死別

コンコンコン

やっと知れた

貴方のこと、

貴方の名前…

ヨンジュン、ヨンジュン。

忘れたくないよ

明日が怖い

眠るのが怖いの

貴方に会いたいのに、 貴方を思い出せないの

前方性健忘…

私は、1度眠ると前日、その日の記憶が全て消えてしまう記憶障害。

私自身も、誰も

その原因を知らない

思い出せない

私に、何が起きたのか。

君の夢

ねえ、それはどんな夢なの？

その夢の中で、君と俺は何をしてるの？

きっとそれも、何かの偶然

思い出して欲しいのに、思い出されるのが怖い

俺はいつまでも矛盾ばっかで、弱くて。

ダメだよ

そんなの、ダメ…

俺達の関係が、全部崩れちゃう

もう君の笑顔が見れなくなってしまう

俺のことなんて、知らなくていいんだよ

いつまでも。

…

本当にこれでいいのか？

また愛する人を騙すの？

ああ、君に名前を呼ばれたのはいつぶりだろうか

懐かしくて、切なくて

どうしようもなく複雑で

今すぐに君を抱きしめてしまいたいけれど

手が震えて、あの日がフラッシュバックしそうになる

何もかもを恐れている。

君には幸せでいて欲しい

コンコンコン

ヨンジュンさんは、なぜ私を避けるの？

ヨンジュンさんとは、いつからの知り合いなのだろう

これから毎日、日記を書くことにした

初めての、1日目の日記は

あなたの名前は___ 花。 年齢は19歳 貴方は2年前、大きなストレスやショックにより『前方性健忘』という記憶障害になりました。 前方性健忘とは、眠りにつくと前日、その日の記憶が全てリセットされてしまう。 あなたには毎日会いに来てくれるヨンジュンという男の人がいて、その人は凄く優しくて、貴方が信用してる人。 今日もヨンジュンさんが来たんだけど、すぐに帰っちゃった。いつもこんな感じなのかな？ 私と彼がどんな関係なのかは分からないけれど会う度に心が落ち着く。 そして、この日記は毎日起きたら読んで、寝る前にその日の事を記録すること。 それじゃあ、また明日。

看護師さんに頼んで、私の情報を教えてもらった。

それじゃあ、頼んだよ

明日の私。

なにこれ？

必ず読む と書かれたノートが1冊

置かれている。

私は、恐る恐る1ページ目をめくった

カレンダーに目を向ける

だから私、何も覚えてないんだ

私には、いつも会いに来る男の人がいるらしい

私の頭はハテナで埋め尽くされていた

昨日の私がこれを書いたのだろうか、

じゃあ、今日の私が2ページ目を書く、

そして、明日の私が3ページ目を…

なんで私、こんなことになっちゃったんだろう

両親は？

どこにいるの、

コンコンコン

コンコンコン

ヨンジュンが出ていった病室では

沈黙だけが流れていた

あの二人、何があったの？

どんな関わりがあったの？

なんであんなに仲が悪いの…

今日もヨンジュンという人が来た それともう一人、ボムギュという私の幼馴染と名乗る人が来た。 ヨンジュンとボムギュはなんだか仲が悪く見えた。何があったのかは教えてもらえなかった。 ヨンジュンに、私とどんな関係だったのか聞いたら『どんな関係でもなかったよ』と言われた。今日は難しい1日だった。

おやすみ、今日の私

よろしくね、明日の私。