一覧ページ

LINE1162

第1話 - あ

2023年09月24日

#恋愛

結城　真矢

ミヤコ

あんたのＳＮＳに『彼が施設でお世話になった人達があいさつに来ました』

ミヤコ

とか書いてあったんだけど、

ミヤコ

施設ってどういうこと？まさか…

ハルミ

実は彼、児童養護施設出身なんだよね

ハルミ

幼い頃両親が事故で亡くなって、

ハルミ

親戚中に反対されていた結婚だったから、親族の誰も彼を引き取りたがらなくて、

ハルミ

施設に入れられて、そこで育ってきたの

ミヤコ

えぇええええ！！あんたの自慢の婚約者様が、まさかの施設出身！？

ミヤコ

悪いこと言わないから、やめといた方がいいわ

ハルミ

え？どうしてよ

ハルミ

施設育ちの何が悪いの？

ミヤコ

何が悪いのって、悪いとこだらけよ！

ミヤコ

あんたのことだからどうせ、

ミヤコ

『悲惨な育ちの影がある彼素敵！私が支えてあげたい！』

ミヤコ

的なノリで結婚決めたんでしょうけど、絶対苦労するわ！

ミヤコ

もしくは、面倒な姑がいないっていう打算？

ハルミ

ちょっと、勝手に決めつけないでよ。そんなことないわ！

ハルミ

施設出身だっていうのは付き合ってから知ったんだし

ハルミ

それに、絶対苦労するってどうして？

ミヤコ

だって、施設育ちってどうせ常識知らずで品がないじゃない

ハルミ

彼はそんなことないわよ

ハルミ

そんなこと言ってくるミヤコの方こそ非常識だし、品がないと思うわ

ミヤコ

私は友達のためを思って言ってあげてるだけ

ミヤコ

それに、施設育ちなんて愛情も知らないでしょ

ミヤコ

絶対どこか歪んでるって！

ミヤコ

ハルミ、『愛情いっぱいの家庭を築きたい』って言ってたじゃん

ミヤコ

それなら、尚更彼との結婚はやめた方がいいわよ

ミヤコ

親の愛情を知らないんだから、愛情いっぱいの家庭なんか築けないって！

ハルミ

彼に会ったこともないくせに勝手なこと言わないでくれる？

ハルミ

彼は亡くなったご両親の愛情も覚えているし、

ハルミ

育ててくれた施設の方の愛情も知っていると言ってるわ

ミヤコ

とにかく、普通の育ちじゃないんだから絶対に苦労するわ

ミヤコ

やめといた方がいいわよ

ミヤコ

いい？これは忠告だからね

ハルミ

別にあなたの忠告は要らないわよ

ハルミ

私、ミヤコに何と言われようと彼と幸せになるから

ミヤコ

は～、施設育ちの貧乏人と結婚するとか、庶民って本当意味わかんない

ハルミ

別に彼は貧乏人じゃないよ

ミヤコ

またまたぁ。施設育ちの男が稼げるわけないでしょ

ミヤコ

私なら、当然それなりの男じゃなきゃ考えられないな

ミヤコ

なんてったって私のお婿さんは、パパの会社を継ぐんだから

ミヤコ

それなのに貧乏人の金目当て男が寄ってきて困るんだから。身の程を知れっての！

ハルミ

はは、流石だね

ミヤコ

ハルミもさぁ、私レベルになれとは言わないけど、

ミヤコ

もうちょっと高望みした方がいいよ。施設育ちとかやめときなって

ハルミ

私が誰と結婚しようが自由でしょ。私にとっては本当に彼以上の相手はいないから

ミヤコ

あっそ！せっかく私が友達のためを思って忠告してやったのに！

ミヤコ

もういいわよ知らない！後で泣きを見ても遅いんだからね！

ミヤコ

あんたとなんか絶縁よ！

ハルミ

ちょっと待ってよ。施設育ちの人と結婚するだけで絶縁？

ミヤコ

当たり前でしょ！金持ちの社長令嬢はね、人付き合いを選ばなくちゃならないの！

ミヤコ

施設育ちみたいな幸薄い貧乏人の妻なんかと付き合い続けてたら、

ミヤコ

私にまで辛気臭さと貧乏がうつっちゃうじゃない！

ミヤコ

結婚式も出席で返信したけど、やっぱり欠席で！

ミヤコ

誰が貧乏人との式なんて行くかｗ

ハルミ

そう…私こそ、会ったこともない彼のことを悪く言うような友達は要らないわ

ハルミ

式にも出てくれなくて結構よ

ミヤコ

じゃーね、わざわざ苦労する道を選んだお馬鹿さんｗ

ミヤコ

私とあんたじゃ、この先住む世界が違いすぎるわｗ

～結婚式後～

ミヤコ

■不在着信■

ミヤコ

ちょっと！なんか、ＳＮＳが大騒ぎなんだけど！

ミヤコ

