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井嶋少佐
井嶋少佐
井嶋少佐
井嶋少佐
井嶋少佐
井嶋少佐
井嶋少佐
時代を遡ろう…
1945年…5月某日…
神奈川県、横須賀軍港…
ウミネコが鳴き声を上げながら空の風を受け、周囲からは小型船舶が航行する蒸気音や、重機械が…大型の軍用船の点検を行う音を奏で、忙しない様子の軍港が稼働していた。 この日、当軍港にかつて俺が艦長として指揮を執っていた潜水艦が一隻停泊していた。
最新鋭艦、伊号ロ型401号艦… 本来、伊号潜水艦にロ型等という艦艇は存在しない。 これは、友邦ドイツ海軍からの情報提供により、他国にその存在をとことんまで秘匿することに成功した艦艇だ。
来る…敵海軍戦力の迎撃に備え、今は軍港内でも特に奥手にて潜水艦の大規模整備を実施している
井嶋少佐
整備士
整備士
…ここ数年にわたって 日本はアメリカに負け戦を続けている。 かつての勢いは既になく、一部の軍人からは無条件降伏を飲むべきと声を上げる者までいる… だが…負ける訳には行かない… 俺たちと伊号ロ型だけでも、国民を護って見せる…! そうして、覚悟を今一度決めながら我が艦を見ていた時のこと…
青年士官
井嶋少佐
なんだこの士官… 横須賀にこんな奴いたか? 同じ軍港に配属されている士官は一通り把握しているつもりだったが… 目の前の奴に身に覚えはない… 辛うじて肩の階級章から海軍少尉である事は解るが…
井嶋少佐
その直後、目の前の少尉が被っていた軍帽を勢いよく取り顔を見せてくる
竹中少尉
井嶋少佐
俺の目の前にいるのは竹中塔二という同郷の男だ。 一回り年下で… 俺が海軍士官学校に上がるまでは近所の付き合いもあってチビの頃よく遊んだ仲だ。 結構な泣き垂れだった記憶があるが… まさか海軍士官になったとは…! 思わず声を出して笑ってしまう。 目の前の青年士官改め、竹中の方に駆け寄ってその肩を叩いた。
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
整備士
井嶋少佐
整備士
整備士
整備士
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
その後、日が暮れるまで横須賀市内で遊び呆けた
それから夜 街から帰った俺と竹中、いまは俺の部屋の円卓テーブルに座り、とある吟醸の封を切っている。 …俺たちの故郷、千葉県、韻場堺町(いんばさかいちょう)の名酒造… 乙正道(きのとまさみち)… と呼ばれる大吟醸だ。 2つの杯に…トクトクトク、という心地のいい音が聞こえてくる。 杯を満たし…中に広がるのは透き通る美しい清水… 1杯ずつ手に取り…互いの艷物の陶器をそっと当てる… 重みの含まれる乾杯の音の後、口の中にゆっくり転がしていく…
はぁぁ…美味い… 懐の深い香り… 強い旨味に果実のような甘酸っぱさ… この味を知ってしまったらもはや市販の安酒では物足りなくなってしまう…
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
一口ずつ…ゆっくり上品に味わっていく… 麦酒見たくガツガツ行くのは勿体ない…
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
改めて今のご時世、世知辛いものを感じる…
が、せっかく楽しい酒の席だ… 湿っぽくなったら酒が不味くなってしまう… 話を切り替えよう
井嶋少佐
竹中少尉
おっと…! そこに目をつけたか…!
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
竹中の顔が…途端に暗い影を帯びた…
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
直後、真剣な面持ちの竹中が立ち上がり… 俺に、軍部で使われる様式の司令封筒が差し出してきた。
竹中少尉
井嶋少佐
受け取った封筒を開封し、折りたたまれたそれを開けていく… 内容を見た俺は…書かれた内容に 目を疑う…
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
司令書の内容は以下の通りだ…
井嶋幸次郎少佐。 貴官指揮下ノ伊号ロ型401型艦ヲ以… 有人魚雷回天積載ノ上… 来タル出撃ノ折、特殊攻撃ヲ敢行セヨ。 本攻撃及ビ搭乗員、下記ノ人員ヲ指名ス。 ・竹中塔二 少尉 以上ヲ以参謀司令トス。 皇国ノ為奮励努力サレタシ。 大日本帝国軍参謀本部 徳松敏郎中佐
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
井嶋少佐
次の瞬間、竹中が力強く机を殴りつける…
竹中少尉
井嶋少佐
肩を落とし、やり場のない怒りや悲しみを堪えるように肩で息をした… そのまま、落ち着きのない様子で俺を見たり周りを見たりと繰り返していた…
竹中少尉
井嶋少佐
竹中が…恨めしそうな眼差しで俺を見てきた…
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
必死に耐えてはいるが… その瞳を、やり場のない悲しみが潤ませていた…
井嶋少佐
竹中少尉
我に返った様と言わんようすで、涙が滲む顔を強引に拭い…竹中のやつは下を向いた…
竹中少尉
「失礼します」 その一言だけを残して… 竹中は俺の自室を後にした… その後…2人で話すこともなくなる…