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紅優
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コメント
8件
黒核とdnには謎の関係があるのかな…… 能力も覚醒はしたけどまだ完全に使いこなせてはいないな、ここからどうなるのかめっちゃ楽しみです! これからも頑張ってください!!! そして、♡20万おめでとうございます! いつも応援しております!!!
地下第五封印区画。
境界局最深部。
幾重もの封印術式が刻まれた巨大な扉の前に、十二席が集結していた。
赤い警告灯だけが暗い通路を照らしている。
いつの間にかノック音は鼓動のような響きに変わっていた。
「警戒レベル4」
機械音声が無機質に響く。
局員たちは避難を終え、この場所には十二席と最低限の技術班しか残っていない。
封印庫の奥から聞こえるのは、一定の間隔で響く鼓動だけだった。
ドクン。
ドクン。
愛水 怜《無刻》
灰渕 博《静界》
赫鞘 樹《赫災》
怜は静かに頷いた。
愛水 怜《無刻》
場の空気がさらに重くなる。
その時だった。
遠くから走る足音。
全員が一斉に振り向く。
白狐 颯
息を切らした颯が地下へ駆け込んできた。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
蛙神 蓮《断鐘》
白狐 颯
嘘ではなかった。
地下へ近付くほど胸の鼓動が早くなる。
何かに呼ばれている。
そんな感覚が消えなかった。
ドクン。
ドクン。
封印庫の鼓動。
颯の鼓動。
完全に重なる。
愛水 怜《無刻》
紫苑 陸《虚路》
その報告に誰もが言葉を失う。
風雅だけが静かに颯を見つめていた。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
颯はゆっくり前へ進む。
封印庫まで残り五メートル。
その瞬間。
ジジッ……
黒いノイズが足元から広がった。
床に黒い線が走る。
局員達が息を呑む。
ノイズは術式へ触れる。
だが。
術式を壊さない。
まるで避けるように流れていく。
白狐 颯
最近、この現象は何度も起きていた。
力を使うほど。
境界が揺らぐ。
その証拠のように。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
颯は深く息を吸う。
第一接続────《透過》
身体の感覚が変わる。
世界との境界が少しだけ薄くなる。
景色の輪郭が揺らいだ。
その瞬間。
ゴォンッ!!
封印庫全体が震える。
術式が激しく明滅した。
鎖が軋む。
愛水 怜《無刻》
愛水 怜《無刻》
赫祭が炎を纏う。
断鐘が拳を構える。
静界が術式維持に集中する。
一触即発。
だが。
黒い粒子は扉から漏れ出ると。
一直線に颯へ近付いた。
局員たちが叫ぶ。
「危険!」
誰もが襲われると思った。
しかし。
黒い粒子は颯の目の前で止まる。
そして。
ゆっくりと左右へ割れた。
道を譲るように。
静寂。
誰も動けない。
赤橙 唯《蒼祈》
紫苑 陸《虚路》
龍樹 琥珀《葬列》
颯自身も理解できなかった。
黒い粒子の向こう。
封印庫の奥。
暗闇の中で。
何かがこちらを見ている。
その瞬間。
頭の中へ声が響いた。
───境界。
白狐 颯
───ようやく、来た。
身体が硬直する。
この声は。
残滓のものとも、人間のものとも違う。
深く。
静かで。
どこか懐かしい。
声が頭の中で反響する。
白狐 颯
返事はない。
しかし、黒い粒子は静かに揺れ続ける。
まるで意志を持っているかのように。
赫鞘 樹《赫災》
その声で我に返る。
颯の身体は、いつの間にか封印庫の扉の目の前まで歩いていた。
白狐 颯
自分で歩いた記憶が無い。
碧泉 海翔《黒雨》
海翔が颯の方を掴もうと手を伸ばす。
しかし────
その手は、颯の肩をすり抜けた。
碧泉 海翔《黒雨》
颯自身も驚き、すぐに《透過》を解除する。
身体が元に戻る。
白狐 颯
蛙神 蓮《断鐘》
緑龍 風雅《白夜》
風雅は落ち着いた声で答えた。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
その時。
ドクンッ!!
