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太宰

私と踊ってくれませんか?お姫様

中也

…………

何なんだ 此の笑えねぇ茶番

元はと云えば…そう、あんな最悪な事態になったのは、俺の不注意が原因であった 。

中也

くっそ…待ちやがれッッ!!

大した奴じゃねぇのに、逃げ足だけは早い 。 俺は、こういうのが一番癪に障る 。

中也

あァ…?彼奴何処行きやがった…

芥川

僕は此方を……

芥川

…!中原幹部!!

中也

は、?

うぅっ……なんで……

中也

( …?此処は…? )

ひっぐ…ぐすっ…

中也

( 泣き声…? )

なんで死んじゃったんだよ… " 白雪姫 " …(泣)

中也

はぁぁ!?!?

!?し、白雪姫!?

中也

!?は、お、おま、人虎!?

人虎…?って、いやいや、し、白雪姫、なんで生き返って……

中也

え、は、はぁ、?

瞼を開けた瞬間、視界に入ったのは、 夜のビル群ではなく、何とも可愛らしいお花畑 。

そして、変な格好をした人虎 。 人虎と同じ格好をした小人六人 。

極めつけは… 何処かで見た事があるドレスを着た俺 。

中也

え、あ、否、はぁ?

あの林檎が毒入りじゃ無かったとか…?でも、白雪姫、息してなかったし……

人虎は白雪姫?が生き返った?事に戸惑いを見せている…らしい 。 混乱しているのはこっちだというのに 。

…でも確かに、俺が今乗っかっているのは棺 。 益々、訳が判らない 。

中也

その……此処は何処なんだ?お前等は誰なんだ?

白雪姫…まさか記憶を無くしているのですか!?

中也

…………

うっせぇわ。頼むからそんな演技じみた事をしないでくれ。 余計混乱するから 。

…でも、何はともあれ…生き返ったなら良かったです!また楽しく過ごせますね!

違う。違うんだ人虎。 先ず、此の世界の説明をしてくれ。なぁ。

中也

あー……えっと………

訳が判らなすぎる此の状況に、 俺が取った行動は……

中也

…驚かせて済まねぇ!失礼するな!

へ?

現実逃避であった____

中也

はぁっ…はぁっ"……

中也

はぁ……はぁっ…

中也

( くっそ、歩きづれぇ!!裾が長ぇんだよこのドレス!! )

裾を引きずって格好悪く歩く様は、 可憐な白雪姫(?)とは程遠いであろう 。

通行人の目が気になるが、今はそんな事は如何でもいい 。

歩きづらい

中也

どっかに服屋とかねぇか…?

中也

…否、金無いから無理だな

中也

はーぁ……何なんだよ此処は……

辺りを見渡す 。 矢っ張り此処は、如何見ても元の世界ではない 。

中也

( 原因は…やっぱ彼の異能力だよな )

中也

( 別世界に送る異能力とかか?んな大層な…… )

中也

……もう無理。腹減った…

腹は減るし 情報量は多いし 歩きづらいし

十本指に数えられる位には、 最悪な気分であった 。

何かお困りかな?お嬢さん>

中也

あァ…?

隅で座り込んでいる俺に、頭上から声がかかる 。

………なんだか何処かで訊いた事がある気がするのは、きっと気の所為気の所為……

太宰

君、お召し物が酷く汚れているではないか

太宰

何かあったのかい?

中也

…………

気の所為ではなかった 。 否、気の所為であって欲しかった 。

切実に

中也

( 否まあ…そうだよな。人虎が居たからなんとなーくそんな気はしてたよ )

中也

( 嗚呼、来るだろうなとは思ってた。知ってた )

中也

( だけどな?こんな処で予想が当たらなくてもよかったんだぞ?な? )

太宰

何、戸惑った顔してんだよ。 しかも手前、俺より上等な服着てんじゃねぇか此のクソ鯖 。

中也

あーいや…大丈夫です…慣れたんで……

慣れてねぇよ。 なんだよ慣れたって 。

太宰

でも君…そんなに綺麗な顔をしているのに、ドレスがそんな物じゃあ、勿体ないよ?

中也

ん?

太宰

実は私、お嫁さんを探していてね

太宰

どの子もピンとこなかったんだけど……君は朝焼けの様に美しい

ん?

太宰

君のような可憐で可愛らしい女性を探していたんだ…

ん??

思考停止していると、太宰は膝を曲げ、恭しく手をそっと握る 。

太宰

どうか私と結婚して、五十年後に共に心中して頂けないだろうか…!!

