ジミンが来る。 その口約束だけで今日まで一度も家から出られていない事なんか帳消しになった。 余程好きなのだ、ジミンの事が。
連絡から40分過ぎたあたりでインターホンが鳴った時、俺は既にそのモニターの前にいた。
ジミン
赤い髪に黒いサングラスのジミンが画面の向こうで手を振っている。 返事を返すのと同時にセキュリティを解除して、ジミンを容易く迎え入れる。
それからバタバタと慌ただしく駆けて行って、玄関で従順に待つ。 その時間さえ楽しくて。
ジミン
姿が見えるなりその白い首に抱きついて、ジミンが驚いた声を出した。 それも好き。 全部。
ジミン
本当はこのまま押し倒して情事に持ち込みたい気持ちはあるけれどジミンがしっかり俺を抱き締めながら靴を脱ぐから、もう少しこんな甘いだけの時間だけがあっても良いかもと思った。
抱き締めたままジミンの鼻と唇が耳の辺りに潜り込んできたのが分かった。
ジミン
"好き"というワードに胸の奥が簡単に掴まれる。
ホソク
それは、どういう意味で? って聞きたくなるのをグッと堪えて笑うと、身体をやんわり離したジミンが綺麗な微笑みを浮かべている。
そして俺の唇を親指でなぞって
ジミン
ジミン
一重瞼の目が俺の目と交わるから、勿論そんなの良いに決まってるって。 頷く事もせず俺からジミンに口付ける。
ジミンの唇の感触に脳が溶けていくみたい。 ジミンの手の体温に治った熱が上がるみたい。 ジミンという存在に酔って堕ちて幸せで。
ジミン
快楽の前触れのようなキスではなく、確かめ合うようなキスを終わらせたのはジミンだった。
俺の名前を呼んでニコッと笑うと腰に手を回して
ジミン
可愛い提案と共に四角い箱を見せた。 まるで恋人同士の様なやり取りにむず痒くなる。 でもジミンなら、そのむず痒ささえ"好き"に変換されてしまう。
ホソク
ジミン
ジミン
ホソク
ジミン
コーヒーが2つと、箱の中を覗き込む俺とジミン。 これもおかしな話だけれど、こんな普通の会話久しぶりにしたかもしれない。
ジミン
だから余計に新鮮で楽しくて、カップケーキを頬張る俺にテーブルに頬杖をついてそう尋ねるジミンの言葉一つにも妙な嬉しさが込み上げた。
身体を重ねる事も好き。 上でも下でも獣みたいな瞳で色香の強い声を出すジミンなんか本当に堪らない でも、口の端に少しクリームを付けてケーキを食べるジミンを見るのも幸せ。
ホソク
それを人差し指で拭うとジミンが俺の手を掴んで、ジミンの舌が指を這う。 それからそのままちゅっと軽く音を立てるから、空気が変わる。
ジミン
ジミンの目はしかと俺を捉えている。
どうしよう。 まだジョングクの噛み痕が消えてないのに。 ジミンを拒否するなんて出来ない。 でもーーー
ジミン
決まらない覚悟がそのまま流れそうになった時に、ジミンから来たのはキスではなくて突拍子もないその質問だった。 俺の手はまだジミンに握られたまま。
ホソク
ジミン
ジミン
ジミンの淡々とした声にどんな意味合いが込もっているのか。
ホソク
ジミン
ジミン
ジミンが空いてる方の手で俺の首を指差した。 ジョングクの噛み痕。 パーカーのフードで見えないと思っていたものだ。
怒っている、不機嫌、嫉妬 それとも全く別の、と考えを張り巡らせる俺にジミンがふふっと笑った。
ジミン
嘘で笑ってる様には見えない。
ジミン
ジミンの言葉が理解出来ない。 微笑んでる理由も。
ジミン
ジミン
そう言って首を傾げたジミンの笑顔に俺の何かが冷たく引いていく。
俺もジミンもジョングクのように"好き"と明確に言葉にしたことはない。 ジミンが数十分前に"俺の好きな"と言った事に淡い期待を抱いたのだけれど、それは違った?という事?
でもまだ希望は捨てられない。 こう理解に苦しむ事を言われても、俺はまだまだジミンの事が好きで堪らないからだ。
ホソク
ジミン
名前を呼んで抱きついてみると'ん?'って優しい声で、俺のそれに応えるように直ぐ抱き締め返してくれる。
ホソク
尚更強く抱きついてジミンの背中の服を握り締める。 ジミンは俺を拒否しないって信じたくて。
ジミン
俺の背中をジミンの両手が撫でる。 それから耳にキスしてくれて
ジミン
耳元で囁かれたのは俺が欲しい言葉じゃなかった。
どちらともなく身体をゆっくりと離すと、ジミンの手がいつもと変わらない手つきで俺の頬に触れる。
ジミン
ジミン
頬から首にジミンの手がするすると動いて、丁度噛み痕辺りを撫でながら
ジミン
ジミン
俺の心を冷やす言葉を温かい手で触れながら飄々と口にして、その唇の口角は緩く上がっていた。 'でも'と続けるジミンの手がまた俺の唇をなぞって
ジミン
ジミン
俺にとって一番怖い言葉を吐くと、そのまま軽くキスをした。 優しくて甘くていつもと変わらないキスなのに、俺はそのキスに夢中になれなくて。 かわりにジミンの肩辺りの服を握り締めて出た言葉は
ホソク
情けない懇願だった。
他にヤる人がいてもいい。 1番じゃなくてもいい。 だから俺を捨てないで。 優しくて残酷なジミンが'うん'と呟いて俺を抱き締める。
いっそもっと強く抱き締めて俺の息の根を止めてくれたらいいのに。 ジミンの腕の中で死ねるならこんな悲しい現実、忘れられそうな気がするから
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!