これまでで一番大きな鼓動が地下に響いた。
同時に、扉一面の術式が赤黒く染まる。
愛水 怜《無刻》
灰渕 博《静界》
封印鎖が一本、音を立てて砕け散った。
バキィンッ!!
黒い粒子が一気に吹き出す。
赫災が前へ出ようとした、その瞬間。
粒子は再び颯の前で止まった。
ゆっくりと渦を巻き。
一つの形を作っていく。
人。
いや。
人だったもの。
黒い霧で出来た輪郭だけの存在。
顔は見えない。
それでも確かに、颯を見つめていた。
白狐 颯
────違う。
また声が響く。
───私は、お前の敵では無い。
白狐 颯
───今は、まだ。
次の瞬間、その影は霧となって消えた。
黒い粒子も封印庫の中へ吸い込まれていく。
桃園 天音《灯火》
愛水 怜《無刻》
誰も能力を使っていない。
それなのに、黒核は静まった。
その場にいた全員の視線が、自然と颯へ集まる。
龍樹 琥珀《葬列》
颯は顔を上げる。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
白狐 颯
少し迷う。
言うべきか。
隠すべきか。
白狐 颯
地下に沈黙が流れる。
誰も口を開かない。
風雅だけが静かに目を閉じる。
緑龍 風雅《白夜》
その一言だった。
何かを知っている。
そう思わせるには十分だった。
そして風雅は全員へ向き直る。
緑龍 風雅《白夜》
緑龍 風雅《白夜》
十二席は無言で頷く。
颯だけが最後にもう一度、封印庫の扉を見つめた。
重厚な扉は静まり返っている。
だが、その奥からは。
微かに。
ドクン。
という鼓動だけが、まだ聞こえている気がした。
その鼓動は、颯自身の鼓動と不思議な程よく似ていた。
翌日。
境界局本部。
昨夜の出来事は、全て極秘扱いとなった。
地下第五封印区画への立ち入りは禁止。
任務報告書にも、
「封印術式の一時的不安定化」
とだけ記録されていた。
当然、颯にも詳しい説明はない。
白狐 颯
訓練場のベンチに腰掛け、木刀を見つめる。
頭から離れない。
黒い人影。
『敵じゃない。』
あの言葉は何だったのか。
そして。
『境界』
なぜ、その名を知っていたのか。
「考え込んでんな〜」
振り向く。
そこには琥珀が立っていた。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
琥珀は木刀を受け取ると、軽く振ってみせる。
シュッ────
無駄のない一太刀。
ただ振っただけなのに、空気が切り裂かれる音がした。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
龍樹 琥珀《葬列》
木刀を返す。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
少し俯く。
そんな颯を見て、琥珀は小さく笑った。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
龍樹 琥珀《葬列》
その言葉は、不思議と胸に残った。
午後。
訓練開始。
今日は風雅との模擬戦だった。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
地面を蹴る。
第一剣技《断歩》。
一瞬で間合いを詰める。
しかし。
カンッ!
風雅は片手で受け流した。
白狐 颯
横薙ぎ。
突き。
連撃。
だが。
一度も届かない。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
風雅は木刀をゆっくり下ろした。
緑龍 風雅《白夜》
その言葉を聞いた瞬間。
颯は、自分が無意識に《透過》へ頼ろうとしていたことに気付く。
あの事件、《透過》が覚醒してから。
少しずつ。
力に頼ることが増えていた。
白狐 颯
白狐 颯
白狐 颯
白狐 颯
その時。
ピーッ!
