思う。しかもこの条件、相手側のメリットはないに等しい。下手したら、この瞬間殺されてもおかしくないくらいだ。それでも、兄達が来るまで黙って待っているわけにはいかなかった。最後の悪あがきだ
Side 春千夜 「1回負けるごとに貴方が持っている『クスリ』を打ちます。3回負けたら殺されても構いません。その代わり、私が3回勝ったらここに来る二人には絶対手を出さないでください。」 俺はこの発言を聞いて疑問に思ったことが2つある。1つ目は、俺たちが灰谷兄弟に手を出すと思っていること。2つ目は、この状況でしかも殴られた後にベラベラと喋った内容が、自分の保身ではないこと。同業者でも震えながら命乞いをするような場面で、このガキは自分ではない奴の保身をかけて勝負をして欲しいと提案してきたのだ正義のヒーロー気取りかよ。虫酸が走る。俺はコイツがどこまでいったらグズグズに泣き喚いて自分自身の命乞いをし始めるのか興味が湧いた。灰谷が来るまであと数十分程度だろう。暇つぶしにはなるか。
春千夜
灰谷 芹
そう言い放つと心底絶望したような顔をする。気分がいい。どうせならもっともっと絶望に歪む顔が見たいと思った。自分が提案した勝負に負けて焦る様子を見るのはさぞかし滑稽で面白いだろ。
春千夜
灰谷 芹
春千夜
灰谷 芹
春千夜
灰谷 芹
春千夜
灰谷 芹
春千夜
#7話へ続く
コメント
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今垢から失礼します🙇♀️ほんとに黒歴史ストーリーしかないんでお願いしますtiktokの方を見て頂きたいです😭アカウント消せばよかったんですけど消し忘れました、どうか、見てないでいただきたいです🤦♀️🙌🏻見てしまった人は、忘れてください🙇♀️
手押し相撲wwww