一覧ページ

LINE1164

第1話 - あ

2023年09月24日

#スカッと

タナカトシキ

ハツネ

ちょっとお義姉さん！どういうつもりですか！

マイコ

え？一体どうしたのよハツネちゃん

ハツネ

とぼけないでください！

ハツネ

うちに勝手に赤ちゃん預けていきましたよね！

ハツネ

インターホンが鳴って出てみたら、

ハツネ

一歳にもならない女の子の赤ちゃんが一人でいたんですよ！

マイコ

え、赤ちゃん？

ハツネ

あなたとハジメお兄ちゃんの子ですよね？

ハツネ

だって、凄くハジメお兄ちゃんにそっくりなんですもの！

ハツネ

お兄ちゃんにも連絡とってますけど、既読つかないんですよ！

マイコ

多分仕事中だと思うけど…

ハツネ

とにかく早く迎えに来てください！

ハツネ

子供を無断で勝手に置いて行くなんて、非常識にも程があります！

ハツネ

赤ちゃんが可哀想だと思わないんですか！

マイコ

娘は隣で寝てるけど…

ハツネ

え？

マイコ

娘はもうすぐ二歳だし、他に子供は産んでないわ、私

ハツネ

え、嘘…それ本当？

ハツネ

じゃあ、この子は誰なんですか…

マイコ

知らないわよ。全く身に覚えがないわ

ハツネ

でも、お兄ちゃんとは他人とは思えないくらい似てるし…まさか、隠し子とか？

マイコ

ちょっと、縁起でもないこと言わないでちょうだい

ハツネ

すみません

ハツネ

私も、あのお義姉さん一筋なお兄ちゃんが、隠し子なんて作れるとは思えないんです

ハツネ

でも、本当にそっくりなんです…

マイコ

赤ちゃんなんてみんな同じような顔してると思うけど…そんなに似てるの？

ハツネ

今、赤ちゃんの写真送りますね

ハツネ

～写真～

マイコ

本当だ…似てる…ホクロの位置まで…

ハツネ

でしょう？

マイコ

まさか、ハジメがそんなこと…

ハツネ

とにかく、この子どうしましょう

ハツネ

私達夫婦子供いないし、しかも夫は出張中だし、

ハツネ

赤ちゃんの世話なんかしたことないですよ…

マイコ

警察に通報した方がいいと思うわ

ハツネ

ですよね…

ハツネ

お義姉さん、ごめんなさい

ハツネ

さっきは決めつけて責め立ててしまって

マイコ

いいのよ、別に

～その夜～

ハジメ

おい、マイコ！！

ハジメ

帰ってきたら玄関にチェーンがかかってて、家に入れないんだが！

マイコ

本当のことを話すまで、家には入れないわ

ハジメ

は？本当のことってなんだよ！

マイコ

ハツネちゃんの家の前にね、女の赤ちゃんが一人置き去りにされていたの

マイコ

あなたにそっくりな子…

ハジメ

え、赤ちゃん？

マイコ

まさか、隠し子じゃないわよね？

ハジメ

違う！俺は誓って、隠し子ができるようなことはしてない！

マイコ

本当に？

ハジメ

あぁ。疑うならDNA鑑定をしたっていい！

マイコ

じゃあ、赤ちゃんには何も心当たりがないのね？

ハジメ

…あ！

マイコ

え？心当たりあるの？

ハジメ

もし、俺の仮定が正しいのだとしたら…

ハジメ

間違いなく、俺とその子には血縁があるよ

マイコ

なんですって！？やっぱり隠し子！？

ハジメ

違う！その子はたぶん、俺の妹だ

マイコ

へ？

マイコ

妹って…ハツネちゃんのことじゃなくて？

ハジメ

あぁ。お袋が新しく産んだ、俺とハツネの妹だ

マイコ

ちょっと、適当な嘘つかないでよ！

マイコ

お義母さん、何歳だったか忘れたけど…確か50代よ！

マイコ

それなのに赤ちゃんを産むなんて…

ハジメ

俺だって信じたくなかったよ

ハジメ

だけどこないだ、お袋と久しぶりに会ったんだ

ハジメ

お袋、赤ん坊を抱いてて、俺に助けてほしいと言ってきた

ハジメ

この子はあんた達の妹だ、お父さんが死んで育てられなくなった、助けてほしい、って

マイコ

まさか…

ハジメ

俺だって信じられなかった

ハジメ

冗談だよな？って、何回も言った。でも本当だった

ハジメ

想えば、親父の葬式の時、お袋はずっと閉じこもってた

ハジメ

悲しみのあまりかと思ってたんだが、

ハジメ

あれは、妊娠がばれないようにするためだったらしい…

マイコ

それで、なんて答えたの

ハジメ

ふざけるなって言っちまった…

ハジメ

「俺達に勝手に黙って産むなんて」

