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あー、あー、
大丈夫かな聞こえるかな
ボイスメッセージなんて初めてだから
出来てるか不安だけど、
まっ、いいか
懐かしい声だ。
機械越しでも
あたかも目の前で彼女が
話しているかのような感じ。
嬉しくてたまらない。
こんにちは?こんばんは?
それともおはよう?
とにかくきっと君は久しぶりだろうね
やっぱり死ぬ前は誰かに
メッセージを残すのが
物語の中でも主流だよね
ということで君に
ボイスメッセージを残します
ところでなんでボイスにしたか分かる?
それはね
人間って人の何を一番最初に忘れるかというと
"声"なんだよ
私は君に私の存在を忘れて欲しくなくて
ボイスメッセージを選びました
喜びたまえよ
なーんてね
録音する前にどれだけの
準備をしたことか
だから最後までちゃんと聞いてください
まずは先に謝らなければいけないことが
あります
それは本当は未完成の物語を
完成させる気がなかったことです
ただの私のわがままに付き合ってくれて
ありがとう
でもまぁ結果的に
完成できたんだけどね
これも君のおかげだね
ありがとう
私あの小説のヒット具合を
見届けることは出来ないと思うから
君が見届けるんだよ
君と一緒に完成させたからきっと
大ヒット間違いなしだね
なんてそうだったら嬉しいな
それとこれは伝えなきゃ
私が君を夜に呼び出したあの日
告白したの覚えてる?
まぁ覚えてくれてなきゃ困るんだけどね
私のことは忘れて欲しくないけど
ずっと私のことで引きずらないでね
君はこれから最高の青春が
待っているんだから
そんな大事な青春を私のせいで
奪うことになるとか
絶対許せないし許さないから
君にはちゃんと恋して
恋愛して、素敵な家族を作るんだよ
気づけば日が傾く時間になっていた。
彼女の小説を彼女のことを思い出しながら
じっくりと読む。
幸せなじかんだけど
その分苦しくもなる。
彼女が世を去ってから
定期的にボイスメッセージを聞いている。
今日もまた1部を聞きながら家に帰る。
そうだ、どうしても伝えたいことがあるの
君さ小説家になりなよ
初めて君の物語を読んだ時
サイトに投稿しよって誘ったのに
断ったでしょ
私は本気で良かったと思ってる
君は向いてると思うよ
私なんかよりもずっと
だからさ
なりなよ小説家に
私の出版会社さんの人に連絡してあるから
今後もしかしたら
物語を提供してくれる人がいるって
言ったからね
だから気が向いたら書いてみてよ
私、来世で絶対読むから
あ、それから
交換ノート、渡してなかったね
きっとお母さんから貰ってるかな?
それ、私との思い出が詰まってるから
ちゃんと記念に残しておいてよ
そのために交換ノート始めたんだ
短い間だったけど
結構ノート埋まったね
君がサボりじゃなくて助かったよ
あーあ
話したいことたくさんあったはずなのに
出てこなくなっちゃった
何話そうかたくさん考えたはずなのに
でもね伝えたいことは伝えられたから
あと最後にこれだけは伝えとこ
君と出会えて良かったよ
ボイスメッセージが終わると同時に
家に着いた。
あまり気に止めていなかった
小説家の件。
もう二度と書きたくないと思っていた。
でも今は何となく
書いてみようと思った。
久しぶりにサイトを開く。
書きたい内容は既に決まっている。
そうだな、書き出しは
学年が1つ上がってから数週間が
経ってからの事だった。
授業後、荷物をまとめて
帰宅しようとしていた時、
先生から突然呼び出された。
一度書き出すと手は止まらない。
まるで昨日の事のように覚えている。
彼女との出会い。
唯人
あれから5年の月日が流れた。
僕は彼女との出会いの物語を
出版会社の人に連絡し提出した。
期待なんてしていなかったけど
予想は大ハズレ。
世間が初めて僕を認めてくれた。
そんな彼女との出会いの物語を
何度も読んでいる。
今日もまた読もうと
たくさんある本棚から一冊
取り出す。
全てを思い出すのに時間は要らない。
表紙を捲り
また1人彼女との思い出に浸る。