葛葉
はぁ…
元ゲーマーズ御用達のとある企画に参加するため、その日葛葉はえにから株式会社の控室にいた。
いつもは叶が先にいて準備をしているのだが、
極めて珍しく少し遅れると連絡が入った。
今日はそのため大人数用の部屋に来ている
のだが、
どうやら失敗だったようだ。
叶さんさぁ、最近炎上したじゃん?
野良のFPSプレイヤーに暴言言ったって噂だけど
えぇ、ほんとです〜?
今まで気持ち悪いほど振る舞い完璧だったから、やっと本性表したかって思うわ
今日まだ来てないのそのせいだったりして
うわ〜w
ちょっと!あそこに葛葉さんいるんですよ?
コソコソと噂に躍らされている大人たちに、思わず舌打ちしたくなった。
叶の何を知ってそんなことが言えるのだろう
聞くに堪えない。
葛葉
あの…お話し中サーセン
数人の男女がギョッとした顔で振り向く
葛葉
向こうで、スタジオのスタッフさん呼んでましたよ
葛葉
いいんすか
気まずさもあったのかもしれない
咄嗟に思いついた嘘を口にすると、叶の陰口で談笑していたやつらはあっさりとその場を後にした。
葛葉
はぁ…
我慢できずに行動に移してしまった、
いけない。
こういった時には、黙ってその場を去るのがマナーというものなのだろうか。
葛葉
(…俺も叶みたいにならないといけないのにな、)
もう一度大きく溜め息をついていると、
見知った明るい声が響いた。
叶
こんにちは、
叶
って葛葉〜!
叶
ここにいたんだ、探したじゃん
葛葉
お前なぁ…
叶
ごめんごめんw
叶
寝落ちしちゃった
ゆるして、と言いながら流れるようにいちごラテを差しだし餌付してくる叶。
その無防備ないつもの表情に、葛葉は思わずにやけた。
葛葉
いいだろう
葛葉
今日飯食って帰ろうぜ
叶
おっけー