俺の声は届いていますか？

記憶喪失病

24時間が経つその日の日付が変わる瞬間

何もかも忘れてしまう

自分の名前も歳も病気の事も

大事な人の事さえも

世界に3人しかいないとされている

その難病

その3人の一人が

ガラガラガラ

俺の恋人

さとみくん

また君は悲しそうな顔をする

この顔を見るのは今日で何回目？

こうやって君に説明するのは何回目？

毎日毎日俺は……

「大丈夫」

無責任な言葉だ

大丈夫なわけないのに

そうやって今日もまた

どうでもいい話で盛り上がる

君は笑ってくれる

明日になれば

忘れてしまうのに

忘れたよ

さとみくんが病気なる前なんか

何年前だと思ってんの？

もう

忘れたよ

そうなのかな？

さとみくんは幸せだったのかな？

いや……

そんなわけないな

アレが幸せだったって

どうかしてるよ……

思わず目が熱くなる

また明日なんて

ないんだよ

ガラガラガラﾊﾞﾀﾝ

ﾊﾞﾀﾝ

外が真っ暗になった

さとみくんが入院してる

重症患者の病棟

人はほとんど居なくて

薄暗い電気で照らされている

俺はいつも病室を出たあと

涙が溢れてしまう

いつも２,３人歩いてる看護師さんたちが

哀れみや同情の目で

悲しそうに励ましてくれる

優しい人たち

大丈夫

俺は大丈夫