ハジメ

「その歳で出産とか何考えてんだよ、気持ち悪い」

ハジメ

「マイコにはなんて説明すりゃいいんだよ」

ハジメ

「ルカだってそうだ。年下の叔母さんとか…」

ハジメ

「俺は知らないからな。迷惑かけるな」って…

ハジメ

恥ずかしくて、マイコにもハツネにもずっと黙ってた。ごめん

ハジメ

そのせいで、二人にかえって迷惑かけちまった。あの『妹』にも…

マイコ

そうだったんだ…

ハジメ

というか、全部話したから開けてくれ！寒い！！

マイコ

あぁ、ごめんごめん！

～翌朝～

マイコ

お義母さん、久しぶりですね

ナオコ

あら、久しぶりねマイコさん。ルカちゃんは元気？

マイコ

元気です。そんなことより、

マイコ

ハツネちゃんの家に置いて行った赤ちゃんのことで話があります

ナオコ

赤ちゃん？なんのことかしら

マイコ

とぼけないでください

マイコ

全て、ハジメに聞いて知ってるんですよ

マイコ

最初はあまりにも似てたから、ハジメの隠し子を疑いましたけど

ナオコ

…似てるのも当然よ

ナオコ

だって、私が産んだ子だもの

ナオコ

私だって、孫がいるような歳で妊娠するなんて思わなかったわ

ナオコ

だから、油断してしまったのね

マイコ

どうして、誰にも言わなかったんですか？

ナオコ

反対されると思ったからよ

ナオコ

現にハジメに言われたもの。この歳で産むなんて何考えてるんだ、気持ち悪い、って

ナオコ

でも、堕ろすなんてどうしてもできなかった

ナオコ

お腹の中で一生懸命生きていたあの子は、

ナオコ

私にとって、ハジメやハツネと同じだもの

マイコ

私も、同じ母親として気持ちはわかります…

ナオコ

お父さんも、産むのに賛成してくれた

ナオコ

その矢先よ。お父さんが事故で亡くなったのは

ナオコ

その時にはもう、堕ろせる期間は過ぎていてね…ハジメ達に隠し通すのが大変だった

マイコ

せめてその時に相談してくれたらよかったのに…

ナオコ

責められると思うと言えなかったのよ

ナオコ

どうにか産んで、ずっと専業主婦だった私がパートを掛け持ちして、

ナオコ

若くない体に鞭うって働いて、

ナオコ

そうしているうちにもう、限界を感じたのよ…

ナオコ

それでハジメに助けを求めて…結果はさっき言った通りよ

マイコ

私も、ハジメに聞きました

ナオコ

ハジメに拒絶された跡はハツネを頼ろうと思った

ナオコ

でも、ハツネの家の玄関前に立った時、

ナオコ

きっとハジメと同じように蔑まれると思ったの

ナオコ

それが怖くて…気が付いたらインターホンを押して、

ナオコ

あの子を置いて逃げてた…

ナオコ

私、母親失格なのよ

ナオコ

無理に産んでおきながら、非難を受ける覚悟もなく、

ナオコ

あの子を捨ててしまったのだから…

ナオコ

しかも、上の子達にまで負担をかけて…

マイコ

お義母さん…

マイコ

赤ちゃんを捨てたことは、決して許されないことです

ナオコ

そうよね…

マイコ

でも、産みたかった気持ちはわかりますよ

マイコ

とにかく、赤ちゃんを迎えに来てください

ナオコ

あの子、元気にしているかしら？

マイコ

元気ですよ。よく笑って

マイコ

ハツネちゃんのお姑さんが飛んできて、面倒見てくれてるそうです。施設なんてかわいそうだ、って

ナオコ

そう…凄いわね。あの人、私より年上なのに

ナオコ

実子を捨てた私とは大違い…

マイコ

赤ちゃんのことはハツネちゃんが警察に通報しました

マイコ

お義母さん、どうか自首してください

マイコ

今ならまだ、間に合います

マイコ

ハジメも、お義母さんの罪が少しでも軽くなるよう、警察に頼んでいます

ナオコ

え、ハジメが…

マイコ

お義母さんを突き放したことに、罪悪感を感じているんですよ

ナオコ

そう、あの子が…

マイコ

でも、お義母さんのやったことが許されるわけじゃありません

マイコ

同じ母親として、到底理解できませんし怒ってます

マイコ

もしハツネちゃんがインターホンに気付かずに、その子が誘拐でもされてたら…

ナオコ

わかってる。陰からあの子が保護されるまでずっと見てたけど、

ナオコ

何かあったら私一人だし、守れないわよね…

マイコ

私だって、ルカの子育てが辛くて、投げ出したくなったことが何度もありますよ

