“写真”
それは今や
生きていくうえで、欠かせないものになっている
昔の人は“魂”をとられる
そんなふうに 怯えていたらしいが
リエ
出産を祝い
成長を祝し
門出を祝う
そして
人の最期を見届ける
人とは切っても 切れないものだから
祖父が引退を決めた時
リエ
リエ
自分が跡を継ぐと決めた
リエの父
リエの父
リエの母
リエの母
両親は反対したけれど
リエの祖父
リエの祖父
リエの祖父
祖父はアッサリと 認めてくれた
リエの父
リエの祖父
リエの父
リエの祖父
リエの祖父
リエの祖父
―1ヶ月後―
リエ
リエ
リエ
リエ
リエ
立地のせいなのか
うちの写真館には
飛び入りのお客様が 来ることがある
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
リエ
リエ
リエ
上島チカ子
リエ
リエ
上島チカ子
リエ
リエ
リエ
その時
祖父の言葉を思い出した
“あるがままを受け止める”
リエ
リエ
リエ
上島チカ子
上島チカ子
リエ
リエ
リエ
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
リエ
上島チカ子
上島チカ子
そう言うと上島様は 「うふふ」と微笑んだ
リエ
リエ
上島チカ子
上島チカ子
リエ
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
上島様は懐かしむように 目を細めた
リエ
ファインダー越しに 上島様を見つめると
その顔が僅かに曇った
上島チカ子
リエ
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
リエ
上島チカ子
リエ
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
「子どもさえ居れば」
その言葉の呪いは
どれほど彼女を 悩ませたのだろう?
リエ
リエ
上島チカ子
上島チカ子
上島チカ子
上島様は「うふふ」と 照れ笑いを浮かべた
リエ
その美しい微笑みにむけて シャッターを押す
─カシャッ─
上島チカ子
上島チカ子
リエ
リエ
リエ
リエ
リエ
上島チカ子
上島様は「うふふ」と 上品に微笑んだ
リエ
リエ
―数日後―
チカ子の夫
チカ子の夫
リエ
チカ子の夫
チカ子の夫
リエ
リエ
数日前に撮った写真を カウンターに並べる
リエ
チカ子の夫
チカ子の夫
上島様は声を詰まらせ
何度も首を縦に振った
チカ子の夫
チカ子の夫
リエ
リエ
チカ子の夫
リエ
リエ
チカ子の夫
リエ
チカ子の夫
チカ子の夫
この写真館は 病院のすぐ近くにある
…とはいえ、入院中 撮影に来る人は僅かだ
チカ子の夫
チカ子の夫
チカ子の夫
リエ
カウンターの上には 上島チカ子様の写真
その中で彼女は 上品に微笑んでいる
白く透きとおる肌に
向こう側の景色を 浮かべて
#TELLER文芸部
コメント
8件
日常の全てが特別な時間、とても良い言葉ですね!写真家は様々な人の生き方、生まれてから亡くなるまでをカメラを通して覗いている、とてもロマンチックな考え方です✨
善意のような言葉の「呪い(のろい)」と主人との「式日」の思い出、対比されるように主人公は写真を撮ることで「日常」を切り取る役として出てくるのが印象的でした。 式のあるハレの日も日常も変わらずありのままの被写体を撮る、という写真館の職務が、彼岸と此岸の間に立つ主人公を意識させて読ませてるように感じました。