中也

…………

太宰

……

中也

……………

太宰

………

中也

………………

中也

( そうか。此奴はきっと王子様なんだな )

中也

( こんな俺の事をお嫁にしようとしてくれて…… )

中也

( ここで承諾すれば、腹減る事もねぇし、きっと服もこんな綺麗なの着られて…… )

…否

中也

するかボケええええええええええええええええええええぇぇ!!!!!!!

太宰

ごふっ!?!?

そう吐き捨て、 顔面に思い切り拳を突き刺した____

中也

…………

此処何処だよ

中也

しかも、また服ボロボロじゃねぇかよ……

中也

まあ、裾が長くないだけマシか……

最早、スカートを履いている事に違和感すら感じない 。 というか、こんな状況で歩きづらい服から解放された事に安堵するなんて、お花畑脳味噌もいい処だ 。 此の状況で働いてくれた俺の適応能力を褒めてやりたい 。本当に 。

ドンドンドン!!

中也

うおっ…!?

中也

( もうちょい静かにドアを叩けよ… )

中也

は、はーい…?

ガチャッ

継母

ちょっと " シンデレラ " !?掃除は終わったの!?

中也

は?

継母

朝食も作らないで…寝坊するんじゃないわよ!!

中也

( 否、誰だよ此のクソ___)

中也

( ………女性に云うのは不味いな )

中也

あ、はい…すみませーん…今やりますー…

継母

まったく……

俺の事をシンデレラ?と呼ぶ此奴は、 俺とは正反対の綺麗な服に身を包んでいた 。

此奴の口調といい、文句といい、正直物凄く腹が立つ奴である 。 こっちは情報整理したいんだよこのクソ___……危ない、また口に出しそうになった 。

_________

地獄のような朝の終了後……

__________

中也

はぁぁ……疲れた………

屋根裏部屋に着くなり、 腹の底から溜まっていた息を吐く 。

朝食作りに洗濯、掃除……その他諸々の家事を全部させられてしまった 。 家事は嫌いではないので別に如何でもいいが、彼のクソ___もとい、継母と義姉の性格がまあウザい 。

何時もは気にしていなかったが、絵本の中のシンデレラは、何時もこんな思いをしていたのか 。 今更ながら、同情する 。

中也

却説…先ずは状況整理…だよな

中也

( 俺は任務で敵を捉えようとしていた。んで、異能力で可笑しな世界に飛ばされた )

中也

( 白雪姫、シンデレラ……ときてるなら、此の世界は、多分童話の世界だよな? )

中也

( そして、異能力を食らった奴は、多分主人公…姫側に転生する。物語もよく知られてる通りに進む )

中也

( 出られる方法は、今の処、見当もつかない )

中也

( 白雪姫の世界から急にシンデレラの世界に変わったのも気になるな…絶対にトリガーが有る筈 )

中也

( 白雪姫ンとこで最後にした事と云えば、太宰をぶん殴った事……太宰をぶん殴る事が世界線が変わる条件か? )

中也

あーくっそ、判んねぇ……

此の身に起きた事を洗いざらい思い出してみるが、核心に至るような事は思いつかなかった 。 でもまあ、此の世界が何なのか知れただけでも大進歩だ 。

もう一度太宰を殴り、世界線が変われば確定だろう 。 …否、そもそも、此の世界に太宰は居るのだろうか 。

中也

否……兎に角今は、物語通りに振舞っておくか…

そう、此処はシンデレラの世界 。 俺が知ってる通りに進むなら……

カボチャを一つと…それから、ネズミとトカゲを持って来てちょうだい♪

中也

はい……

物語の展開は、予想通りだった 。

否…それにしても、 それは善かったとしても……

中也

( なんっで魔法使いがエリス嬢なんだよ!?!? )

中也

( 否、別に善いけどな!?けど、魔法使いが幼女だとやりづらさが有るってのは判るだろ!? )

中也

( ……否、判らねぇか )

なんか、一人でツッコミしてるのも虚しいわ 。 もう考えるのを辞めよう 。うん、そうしよう 。

エリス

?どうしたの?

中也

あ、い、いえ!直ぐに持ってきます!

中也

これで宜しい…でしょうか…?

魔法使いに敬語って変か…? 否、仕方ない 。相手はエリス嬢なんだし 。 之は癖みたいなものだ 。

エリス

大丈夫よ。じゃあ、今からあなたに魔法をかけてあげる!

