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体育館からようやく校舎まで戻って来て、 長い廊下を優杏におぶられながら進んだ。
授業中だから、私たち以外誰もいない
藤野 翠
ようやく一安心して、私は優杏に謝った
広瀬 優杏
実際にスイスイと歩けているし、 優杏は本当にこれくらいなんともないらしい
広瀬 優杏
優杏が得意気に言う
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
広瀬 優杏
ペースを落とさずに、 優杏は廊下を歩いていく
藤野 翠
藤野 翠
私はそう呟いて、そのまま優杏の背中に 頭を預けて揺られていた
広瀬 優杏
優杏は溜息をついて言う
両手を組み直し、また私の体をもう一度 支え直した
広瀬 優杏
私が言葉を返す暇もなく優杏は皮肉る
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
私は何も言えなかった
優杏は笑う
でも、その笑いはいつもの元気な笑いじゃ なくて、少し冷めた笑いだった。
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
広瀬 優杏
それっきり、優杏は何も言わなくなった
優杏は、きっと私のためにも ああ言ってくれたんだろう
それなのに、私は返す言葉が見つからなくて
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
どうしよう
何か言わなきゃ
あのとき優杏が言ってくれたように、 私も………
藤野 翠
優杏が今どんな顔をしているかはわからない
サラサラとした優杏の黒髪が揺れるのを 見つめながら言った
藤野 翠
こんな場所にいるなんて、もう嫌だ
私だって、こんな学校生活、大っ嫌いだ
「もう無理だ」って思っても、 周りは休ませてくれない
藤野 翠
ポタ
私の膝から、血が一滴落ちる
優杏はそれに気づいて足を止め、 ポケットに片手を突っ込んだ
その赤色だけがやけに鮮明で、 急にもう全てどうでもよくなった
藤野 翠
小さく、でもハッキリ私はそう言った
藤野 翠
沈黙
ハンカチを掴んでポケットから 出しかかった優杏の手はピタリと 止まっていた
広瀬 優杏
ポカンとした理解が追いついていない顔で、 優杏が振り返って私を見つめた
藤野 翠
その優杏の顔を見た途端、ハッと我に返る
藤野 翠
自分で自分のセリフにびっくりした
今、私なんて言った?
藤野 翠
優杏、なんて返してくるんだろう
広瀬 優杏
優杏は私をゆっくりと下ろし、 振り向いて私の両手を取った
広瀬 優杏
キラキラとした眼差しを私に真っ直ぐ 向けて、優杏が言った
さっきまで冷めていた目が、 嘘みたいに輝いていた
藤野 翠
翌日
私は自室で荷物をひっくり返し、 通学リュックから物を入れたり出したりを 繰り返していた
静かで無駄に広い私の部屋に、荷物を 出し入れする音だけが響く
この家にいるのも、今日が最後かもしれない
そう思っても、不思議と実感はなかった
一度手を止めて、部屋を見回す
それからベランダに出て、空を見上げた
今は就寝前
もうすっかり夜中なのに、そこら中に 窮屈そうに建っている建物のせいで 目が痛くなるくらい明るかった
高いビルにより遮られた狭い夜空には、 小さな星がチラホラ見えるだけで 月も見えない
今日は新月かな。 それともビルに隠れてるだけ?
ベランダからの景色は狭苦しくって、 ここから出られないみたいな感じがする
藤野 翠
私はすぐ部屋に戻り、 また荷物を用意し始めた
藤野 翠
藤野 翠
『逃げちゃおっか、二人で』
昨日、私が勢いで言った言葉だった
でも、優杏はそれにめっちゃ賛同して…
なんか行くことになっちゃった
藤野 翠
けど
藤野 翠
今、胸の奥がむずむずするくらい ワクワクしてる
藤野 翠
いつも通り家を出て、駅まで歩く
途中で銀行に寄って、口座から大金を 引き出した
罪悪感が凄かったけど意を決してそれも 飲み込んで、財布に札束を突っ込み 無理矢理別のことを考えた
早足に駅まで歩いて、トイレへ駆け込んだ
急いで着替えて個室を飛び出し、スマホの トーク履歴を確認しながら早足にいつもと 反対方面の電車に乗る
私は揺られながら集合場所へ向かった
広瀬 優杏
学校の最寄り駅から少し離れた、 見慣れない駅のホーム
聞き慣れた声に、見慣れたその姿に、 ひとまずホッとする
でもそれと同時に、来たこともない場所 なのに、もう引き返せない気がした
平日の中途半端な時間だから人は少なめ
制服から着替えた優杏が、こっちに向かって 手を振っている
そこら辺の大人に不審がられて、 制服から学校を特定されて連絡でもされたら たまったもんじゃないからね
リュックは色と形指定で直接どの学校か 調べることはできないだろうし
藤野 翠
広瀬 優杏
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
私の家は貴族とまではいかないが一般よりも 上流の家系だ
広瀬 優杏
藤野 翠
藤野 翠
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
広瀬 優杏
藤野 翠
優杏とこんな会話をしてると、ようやく 本当に今から二人で学校放り出して 逃げ出すのだと実感が湧いてきた
「怖い」と「ワクワク」が混じった 変な気持ち
広瀬 優杏
優杏はパンッと手を叩いた
広瀬 優杏
その明るさと軽さに、少しだけ救われる
私たちは、二人並んでホームへ歩き出した
もう、振り返らない
同時刻、藤野家
プルルルル……
急に、学校から電話がかかってきた
藤野の母
応答ボタンを押す
藤野の母
先生
先生
それを聞いた途端、心臓がドキッと跳ねる
電話の担任の声に、私は一瞬黙った
胸の奥に小さな違和感が広がる
藤野の母
時計を見る
翠なら、ついさっき見送ったばかりだ
藤野の母
コメント
2件
初コメ失礼します!! これ母親からしたら恐怖すぎますね...!笑 なんかもう凄いです!!ほんとに面白いです!!!!実はアプリ入れる前に、Safariでななかさんのお話を拝見させていただいてて!!イラストも上手いしお話も書けるし...え?神ですか??これからも頑張ってください!! ps.可能であればフォロバしてくださるとありがたいです...ななかさんの他の投稿見たくって、、