超有名歌い手のmofu様が結婚したんだって！！トレンド入りもしてるんだから！

ハルミ

あぁ、確かミヤコはmofu様の大ファンだったもんね

ハルミ

で、それを絶縁したはずの私にわざわざ連絡してきた理由は？

ミヤコ

mofu様SNSでこう呟いてたの！

ミヤコ

『今日、僕は愛する彼女と結婚式を挙げました』

ミヤコ

『両親が亡くなり施設で育ってきた僕が、彼女や施設の方々、友人、ファンの皆様など、

ミヤコ

様々な人達に支えられてここまで来れたことに、感謝しかありません』って！

ミヤコ

今日結婚式を挙げる施設育ちの男ってまさか…いやいや、そんなわけないよね？

ハルミ

そのまさかだよ

ハルミ

彼の正体は、mofu様なの

ミヤコ

へ？

ミヤコ

マジ…？どうして教えてくれなかったの？

ハルミ

mofuって顔出ししてるし、参列すれば特にあんたなら絶対気付くと思ったの

ハルミ

サプライズのつもりだったけど、あれだけ彼を悪く言われたら、

ハルミ

もうそんな気もなくすよね…

ハルミ

あぁ、結婚式はそれはもう盛り上がったわ

ハルミ

彼、参列者へのサービスで歌ったりもしたんだから

ミヤコ

嘘でしょ…生でmofu様の歌を聞けるそんなビッグチャンスを逃したなんて…

ミヤコ

やっぱり私、式に参加する！！

ハルミ

もう遅いわよ。とっくに終わっちゃったわ

ミヤコ

そんな！じゃあ今からもう一回やりなさいよ！！

ハルミ

出来るわけないでしょ

ミヤコ

お願い、お金ならいくらだって出すから！！

ハルミ

あのねぇ、そういう問題じゃないの

ミヤコ

この私がやれって言ってるのよ！やりなさいよ！

ハルミ

幸薄い貧乏人との式なんかに出たくないんじゃなかったの？

ミヤコ

だってまさか相手がmofu様だなんて知らなかったんだもの！

ハルミ

とにかく、もう一回式をあげろなんて無理

ミヤコ

じゃあせめて、mofu様に会わせてよ！

ミヤコ

私達親友でしょ！サービスで歌でも握手でもサインでも、ただでさせてよ！

ハルミ

親友？あんた、私と絶縁したんじゃなかったの？

ハルミ

住む世界が違うんでしょ

ミヤコ

絶縁は解消してあげるから。ね、一生のお願い！！

ハルミ

結構よ

ミヤコ

何よ！絶縁解消してあげるって言ってるのに！いいの！？

ミヤコ

社長令嬢の友人である私のおこぼれにありつけなくなるわよ！

ハルミ

別におこぼれにありつけた覚えはないけどね…

ハルミ

今必死におこぼれを貰おうとしてるのはミヤコの方じゃない

ハルミ

それに、ミヤコのことは彼にも伝えたからね

ミヤコ

えっ！私のこと紹介してくれたの！？

ハルミ

何勘違いしてるのかしら

ハルミ

『ミヤコは施設育ちに偏見があって、結婚式には出たくないからと言って欠席になった』

ハルミ

『それがきっかけでお互い絶縁した』って伝えたわよ

ミヤコ

何余計なこと言ってるのよ！！

ハルミ

私だって言いたくなかったわよ。彼が気に病むし

ハルミ

でも招待リストから一人減らさなきゃいけなかったし、仕方ないじゃない

ミヤコ

そんな…私mofu様になんて思われたか…

ミヤコ

ひっ！mofu様SNSでこんなこと呟いてる…

ミヤコ

『施設育ちに偏見を持つ人もいるでしょう。実際に僕もからかわれたことがあったし、

ミヤコ

今日の結婚式も、彼女の友人の一人が施設育ちに偏見を持つ人で、欠席になりました』

ミヤコ

『それがきっかけで彼女と友人は絶縁してしまい、申し訳ない気持ちです』

ミヤコ

『だけど、どんな育ちでも誰かを幸せにできるんだと僕は伝えたくて、

ミヤコ

こうして活動をしています。彼女、いえ、妻のことも絶対に幸せにします』

ミヤコ

って…これ、もしかしなくても私のことだよね…？

ハルミ

そうよ。SNSの人達、『その友人最低！！』って盛り上がってるわねー

ハルミ

みんな『施設育ちだって知って、益々mofuさんのファンになりました！』

ハルミ

『苦労した分幸せになってください！』って口々に言ってるわ

ミヤコ

な、なんか怖いんだけど…

ハルミ

これからは言動に気を付けることね

～翌日～

ミヤコ

ヤバいヤバいヤバいどうしよう！！SNSが炎上しちゃった！！