中也

はい…

中也

( ん?まて、俺、今からドレス着る事になるんだよな? )

中也

( あれ、もしかして俺___)

エリス

いくわよ〜!

エリス

ビビデバビデブー♪

エリス

わぁ!あなたにぴったりのドレスね♪

カボチャは立派な馬車に、ネズミは美しい白馬に、トカゲは従者に____

否、そんな事よりも

歩きづらい

中也

( 巫山戯んなァァァァァ!!!やっと…やっと!!歩きづらさから解放された世界線に行けたと思ったのに!!! )

中也

( もう舞踏会とか如何でもいい!!さっさと太宰をぶん殴って世界線を変えたい!!! )

中也

( 太宰が居るかは知らねぇけど!! )

此の世界から出るという本来の目的から外れているのは疾っくに判っている 。

否、でも、歩きづらさは仕方ねぇだろ 。 裾が長すぎて引っかかるんだよ 。 ガラスの靴という名のヒール履いてんだよ 。 世の女性は、こんな物を着てるのか??

中也

( はぁ…でも、普通にドレスはすげぇ綺麗なんだよな…… )

中也

( エリス嬢にこんな力が……此の人エリス嬢じゃねぇけど )

エリス

さあ、早くお城に向かって___

エリス

…あ!大事なことを言い忘れていたわ!

エリス

この魔法は、12時を回ると溶けちゃうの。だから、気をつけてね!

中也

はい、気をつけます…

エリス

じゃあ、いってらっしゃい!

中也

おぉ……

煌びやかな装飾が施された大広間 。 天井に吊るされた、見事なシャンデリア 。 舞踏会に相応しい、管弦楽(オーケストラ) 。

文字通り、「絵本でしか見れない世界」が目の前に広がっていた 。

中也

( すげぇ……王族にでもなった気分だ…… )

中也

( 確か、この後は、此の国の王子と踊るんだよな?相手は何処だ…? )

キョロキョロと辺りを見渡す 。

すると、明らかに「王子らしい」服を着た男性が一人居た 。

………なんだか何処かで見た事がある気がするのは、きっと気の所為気の所為……

太宰

あ…ごめんね。私、今は…

義姉

?何か用事でも…?

中也

………

デジャブを感じた 。

物凄く

中也

( はは…まあ、そうだよな……)

中也

( よくよく考えたら、白雪姫の世界でも彼奴王子だったし…… )

中也

( 知ってたよ。嗚呼、知ってた )

中也

( ………うん )

嗚呼…俺は今から、 此の包帯自殺野郎と踊らなきゃいけねぇのか……

危うく口に出しかけた言葉は、 頑張って飲み込んだ 。

中也

( さーて、どう誘おうか…… )

中也

( …否、原作では王子が誘うんだよな?なら、適当にアピールでもしとけば…… )

トントンっ…

中也

( …早速お出ましか )

ラスボスが現れたような、変な気合いを入れて、 後ろを振り返った 。

中也

…は、はい…?

太宰

失礼、お嬢様

此奴、一挙一動がムカつくな

中也

…!貴方は、王子様ではないですか。そんな人が、私に何用で…?

俺すげぇな。此のクソ鯖相手に、 良い演技力を発揮しやがった 。 誰に見せる訳もなく、 俺は心の中で大きくガッツポーズを取る 。

太宰

ああ、いや……君があまりにも美しくてね…

太宰

…よければ、君と踊りたいと思っているのだが……

中也

……わ、私が…そんな、王子様と…?

中也

私より綺麗な女性なんて、いくらでも居るのに……

これで引き下がってくれるとかねぇかな。 なんて、薄すぎる望みを抱く 。

太宰

いや、私は君と踊りたいんだ

ですよね

太宰

……私と踊ってくれませんか?お姫様

中也

………

中也

……はい

そっと差し出された彼奴の手を、 今すぐにでも逃げ出したい衝動を抑えて、握った 。

太宰

君は、舞踏会は初めてかい?

