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俺はしがない配達員
今日もいつもと同じ運び作業を淡々と遂行する
そんな俺だが最近、気になっている人がいる
よくうちの配達会社を利用してくれる人で
今回も配達先の一つだ
ピンポーン
「はーい」
ガチャッ
颯一郎
彼はいつも通りエプロンを付けて出迎える
『サインお願いします』
颯一郎
颯一郎
『ありがとうございます』
颯一郎
颯一郎
『…いえ!こちらこそ、いつもご利用ありがとうございます』
ガチャッ
びっくりした、俺のこと覚えててくれたんだ…
初めて会った時は驚いた
顔の綺麗さにも驚いたが2メートル近くある身長の高さ
何かスポーツをしている人なのかもしれない
俺はあまりテレビを見ない方なのでそう言ったことに関して疎い
気になってはいるが別に狙っている訳ではない
何せ彼の人妻感が拭えないんだ
いやまぁ、彼は男なんだが
そうではなく、彼の風貌に違和感を抱いた
今日はそこまで酷く無かったが
彼は良く怪我をしている
服の上からでも包帯やガーゼで覆われているのが分かる程に
まさか…?
彼女とかに暴力を振るわれて…、
………
いや…あのガタイなら抵抗できるか
早とちりして彼に迷惑をかける訳にはいかない
今日も一日ハンドルを握りしめて配達をする
この気だるさも彼に会えると思うと楽しみに変わる
『では受け取りのサインを、』
颯一郎
カツ、カツ、カツ、
ツー、ツー、ツー、
カツ、カツ、カツ、
『…、』
前々から思っていたが、彼はサインの時一定のリズムを刻む
癖なのかな…?
颯一郎
カシャンッ
彼がボールペンを落としてしまった
颯一郎
颯一郎
『荷物のお受け取りをお願いします』
颯一郎
ガチャッ
『ん…?』
キャップに紙が挟まっていた
『252…、何だこれ』
まだ配達が残っていたので紙の事は後回しにした
『ふぅ…あったけぇ』
配達がある程度終わり偶々会った先輩と俺は駄弁っていた
『あ、そう言えば先輩、』
「ん、?」
『252ってどう言う意味か分かります…?』
「えー…?知らねぇ、」
「てかスマホで調べろよ」
『あそっか、』
俺は徐にスマホを取り出した
『え…、』
「252」とは無線の通話コードであり、「逃げ遅れ・要救助者」を意味する。
『…とん、とん、とん…つー、つー、つー、とん、とん、とん…』
「んぇ…?」
『あ、いや…すみません、』
ふと彼を思い出し呟いてしまった
「お前それ…、SOS信号じゃん、」
『え、先輩知ってんすか?』
「親父が昔警察でさ、」
「何かあった時のために覚えとけって」
「モールス信号だろそれ」
嫌な想像が俺の脳内に駆け巡る
彼は何故いつも傷だらけなのか
何故遠回しな伝え方をしているのか
色んな考えが出てきても確証に至らない
…そう言えば、前にも似たような事があった
いつも通り荷物の受け渡しを終えて帰ろうとした
颯一郎
彼はいつも優しく微笑んで手を振ってくれた
だけど、手の振り方が不自然だった
親指を折り、残りの指を折る
またパーに戻してを繰り返していた
あの時はてっきり手を痛めていたのかと思った
すぐさまスマホで意味を調べる
ハンドサイン、家庭内暴力を受けている際に用いる
『あ、ぁぁ、…ッ、』
何ですぐに気づいてあげられなかったんだろう
ずっと助けを求めていたのに
次配達する時に彼とコンタクトを取ろう
ピンポーン
今度こそ彼を助けるんだ
「はーい」
あれ、いつもと声が違
ガチャッ
福也
『ぁ、えっと…、』
福也
福也
『あの、つかぬ事をお聞きしますが…』
福也
『そうですか、』
福也
『ぁ、ありがとうございます、』
ガチャッ
長身の爽やかイケメンが出てきたんだが
え、お友達?
もしかして今までの俺の勘違い?
顔に熱が集まってるのがわかる
やば、恥ずかしい
『…』
いやちょっと待て
おかしいだろさっきの
俺はまだ「何を」質問するか言ってない
何であのお兄さんは俺が彼の事を質問しようとしたのが分かったんだ?
俺がここに配達するのが初めてなのかもしれないのに
何で彼の事を俺が知っている前提でお兄さんは答えたんだ?
配達員が毎回俺だって知ってたのか?
あのお兄さんが彼の友達だったとして
普通友達に配達員の話題をするか?
それにもし本当にDVを受けていたとして
何でそれを見ず知らずの俺に助けを求めるんだ?
お兄さんが友達ならそっちに相談したほうが確実なのに
しかも態々分かりにくく助けを求めてきた
口頭で伝えたり紙に書いて直接渡せる状況じゃ無かった?
監視されていた?
誰にだ?
加害者の彼女か?
あ
違う
彼女じゃない
彼氏だ
あのお兄さんは友達じゃなくて
彼氏なんだ
ずっと彼氏に監視されてたんだ
だから唯一接触可能な配達員の俺にバレないように助けを求めていたんだ
じゃあ、今日彼が出てこなかった理由って…
ガシャァンッ!!
颯一郎
福也
グシャッ
颯一郎
福也
福也
ガッ
鈍い音が鳴る
彼の拳が俺の腹にめり込む
颯一郎
付き合い始めはこんな事なかった
いつも優しく頭を撫でてくれて、
「愛してる」と甘く囁いてくれた
だから期待に応えようと努力した
でも、
福也
福也
颯一郎
悲しかった
違うよ。貴方の為に俺いっぱい頑張ったんだよ
慣れない事して貴方に褒めて欲しくて
大好きなんだよ。貴方の事が
それらを伝えようと口を動かしたが言葉にならなかった
だって
福也さんに殴られちゃったから
颯一郎
福也
福也
福也
福也
やだよ
知りたくなかったよ
福也さん、俺の事物としか見てなかったよ
嫌だ
俺だけだった
好きなの俺だけだったよ
いたい
やめて
いやだ
颯一郎
福也
今まで俺が嫌がることしなかったのに
しても直ぐに辞めてくれたのになぁ
殴るの辞めてくれなかったよ
その日を境に福也さんは良く俺に暴力を振るうようになった
今もそう
配達のお兄さん巻き込んでごめんね
気づいてくれたかな
ガンッ
颯一郎
福也
福也
ゴォッ!!
おねがい
だれでもいいから
だれか
おれを