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鱗滝左近次
呆れたように言いながら、豆電球だけが灯る部屋に鱗滝さんが入ってきた。
広幡才彩
鱗滝左近次
広幡才彩
興奮の冷めやらないまま、暖かい布団に潜り込んだ。
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楽しくはあれども、新しく呼吸を作るのは容易ではなかった。二日に一回、鱗滝さんに相手してもらい、足りない動きを“型”として作っていった。 力の足りない私が、どのようにして威力を上げていったか。使ったのは、「回転の勢い」だった。 参考にしたのは、“拾の型 生生流転”。回転するほどに威力の増していく技だ。 度重なる回転により勢いを増して鬼の頸を断つ。それが私の呼吸で想定している戦い方だ。 多大なる予備動作を以って、一つのことを成し遂げる。隙を埋め合わせるのは、練度次第。大器晩成という言葉がよく似合う気がした。
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広幡才彩
流流舞いの様に滑らかな動きで相手を翻弄する。手加減によって生まれた隙を突き__ 鱗滝さんの脇腹に木刀が掠った。 不安と安心が混ざったような雰囲気を纏まといながら、鱗滝さんが近づいてくる。
鱗滝左近次
父のような温かさを孕んだ手が、私の頭に降ってきた。
鱗滝左近次
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鱗滝さんと揃いの服に袖を通し、腰紐に刀を差し込む。 さらに、鱗滝さんから“厄除の面”というお面を貰った。その名の通り、私を厄から守ってくれるような御守りであり、鱗滝さんの所から出ていく子達全員に渡しているらしい。 私の面は、質素ながらも、所々に雲のような模様が描いてあった。私の特徴をよく表してくれている。
広幡才彩
怖気づいているのを悟られないように、大きな声で出発の挨拶をする。鱗滝さんのことだから、気づいていても不思議ではないが。 頷いた鱗滝さんを背に、山道を進んでいく。「あの夜」とは違い、木々は青々と煌めき、雀や烏の鳴き声が遠くから聞こえてくる。星のような黄色を纏った向日葵も咲いていた。
広幡才彩
変わらない景色に右往左往しながらも、漸く目的地に続く階段が見えてきた。辺りには季節外れの藤の花が咲き誇り、上品な匂いを漂わせている。
広幡才彩
階段を登ると、溢れんばかりの人が会場いっぱいに集まっていた。だが、どの人も共通して、緊張した面持ちをしている。当たり前だ。最終選別は命を懸ける催し。生きるか死ぬかの分かれ道なのだ。 その中に、一際目立つ子が二人いた。一人はぼんやりと空を見つめている。もう一人は身を縮こませ、周りよりも一層怯えていた。 自分の緊張を紛らわせたいのもあり、私は後者の子に近づいていった。
コメント
1件
うわああ第16話、もう最終選別目前なんだね…!😭💕 呼吸作りに励む才彩ちゃんと、それを見守る鱗滝さんの師弟関係が尊すぎるよ…「よく頑張ったな」のシーンで泣いた〜✨ お面に雲模様ってセンス良いし、藤の花の描写も幻想的で美しかった!緊張を隠して怯えてる子に話しかけに行く才彩ちゃんの優しさにも胸キュン🫶 生きて帰ってきてくれ〜!!次回が待ちきれない🌸