二人きりで舞踏会を抜け出す、 というお決まりの展開を経て、 俺と太宰は、城内の庭園で話していた 。

中也

はい…そうなんです

中也

……すみません、上手く踊れなくて

太宰

ふふ、いいんだよ。一生懸命努力する君も素敵だ

結論から云おう 。 俺は、悔しい事に、太宰以上には上手く踊れなかった 。

ほぼ、太宰にリードしてもらった 。 物凄く悔しいが 。

太宰

…でも、珍しいね。君みたいな人なら、一度は行った事があると思っていた

中也

…行きたいとは思っていたんですけど……

中也

……私には到底、行けなくて

原作通りのセリフを云いながら、 ふと、考える 。

俺は別に舞踏会に行きたいという特別な願望はないので、継母や義姉に止められてもいいが、それがシンデレラにとっては如何なのか 。

シンデレラにとっては、酷く苦痛ではないだろうか 。

……なんて、童話の世界にきて頭が可笑しくなっちまったのか、変な思考を巡らす 。

太宰

そうかい?君はこんなにも美しいのに

中也

否…そんな……

中也

( 流れるように口説いてくんな此奴…… )

中也

( ……否、でも、此奴顔は善いし、案外かっこい____)

中也

( いやいやいや!!!んな訳あるか!!! )

慌てて、邪悪な思考を蹴散らす 。

中也

( 此奴はあくまで童話の世界での太宰だ。普段の彼奴は、自殺野郎で、包帯巻いた、変な___ )

太宰

…大丈夫かい?顔色が悪い気がするけど…

中也

…………

……いやいやいや、そんな訳ねぇ 。 絶対に 。

カーン____

中也

!!

中也

( 12時の鐘…!?やべぇ、すっかり忘れてた!! )

中也

( 不味い、如何すりゃ善いんだ?此の儘物語通りに…否、太宰をぶん殴って世界線が変わるか確かめるか? )

中也

( てか、そもそも太宰を殴る事が世界線が変わるトリガーって確定した訳じゃねぇ )

中也

( ここは___ )

太宰

姫、もしよければ、また……

太宰

__姫?どうかしたのかい?

中也

あ、否、その……御免なさい!!

太宰

姫!?

___逃げるが勝ち、だな

太宰

姫!待って…!

中也

( くっそ…走りづれぇ! )

中也

( ガラスの靴はどうせ脱げるんだし、もう今此処で…! )

カランッ…カランッ……

太宰

…!姫、姫!!

中也

はぁっ……はぁっ………

中也

つ、疲れた……

着ていた綺麗なドレスは、 何事も無かったように元の服に戻った 。

当然、馬車も馬も従者も元に戻り、 残ったのは、ガラスの靴片方 。

中也

……相変わらず、不思議な見た目してんなァ……

異様な煌めきを持つガラスの靴は、 角度を変えると、違う色の煌めきを見せた 。

中也

( …取り敢えず、原作通りに進めてるが……之でよかったのか…? )

中也

__否…そもそも、何もしない儘物語が終わったら如何なるんだ…?

火照った頭を冷やすと浮かんだ、新たな視点 。 今まで、考えた事もなかった 。

今迄は、世界線が変わるトリガーを知る為に、太宰を追っていた 。 なら、何もしなかったら如何なるのか 。

中也

否、待て……

____________

中也

するかボケええええええええええええええええええええぇぇ!!!!!!!!

太宰

ごふっ!?!?

____________

中也

( もしかして、此の世界から出る条件って、与えられたストーリーを完結させる事か? )

中也

( もし、途中で原作には無い事をしたら、別の世界に入れられて、また完結させないといけない )

中也

( 白雪姫の時は、王子の太宰を殴ったから…… )

まだ確定した訳では無い 。

でも、之迄の不可解な出来事や、此の異能力の事を踏まえれば、そうとしか考えられなかった 。

点と点が線になった事への喜びで、 思わずガタッと立ち上がる 。

中也

よっしゃァ!謎は解けたぜ、なら楽勝だな!

中也

( この後は、姫の正体を知る為に王子が国中を探し回って… )

中也

( そして、最後は王子と結婚___)

中也

…………

中也

はァ!?!?結婚!?!?

自分でも気持ちがいい程のツッコミをして、 頭を抱える 。

中也

…そうだ……俺…彼奴と結婚するんだ………

折角閃いたのに、 また絶望に押し戻されてしまった 。

中也

( …いやいやいや、どうせこの後脱出して全部元通りになるんだし…一寸我慢すれば…… )

中也

……………

中也

……俺、此処で死ぬのかもな…

賢者タイム、とか云うのに陥った俺は、柄にもない事を、ポツリと呟いたのであった___

太宰

ここに、若い女性はおりませんか?

継母

うふふ、若い女性でしたらここに

義姉

( 王子様…かっこいいわぁ……意地でもガラスの靴をはめてやるんだから! )

義姉

( ちょっと!私が先だからね!? )

義姉

( わかったわよ… )

中也

( はぁ……どうせ履ける訳ねぇのによ…… )

目を輝かせて太宰を見ている義姉達を二階の窓から見ながら、大きくため息を吐いた 。

中也

( …否、何をそんなに気にしてんだ俺は )

中也

ま、一寸待ってればこっちに来てくれんだろ……

太宰

……どちらにも合わない……

国木田

何だと…?しかし、この家で最後なのだぞ?