再び警報が鳴り響く。
《市街地南部》
《異骸級残滓反応確認》
《十二席、出動要請》
空気が一変する。
赫鞘 樹《赫災》
蛙神 蓮《断鐘》
十二席が一斉に動き出す。
颯も後を追おうとした。
しかし。
風雅がその肩へ手を置く。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
風雅の表情が少しだけ厳しくなる。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
候補生としてではなく。
十二席と同じ現場へ向かうことになった。
二人も、他の十二席を追って走っていった。
だが、この任務が。
颯の運命を大きく動かすことになるとは。
まだ誰も知らない。
警報は鳴り続いている。
格納庫では、局員たちが慌ただしく動き回っている。
輸送ヘリのローターが回り始める。
十二席は次々と機内へ乗り込んでいく。
颯も装備を整え、ヘリへ向かおうとした。
しかし。
風雅が静かにその前へ立つ。
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
緑龍 風雅《白夜》
白狐 颯
風雅は小さく頷いた。
緑龍 風雅《白夜》
颯はその言葉を胸に刻み、ヘリへ乗り込んだ。
数十分後。
市街地南部。
避難はほぼ完了していた。
ビル街の中央。
そこには、一体の残滓が立っていた。
全身を黒い霧が包み、四本の腕を持つ異形。
周囲のアスファルトは黒く侵食されている。
白狐 颯
これまで見てきた残滓とは、存在感そのものが違う。
赫鞘 樹《赫災》
第一スキル《火脈》。
爆発的な炎が放たれ、炎が残滓を包む。
しかし。
残滓は炎を切り裂くように飛び出し、樹へ迫る。
蛙神 蓮《断鐘》
第一スキル《震撃》。
重い拳が残滓を吹き飛ばす。
そこへ。
灰渕 博《静界》
残滓の動きが一瞬止まる。
更に。
黒巌 凛《灰霞》
残滓の視界を攪乱する。
十二席は一切の無駄なく連携し、異骸級残滓を追い詰めていく。
白狐 颯
ただ強いだけじゃない。
全員がお互いを信頼し、能力を繋いで戦っている。
その姿に見入った、その時だった。
残滓の身体から黒い粒子が溢れ出す。
ジジジッ……
その粒子は戦っている十二席ではなく───
颯に向かって一直線に飛んできた。
白狐 颯
反射的に身構える。
しかし。
粒子は目前で止まり、静かに漂う。
そして。
掠れた声が聞こえた。
「…………境界」
白狐 颯
「まだ……思い出せないか」
その言葉と同時に、颯の頭へ激しい痛みが走る。
白狐 颯
膝をつく。
視界が揺れる。
一瞬だけ、知らない景色が写った。
崩れた街。
黒い空。
誰かの背中。
そして。
無数の黒い影。
「境界……」
幻は一瞬で消えた。
桃園 天音《灯火》
天音が駆け寄る。
颯は息を整えながら立ち上がった。
白狐 颯
その間にも戦闘は続いていた。
最後は。
風雅が静かに前へ出る。
緑龍 風雅《白夜》
緑龍 風雅《白夜》
第一スキル《白圧》。
周りが全て押しつぶされるような圧力。
重力。
衝撃。
その二つが完全に風雅の制御下にある。
残滓は一歩も動けない。
緑龍 風雅《白夜》
静かな一言。
次の瞬間、残滓は音もなく崩れ去った。
戦闘終了。
帰還する輸送ヘリ。
誰も大きな怪我はしていない。
だが。
颯は窓の外を見つめ続けていた。
「境界」
その呼び方。
黒核。
黒い人影。
残滓の言葉。
全てが一本の線で繋がりそうで、まだ繋がらない。
その時。
隣へ琥珀が座る。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
琥珀は少しだけ笑った。
龍樹 琥珀《葬列》
白狐 颯
龍樹 琥珀《葬列》
短い一言だった。
しかし、その一言には確かな温かさがあった。
候補として。
少しだけ。
認められ始めている。
そんな気がした。
地下第五封印区画。
誰もいない封印庫。
静寂の中で、黒核は再び鼓動を打つ。
ドクン。
ドクン。
暗闇の奥から、誰にも届かない声が響く。
「時は近い。」
「境界は、必ずここへ来る。」
黒い粒子がゆっくりと舞い上がる。
その鼓動は。
新たな物語の始まりを告げる鐘のように、静かに鳴り続いていた。