コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
竹中少尉
竹中少尉
竹中少尉
竹中少尉
時代を遡ります…
1945年…六月某日…
井嶋さんとの1件があってから… 僕はただひたすらに訓練にあけくれた…
整備士
竹中少尉
乗り込み… 乗り口を閉め… 発射管から射出されると同時にスクリューを回す。 そして操縦桿を握り 、海中に浮かぶ標的の木箱に体当たり…
外から木製の何かが壊れる音が聞こえた… 同時に、練習機内の有線電話から…
整備士
竹中少尉
これを朝から夕方までただ繰り返す…
外から聞こえる練習機を引き上げる固定鎖のガラガラという音… この音を聞く度…まるで心臓を締め付けられるような苦しい感覚に襲われる…
竹中少尉
自分を殺すための訓練を終える夜は毎回… 母さんから書いてもらった手紙を… 力の限り握りしめながら自室のベッドに蹲り… …ただ…声を押し殺して涙を流した… 苦痛と悔しさが込み上げ… 言葉にならない思いをひたすら押し込めながら…
竹中少尉
親父を…母さんを…誇りをもって守れる… そんなふうに戦いたかった… 例えそれで敵の銃弾に撃たれて命を落とすならまだ納得だってできた… でも…国はそんな僕に… 「魚雷の部品になって死ね」 って言ってきた…
悔しい…悔しい悔しい悔しい…!!!
そうして朝を迎え… また、特攻の訓練…
そんなふうに毎日をただ繰り返しながら… いずれくる自分を殺す命令を待ち続ける… 最初は毎日…明るい時間は目元が腫れてた… それも…時間が経つにつれ涙すら出なくなっていった…
整備士
竹中少尉
そうして…また練習機からでる。 横須賀の潮風が身体に吹き付けてくるのを感じた… でも…こんな感覚すらも次期味わえなくなるんだ… もはや…怒るような気力も…悲しいって感情ももうない… ただ…訓練するだけ… そうして練習機を見ようと体を向けた時…
井嶋少佐
竹中少尉
遠くから井嶋さんがこっちを見てるのに気が付いた… あの夜の事で怒ってるんだろうか… でも今はそんなこともどうだっていい… 軍礼で敬礼だけしてさっさと練習機に乗り込んだ…
それから10日後… 1945年の六月のとある夜のこと… 僕を始め、伊号ロ型401型艦の乗組員全員が作戦会議室に招集された。 全員が、部屋から見て正面の壁に立つ井嶋さん…そして、その後ろについてる射影機から映し出された横須賀から半径300kmの海図を見ていた… いくつか、司令部から提供された情報を井嶋さんから聞くことになる…
井嶋少佐
「ここだ!」という一言と共に、手に持っていた指揮棒で小笠原諸島の南に位置する孤島を指した。
井嶋少佐
竹中少尉
とうとう… 僕の残りの命の長さが決められた…
井嶋少佐
竹中少尉
そうだ… 回天は海中に出たら視界が悪い… 現に練習機で何度か全く見当はずれの方向経進路を取ってしまったことがある… 当たるかどうか… それは僕にかかっている…
井嶋少佐
そして…明日僕は死ぬ… そう思いながら、部屋を後にしようとしたその時だ…
井嶋少佐
竹中少尉
とめられると同時、他の乗組員がいなくなったのを確認してから井嶋さんが口を開いた…
井嶋少佐
…今更そんなことを聞かれても そう思ったが…井嶋さんに言ったってしょうがない…
竹中少尉
これでいい… 僕が海軍をめざしたのだって井嶋さんの背中に憧れたからだ… 死ぬ時が決まった今くらい憧れた人の前だけでも気丈に構えなければ…
井嶋少佐
竹中少尉
胸を張り、両足を肩幅に開く… 下士官が上官の話を聞く時の正しい所作だ…
井嶋少佐
…なんだ、その話…?
竹中少尉
井嶋少佐
竹中少尉
たしかに…井嶋さんの言うような例というのもたまにあるんだろう… それでも、実戦では何が起こるかなど誰も予想できない… そう考え込んでしまったところ…
井嶋少佐
竹中少尉
冷酷な目でこっちを見てくる… ついで、僕の胸元に人差し指を強引に押し当て…凄まじくこちらを睨みつけながら言ってきた…
井嶋少佐
竹中少尉
思わず目を見開いた… 今まではどこか井嶋さんという人を軍人ではなく、近所の年の離れた兄弟だっていう感覚があったからだ… でも、目の前にいる人は帝国海軍の将校… ここに来てまで自分の中の甘えみたいなものを痛感する…
竹中少尉
上官に楯突くのは軍規違反… しっかりと敬礼して非礼を詫びる。
井嶋少佐
竹中少尉
僕も、足早に部屋を退出した。