ミヤコ

なんでこんなにすぐ突き止められるのよ！！

ハルミ

ファンの力ってすごいわねー

ハルミ

あんたが鍵もかけずに『友達の婚約者が施設育ちだったんだけどヤバいｗｗｗ』

ハルミ

『育ちの悪い貧乏人の式とか誰が行くかって言って絶縁してやったｗｗｗ』

ハルミ

なんて呟いてるからよ

ミヤコ

mofu様のファンに次々攻撃されてる！

ミヤコ

慌てて鍵にしたけどもう遅くて、色々過去の呟きも掘られちゃった…

ハルミ

あんた、裏垢で他にも色々やらかしてるのねー

ハルミ

『工場勤務とかいう低学歴の底辺負け組ｗｗｗ』とか、

ハルミ

『片親育ちとか貧乏がうつるから付き合わないww』とか、

ハルミ

『毎回高級レストランにエスコートして躊躇いなく全奢りできない男ってなんなの？』とか…

ハルミ

こりゃ炎上が止まないわけだわ

ミヤコ

いちいち読み上げないでよ！

ミヤコ

しかもこれ裏垢なのに、あげてた写真から表垢と関連付けられて

ミヤコ

身元まで割れちゃった！！

ハルミ

あらら、ファンって恐ろしいわね…

ミヤコ

このことパパの耳にも入って、私大目玉食らったの！！

ミヤコ

なんでも、パパの会社今度、mofu様とのコラボCM出す予定なんだって！

ミヤコ

mofu様とのコラボなら絶対に売れるからって…

ミヤコ

それがダメになって数億の大損害が出たらどうするつもりなんだって…

ミヤコ

しかも、社長令嬢がこんなに炎上して悪い意味で有名になって、

ミヤコ

企業のイメージダウンになったじゃないか、どうしてくれる、

ミヤコ

お前は俺の娘にはふさわしくない、もう大人なんだから家から出て行け、

ミヤコ

勘当するし援助もしない、って…

ハルミ

自業自得ね。偏見を振りかざして人を傷つけてるから、罰が当たったのよ

ミヤコ

何よ！SNSなんてみんなこれくらいのこと呟いてるじゃない！

ハルミ

ミヤコはＳＮＳ上だけじゃなかったでしょ

ハルミ

だから、ネットでもリアルでも敵だらけになったのよ

ミヤコ

そんなことない！私に寄ってくる男は沢山いるんだから！

ハルミ

『貧乏人の金目当て男』として振って来た男が？

ハルミ

そのお金が、今のミヤコにはなくなったよね？

ミヤコ

それは…

ハルミ

それに、女友達は私以外いなかったよね？ま、その私とも絶縁したけど

ハルミ

じゃあね。絶縁したんだから、ブロックしなきゃ

ミヤコ

待って！ねぇ助けてよ！また友達になってあげるから！

ハルミ

なってくれなくて結構。ミヤコの言う通り、私達は住む世界が違うのよ

～後日談～

ハルミ

その後、本垢、裏垢共にSNSのアカウントを削除したものの、

ハルミ

その時にはすべてが遅く、すっかり身元が割れてしまったミヤコは、

ハルミ

人目を恐れて引きこもってしまったと言います

ハルミ

しかし、引きこもっている場合ではありません

ハルミ

ミヤコの父親は容赦なくミヤコを家から叩き出し、

ハルミ

父親名義のカードも取り上げてしまいました

ハルミ

今まで父親のカードで好き放題してきたミヤコは大ピンチ

ハルミ

慌ててバイトを探しましたが、悪い意味で有名になってしまった

ハルミ

ミヤコを雇おうとするところはどこにもなく…

ハルミ

どうにか、人手不足のバイト先で雇ってもらえましたが、

ハルミ

そこはミヤコがかつてバカにしていた工場

ハルミ

他の従業員たちに冷たい目で見られ、ミスを連発して叱り飛ばされながらも、

ハルミ

生活のために日々必死で働いているのだそうです

ハルミ

私達は、幸せな新婚生活を送っています

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

結城　真矢

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE1162

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説
一覧

関連するタグ

LINE1162

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説一覧

関連するタグ

#恋愛の新着小説
一覧