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4 - 事故からはじまるLove Me Do!

♥

830

2020年01月24日

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それは冷たい空気をつんざくような

けたたましいブレーキ音から始まった

???

……っと、ちょっと!

???

生きてるかい!?

???

ねぇ!!

結衣

……ん、

結衣

んっ!?

必死に呼ばれて目を開けると

そこには知らない人がいた

結衣

え、あ、アレ!?

結衣

すみません、私……!

???

あぁ、よかった生きてた

???

私の車の目の前に、アンタが飛び出してね

???

ブレーキが間に合わなかったんだ

???

そのまま動くんじゃないよ

???

外傷はないようだけど安心できない

???

もうすぐ救急車が来るからね

???

私も一緒について行くから

結衣

あ、はぁ……

結衣

(どこも痛くないんだけど……)

結衣

(ていうか、この人)

結衣

(すっごい美人オーラある……)

???

赤信号で飛び出すなんて無茶をして

???

よかったよ

???

死ななくて本当によかった

結衣

すみません、ご心配を……

???

しゃべるんじゃないよ

???

ほら、救急車が来た

救急隊員

どいてください!

救急隊員

担架が通ります!

救急隊員

患者、こちらの方ですね!

???

そうです

???

私は後方を追いかけますから

???

名刺をお渡ししますから、現れなければご連絡を

救急隊員

わかりました

結衣

あ、あの!

???

大丈夫だよ、逃げたりしないから

???

後でね

結衣

バタンと大きな音がして、救急車のドアが閉まる

うまく状況が掴めない

さっきあの人、轢いたのは私って言ってた

轢かれた?私が?

確かにブレーキ音は聞いたけど、よく覚えてない

結衣

それよりあの人、おばあちゃんなのに

結衣

すっごい美人だったなぁ……

ぼそっと呟いた一言に、救急隊の人がこっちを見る

あ、聞こえてた

ちょっと恥ずかしいから、寝たふりでごまかそう

 

救急車は、大きなサイレンを鳴らして走っていく

ピーポーピーポー、救急車が通ります

なんだかちょっと非日常だ

そのせいかもしれないけれど

私はあの人の顔を何度も思い返しながら

思わずニヤニヤしてしまっていた

医者

なんにも問題ありませんね

医者

いたって健康です

いろんな検査を終えてから

お医者さんは、呆れたような顔で言った

医者

信じられない、奇跡ですよ

医者

よほど運がよかったんでしょう

結衣

はぁ

医者

痛いところなどもないんですね?

結衣

はい、ぜんぜん

結衣

ホントに、かすり傷もないです

???

はぁ、良かったよぉ

???

私はあの時、本当に

???

こんな若い子を轢き殺しちまったかと……

医者

でも、まだ油断はできませんからね

医者

なにかあれば必ず、すぐに来なさい

医者

どんな些細なことでもいいから

医者

いいね

結衣

はい

結衣

ありがとうございました

???

悪かったね、本当に

結衣

いえ、私こそ!

結衣

前を見てなかったから……!!

そっとおばあちゃんの顔を見る

すらっと背筋の伸びた、凛とした立ち姿だった

まるでモデルさんとか、女優さんみたいに

なんだか威厳があるというか、カッコいい

???

家まで送るよ

結衣

あ、えっと

結衣

……ちょっと、事情が……

???

……

???

分かった

???

じゃあ少し付き合ってくれるかい?

結衣

え?

???

こんなババアとのデートで申し訳ないが

???

少しだけショッピング

???

そのあと、うちでお茶でもどうだい?

結衣

本当によかったんでしょうか

結衣

こんな、服まで買ってもらっちゃって

連れてこられたのは、見るからに大豪邸だった

和洋折衷というか、建物は大きな平屋の洋館

庭がとてつもなく広くて、漫画の世界にいるみたい

それに今着ているのは買ってもらったばかりの服だ

実生活とのギャップに、頭がぐらぐらしてしまう

そんな私に、この人は

またおいしそうなお菓子をたくさん差し出しながら

めまいがするほど綺麗に笑った

???

なに言ってるんだい

???

元々の服を台無しにしたのは私だよ

???

もっと高い服をねだってよかったのに

結衣

そんなわけいきません!

結衣

もう充分よくしてもらって

結衣

えっと、あなたには……

???

マサだよ

結衣

マサ

北条マサ

結衣

わ、私は結衣です!

結衣

マサさんには、むしろ感謝してるんです!

マサ

ははっ、自分を轢いた相手に感謝だなんて!

マサ

変な子だねぇ

マサ

ところで結衣ちゃん

マサ

あの時、なにをそんなにあせってたんだい?

結衣

ちょっと言いづらいんですけど

結衣

私、多額の借金があって

結衣

頑張って返済してはいるんですけど

結衣

今月の返済に間に合わなかったから

結衣

ヤミ金の人達に追いかけられちゃって

マサ

借金?その歳で?

マサ

まだ高校生くらいだろう

結衣

あ、私が作った借金じゃないんです!

結衣

両親が先物取引に失敗しちゃって

結衣

その両親も一昨年……

マサ

……ごめんよ

マサ

知らなかったとは言っても

マサ

辛いことを思い出させたね

結衣

それはいいんです、もう吹っ切れました!

マサ

だけど、生活は大変だろう?

結衣

いえ、なんとかなってます!

結衣

かなりいいバイトもしてるし

結衣

返済金も、少しずつ貯まっていってるんですよ

結衣

最近は綺麗な公園みたいなところ見つけて

結衣

そこで寝泊まりしてます!

マサ

綺麗な公園?

マサ

この辺りにそんなの、あったかね

結衣

あるんですよ、これが!

結衣

ちょうどあんな感じに石灯籠とかあって

結衣

向こうにイチョウの木なんかが……

マサ

ふむ

マサ

まさかうちの敷地に住んでる子がいるなんてねぇ

結衣

すみません……!

結衣

そこの壁、いい感じに穴が空いてて……

結衣

ここ、秘密の公園的ななにかだと……!

マサ

いやいや、別に責めやしないさ

マサ

むしろ安心したよ

結衣

え?

マサ

こんな若くて可愛い子が野宿なんて

マサ

いくらなんでも危ないだろう?

マサ

アンタの野宿先がうちでよかった

マサ

というか……

マサ

空き部屋もたくさんあるんだ

マサ

どうせなら、一緒に暮らせばいいよ

結衣

いいんですか!?

マサ

もちろん

マサ

事故の影響がいつ出るかも分からないしね

マサ

一緒に暮らしてりゃ

マサ

些細な違和感にも気付きやすいだろ?

結衣

でも、お家賃とか……

マサ

そんなもんいらないよ

結衣

え、えぇえ!?

結衣

そんっ、そんなわけいきません!

結衣

病院代も、服も、それに家もなんて!

結衣

私、私……!!

マサ

あらあらあら

マサ

ごめんよ、困らせるつもりじゃなかったんだ

マサ

ただ、そんなになってまで頑張ってる子に

マサ

なにかしてあげたくて

結衣

違うんです、マサさん、私!

結衣

そんなにしてもらっちゃったら!

結衣

一目惚れじゃすまなくなっちゃいます!!

マサ

……え

結衣

私、レズビアンなんです

結衣

それでもいいって言うなら、マサさん

結衣

私に愛されちゃう覚悟でお願いします!

勢い任せに、思いっきり告白する

この時私はどんな顔をしてたんだろう

少なくともマサさんは、驚きすぎて言葉も出ない様子だった

そんな姿すらキュンとするほど綺麗すぎて

きっとあのブレーキ音が、私が恋に落ちた瞬間だったと知った

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