太宰

……此処に、もう一人、女性はおりませんか?

継母

………

継母

いえ…おりませんわ

太宰

…………

〜〜……♪

太宰

…?此の歌は…何処から?

国木田

二階から聴こえる気がするが…如何する、太宰

太宰

…失礼、二階に上がらせて貰っても?

継母

あ、ちょっと…!

国木田

王子命令だ、二階を調べろ

執事

はっ!

継母

…!!

中也

〜〜♪

中也

( 原作ではこうして王子に気づいて貰ってたが……本当に通用すんのか…? )

ガチャッ

執事

!王子、居ました!

云った矢先に、執事らしき人が部屋に入ってきた 。 横には当然、太宰こと、王子も居る 。

太宰

…!君は……

中也

………

太宰

……この靴を…履いてみてくれるかい?

継母

シンデレラ!その靴を履くことを禁じます!

中也

( うっせぇーな此奴!? )

国木田

おい、誰に向かって口を聞いている

国木田

お前に王子の行動を制限する権限などない。下がっていろ

継母

くっ……

中也

( …彼奴、探偵社の奴じゃね…? )

中也

( …否、今はそんな事はいいか )

中也

……王子様、私でよければ…

太宰

…そうか。では、こちらへ

部屋に案内され、促される儘に座った 。

太宰は、慣れた手つきで 俺が履いている靴を脱がしていく 。

中也

( ……よくよく見たら、此奴、案外いい顔____)

中也

( ……否、んな訳あるかァァァ!!!!)

累計二回目 。 何度、邪悪な思考に取りつかれたら気が済むんだ俺は 。

太宰

…それじゃあ……

中也

………

妙に緊張した空気が流れる 。 俺も、何の理由もなく、背筋をぴしっと伸ばした 。

_______________

太宰

……ぴったりだ……

太宰

…やはり…あの時の姫は…あなたなのですか…?

中也

…はい。そうです

俺がそう答えた途端、 安心したように笑う 。

太宰

…ふふ、やっと会えた

膝を曲げ、俺の手を取る 。 白雪姫の時と、同じように 。

太宰

……私と、結婚してくれますか?

中也

…………

継母に義姉、その他大勢の執事に見守れる中、 俺は_____

中也

…はい。私でいいなら

___プロポーズ( 地獄行き )を 承諾した 。

太宰

ふふ、緊張してる?

中也

いえ、私は大丈夫です

中也

( 本当に…出られるんだよな…… )

『 では、誓いのキスを 』

中也

( これでもし、出られなかったら____ )

太宰が、ベールを捲り、目を細めて微笑む 。

太宰

……私、今、すごく幸せだよ

中也

…私もです

もし、出られなかったら……

俺は_____

……俺は?

____________

___________

意識が、遠のく

…? あれ、俺は…………

中也

ん……ん、ァ……?

目を覚ます 。 其処は、またもや知らない場所 。

でも、今度は洋風ではなく、 至って普通の生活空間であった 。

中也

( 出られ……たの、か…? )

太宰

あ、やっと起きたんだ

中也

うおっ!?!?

太宰

君、丸二日寝たきりだったんだよ?

中也

は?え、と……だ、太宰……?

中也

太宰……だよな…?

太宰

?そうだけど。寝ぼけてるの?中也

中也

…あー…否…

呼び方 。態度 。そして服装 。 何時もの太宰であった 。

中也

……俺は、今まで何をしてたんだ……?

太宰

ずっと眠っていたんだよ

太宰

先ず、芥川君と一緒に居た時に、異能力にあてられた事は覚えてるかい?

中也

芥川と…

現実と童話の世界との記憶がごちゃごちゃな中、 事の発端を懸命に思い出す 。

中也

…嗚呼、覚えてる。夜、敵を追ってた時に…

太宰

それでね、君、異能力にあてられて気絶しちゃったの

中也

気絶?だが俺、別世界に…

太宰

…成程。矢っ張り、云われた通りだね

中也

太宰

君が受けたものは、受けた者を童話の世界に閉じ込め、姫に転生させる異能力だ

太宰

受けた者は魂が抜けたように気絶し、意識だけが別世界に閉じ込められる

中也

……成程な…その、別世界から抜け出す方法って、与えられた物語を完結させる事か?