マイコ

でもその度に、ハジメや両親など周りの人達にSOSを出して、助けてもらいました

マイコ

お義母さん、あの子のことは責任もって育ててください

マイコ

その代わり、何かあった時はSOSを出してください。私達が出来るだけ手を差し伸べますから

マイコ

ハツネちゃんも、そう言っています

ナオコ

ありがとう…みんなに、改めて謝るわ

マイコ

あの子が大きくなったら、ルカと一緒に遊んでもらうつもりです

マイコ

年下の叔母さんなので、ちょっと複雑ですけどｗ

ナオコ

いいわね。そうなったら素敵ね

マイコ

では、あの子が待ってますのですぐにハツネちゃんの家に来てください

ナオコ

えぇ。すぐ行くわ

～翌日～

マイコ

■不在着信■

マイコ

ちょっとお義母さん！！

マイコ

今どこにいるんですか！何かあったんですか？

マイコ

ハツネちゃんの家に、あの子を引き取りに行くんじゃなかったんですか！？

ナオコ

あーあれね、やっぱりやめたわｗ

マイコ

はぁ！？

ナオコ

あの子が元気なら何も心配いらないでしょｗ

ナオコ

あの子だって、おばあちゃんみたいなお母さんより、

ナオコ

そのままハツネ達に育ててもらった方がいいだろうし

ナオコ

それにハツネ夫婦は子供がいないから、この機会に子供が持ててちょうどいいじゃないｗ

ナオコ

ルカちゃんだって、遊び相手は年下の叔母さんより従妹の方がいいでしょ

マイコ

冗談じゃない！あの会話は何だったんですか！？

ナオコ

本当に引き取りに行くつもりだったのよ

ナオコ

でもね、あの子を手放して気付いちゃったのよ

ナオコ

子供も夫もいない快適さにｗ

ナオコ

この先私の人生、長くないもの

ナオコ

それを、ずーっと子供に縛られるなんてごめんだわｗ

マイコ

無責任すぎます！覚悟して産んだんじゃなかったんですか！？

マイコ

あの子のこと、愛してるんじゃないんですか！？

ナオコ

人生、自由に生きたもの勝ちよｗ

ナオコ

もう誰かに尽くす人生なんてうんざりｗ折角手に入れた自由を手放す気はないわｗ

ナオコ

今成田国際空港にいるわ。憧れのハワイに出発よ！

マイコ

今、ハツネちゃんの旦那さんがそこにいますよ

ナオコ

へ？

マイコ

海外出張からちょうど帰って来たそうです

マイコ

ハツネちゃんもお義母さんがバックレたことはとっくに把握していて、

マイコ

旦那さんにも連絡したそうです

マイコ

旦那さん、凄く怒ってお義母さんを探し回ってるそうですよ

マイコ

必ず捕まえて、警察に突き出す、ですって

ナオコ

ちょっと待って！嫁の親を、こんな高齢の女を、警察に売るつもり！？

ナオコ

ひっ…こっちに向かってくる…

マイコ

おやおや、もう見つかっちゃいましたか

ナオコ

嫌だごめんなさい！警察は、警察だけは！！

～後日談～

マイコ

その後、お義母さんはハツネちゃんの旦那さんにあっけなく捕まり、

マイコ

警察に突き出されました

マイコ

お義母さんがあまりに暴れるので、義母といえど手荒な扱いになってしまった、

マイコ

というのは旦那さんの言葉です

マイコ

お義母さんは保護責任者遺棄罪で有罪判決が下り、塀の向こうへ行きました

マイコ

赤ちゃんは結局ハツネちゃん夫婦が引き取り、

マイコ

その代わり、成長した赤ちゃんも含めて今後一切誰もお義母さんの老後の面倒を見ない、

マイコ

仕送りもしない、絶縁すると決定しました

マイコ

自由を求めたお義母さんの老後は、きっと寂しいものとなるでしょう

マイコ

勿論、赤ちゃんにも孫のルカにも決して会わせないつもりです

マイコ

ハツネちゃんの旦那さんは兄弟の多い長男なので、赤ちゃんの世話が得意らしく、

マイコ

旦那さんやお姑さんの影響で、ハツネちゃんも赤ちゃんの世話が手馴れてきました

マイコ

ルカも幼いながら、あの子のことをよく可愛がっています

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE1164

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE1164

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