健太郎
只今ぁ

雅
おかえりなさい!健太郎くん。

健太郎
雅さんおはよ

健太郎
あれ、五夏は…

雅
うん、まだ家には帰ってないのです

健太郎
まじかよ…。もう、一週間だよね?

雅
ええ。

雅
…。

健太郎はソファに座り、携帯を取り出して操作している。
健太郎
電話も繋がらないし、LINEも既読にならないんだよね。これって、俺だけ?

健太郎
雅さんは五夏と連絡取れてるの?

雅
…う。えと…

雅
💦

健太郎
(そうか。雅さんは五夏と仕事してるんだから連絡取れないわけがないんだ)

健太郎
プルルルル…(電話)

健太郎
「おかけになった電話番号は、只今電波のーー」

健太郎
ぷつっ。

雅
ゴメンね。口止めされてるの。
…五夏って本当に頑固っていうか、思い込んだらそれだけになっちゃうとこあるから

健太郎
うん。

健太郎
(…てことはやっぱり、俺が原因?)

健太郎
(何か、したっけ。)

雅
…待っててくれますでしょうか?あの子が家に帰って来ないわけないですし。

雅
あ!せっかくだから、私の作ったデザートでも食べて待つのはどうでしょーか。
…健太郎くん。撮影のぎちぎちスケジュールで大変なんじゃないですか^o^

雅
ドラマ、ヒットおめでとう

健太郎
ありがとう雅さん。見ててくれたの?嬉しいなー。

健太郎
まあ、主役ではないんだけどね。周りの人もいいメンバーだし運が良かったよ。

雅
うんうん。じゃあ、用意してきますわ。くつろいで待っててくださいな

健太郎
うん。

健太郎
ありがとう

健太郎
ふー。ん。なんだろうこれ。

健太郎
TVガイドかあ。雅さんチェックしてくれてたのかな?

健太郎
あ、これ

折り目を付けられたページには、健太郎が出演していたドラマがクローズアップされていた記事がある。
健太郎
ふふ。

健太郎
んっ

健太郎
あー。あっ?!

健太郎
やべ。これ、そうだ。これ自体は、数ヶ月前に撮影したんだけど、そっか今か

そこには、でかでかと健太郎と主役の女優とのキスシーンが映し出される。
雅
健太郎くん、はい。あっ

雅
…それ、五夏さんが撮って見てたんですわよ。

健太郎
そうなの?へえ

健太郎
珍しいww

雅
…ちょうど一週間前ですわね

雅
ニコッ

健太郎
(ああ。そういう事か)

健太郎
雅さん。ありがとう。いただきます

健太郎
ぱくぱく。うまっ

誰も出ないうちに、それが途切れる。何度かそれを繰り返す……
ここは、東京のとある高層タワーにある三条家の事務所の一室。
LINEメッセージの受信という通知が、五夏の携帯に表示される。
五夏
…。

健太郎
はあ。

健太郎
もう10日も経つのに、まだ出ないつもりなのかな。

健太郎
もうどうすればいいか分かんないよ…。

携帯をベッドへ置き、突っ伏して寝たふりをする健太郎。
五夏
もしもし。雅?

雅
あ!五夏ちん

雅
まだ、帰らないのですか?さすがに色々立て込んできてますよぉ。

五夏
うん。ちょっと、頼まれてくれるかしら?

雅
ん?なんですか。

雅
ひょっとしてまた、あれですか?

五夏
うん。それ。

雅
ふう。五夏ちん…たかがキスくらいで10日も粘るって只者ではないわ。

洗面所を通り過ぎると三条家の家主にしかわからない小部屋がある。
雅
ふう。キョロキョロ

雅
五夏ちんの言っているものはあ〜、と。

雅
これこれ。健太郎くんの部屋ね。

雅
もしもし?五夏ちん

雅
やっといたわよ。繋がってると思うから、携帯アプリで受信してね。

五夏
うん。ありがとう。

五夏
健太郎は、私がちゃんと監視しなきゃ駄目なのよ。

五夏
ふふっ

雅
………。

雅
(`・ω・´)

健太郎
五夏…。

健太郎
はあ。

五夏
じーっ(携帯の画面を眺める五夏。)

五夏
(よしよし。結構やられて来てるみたいね。)

五夏
だけど足りないわ。もっと確定的な健太郎からの謝罪が欲しい。

五夏
そうだ!坂下に…

執事の坂下
は。かしこまりました五夏様。

五夏
お願いね。

執事の坂下
…(五夏さま。一週間前から、予定をバカみたいに入れ過ぎです。)

執事の坂下
分かりました。

執事の坂下
…と、いうわけなんです。今回は私が共に五夏さまと会食に行きますので、健太郎様は是非、友人の方を伴って来て欲しいとの事です。

健太郎
…え。それって、

健太郎
俺が五夏と行くって言ってスケジュール空けておいたやつじゃん!

執事の坂下
…その、五夏さまが

健太郎
ん、まあ、わかった。ごめん。俺が主催してるわけじゃ無いし…五夏がそう言うんだよね?

執事の坂下
ええ。ニコッ

執事の坂下
(※電話)

健太郎
了解。連絡ありがとう。…じゃあ。

健太郎
やっと繋がったと思ったら坂下かよっ

健太郎
相変わらずLINEの返事は来ないし…。

健太郎
あー、もう

健太郎
……俺、できる事何も無いじゃん。待ってるだけなのかよ。

五夏
じーっ

携帯の画面から、健太郎の部屋を覗き込んでいる五夏。
実は、三条家のある特定の部屋には防犯カメラが付いているのだ。
常に作動しているわけでは無いが、家主だけがそれを操作する事ができる。
五夏
うふふ

五夏
ちょっと、電話してみようかな?

五夏
…いや、やっぱりまだ駄目ね。健太郎には経験を積んで貰わなきゃ。

健太郎
……

健太郎
もう10日か。会食までは4日…

健太郎
その間も連絡しないつもりなのかな。

五夏
そうよ。健太郎。我慢するのよ

五夏
私の気持ちに比べたらそんなの、小さな事よ。

五夏
(あの、アバズレとキスしている健太郎をたった一人で見ていた時…!!)

健太郎
はあ…。

健太郎
嫌だな行くの。

健太郎
(流石にこの状況で、女を連れていく勇気は俺には無い…)

五夏
ぞくぞく。

五夏
(健太郎、しんじゃったのかな)

健太郎
…………………

健太郎
……………しくしく

五夏
うふッ

健太郎
しくしく。しくしく

五夏
健太郎ないちゃった

健太郎
うう。こんなの、俺の事閉じ込めてるだけやん

健太郎
しくしく

健太郎
仕事なのに…。折角もらった仕事頑張ってるだけなのに…
…

五夏
流石に、可哀想になってきた…

五夏
健太郎…。

健太郎
うう…。

五夏
(してくれないかな。アレ)

健太郎
もう、寝るか。疲れたし

五夏
健太郎…

五夏
そんなのじゃ足りない。帰れないよ

五夏
なんか寂しくなって来ちゃった。

健太郎
……………しくしく