太宰

そう。展開通りに進まなければ、また別の童話の世界に転生し、完結させるまで抜け出す事はできない

中也

( 俺が予想してた通りか… )

中也

じゃあ、なんで俺は此処に?

太宰

嗚呼、芥川君がね、君を此処迄運んで来てくれたんだよ

中也

芥川が?

太宰

躰にも脳にも全く異常はないのに、中々目覚めないから、異能無効化を持った私に頼ったの

太宰

でも、駄目だったね。中也の意識は別世界にあるから、現実世界の中也の躰に触れたって意味は無い

中也

だから何もできず、俺は眠った儘だったって訳か

太宰

うん。かれこれ、丸二日は寝てたよ

中也

丸二日!?

太宰

時々、王子だとか寝言を色々云ってて面白かったよ(笑)

中也

あ"ァ!?手前、訊いてたのかよ!!

太宰

中也のドレス姿も見たかったねぇ…滑稽だろうし

中也

っざけんなクソ鯖!!!

太宰

あれあれ〜君を此処迄看病してあげてたのは誰だっけ〜?

中也

なーにが看病だ!どうせ面白そうに見てただけだろうが!!

太宰

はいはーい、用が済んだら早く帰ってね〜

中也

云われなくても帰るわこの自殺野郎!!

中也

……ま、此処に置いてくれた事には礼を云っといてやるよ

太宰

珍しいねぇ、揶揄の癖に

中也

あ"?有難く受け取りやがれ

太宰

そんな上から目線なお礼要らないから!!

中也

……はぁ、ま、じゃあな、太宰

太宰

……ねぇ、中也

中也

なんだよ

太宰

君、姫側に転生したんだよね?

中也

……そうだが

なんだ此奴 。 また揶揄いのネタにでもする心算か?

太宰

…王子役は誰だった?

中也

あ?なんで、んな事手前に云わなきゃいけねぇんだよ

太宰

…実はね、王子役になる人には、或る特徴があるんだ

中也

……特徴、だと?

含みを持つような目を此方に向けながら、 更に続ける 。

太宰

王子役になる人はね____

中也

……は?

中也

( いや…いやいやいや! )

中也

( は?は……? )

中也

( じゃあ……じゃあ…俺___)

太宰

でも君…そんなに綺麗な顔をしているのに、ドレスがそんな物じゃあ、勿体ないよ?

あれも………

太宰

……私と踊ってくれませんか?お姫様

あれも……

太宰

そうかい?君はこんなにも美しいのに

これも………

太宰

……私と、結婚してくれますか?

……これだって…

太宰

……私、今、すごく幸せだよ

全部……

中也

…そ、んな、んな、訳……

心臓が、 ドクドクと可笑しい位に脈打つ 。

顔に熱が集まり、 じんわりと頬に冷や汗が伝う 。

俺が、真逆_____

中也

( ……彼奴に、あんなクソ鯖に…ッ )

王子役になる人はね____

中也

( __恋、してるとか )

中也

絶ッ対、認めねぇッ!!!!/////////

終わり

この作品はいかがでしたか?

1,020

コメント

5

ユーザー

なんだこの2人、早く結婚しろ😡💕💕 良すぎる…童話の異能良いね✨️ w王子様を殴るお姫様とか前代未聞過ぎて…😇 何気に敦くんとかエリスちゃんが可愛くて歓喜してた🤦‍♀️💖 ねぇ、しかも読んだ後に気付いたんだけどさ 題名!!!😇😇😇題名があああ!!!😇😇 そこに太宰さんのセリフ忍び込ませたとか凄すぎだろ、マジ神🫵🏻💞💞

ユーザー

エンディングを見た瞬間 思わず痛めていた喉を歓喜が通っていき、叫んでしまいました 白雪姫にシンデレラ……何方も有名な御伽噺ですよね~ そして何方もお姫様と王子様が出てくる…ふむふむふむふむ…これは矢張り…太中の運命ですね~(?)読んでいてとても楽しかったですし、日頃の疲れがすっと消えていった気がします!執筆して下さり本当にありがとう御座います!!!

ユーザー

役2ヶ月ぶりの太中集、お楽しみ頂けましたでしょうか!😖 「はよ結婚しろ」と思った方は、ぜひぜひ、思いの丈を綴ったコメントやハートをよろしくお願いします😊 初コメ様も、気軽にコメントしてくださったら泣いて喜びます😭✨️ 役560タップ、お疲れ様でした!次回もお楽しみに🥰💗

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