ミカ
それじゃあ
話してもらうわよ
不思議な少年
ああ
わかってる
大きく澄んだ瞳に
細く伸びた鼻筋
ピンク色の薄い唇
不思議な少年
まずどうして君が死んだか
だけど……
ミカ
待って
ミカ
お互い名前を知らないで
話すのもなんだわ
ミカ
お互い
名前を言ってから
話を進めましょうよ
不思議な少年
僕は君の名前に
興味ない
ミカ
いいから
教えなさいよ
不思議な少年
はあ……
不思議な少年
僕はレイだ
ミカ
レイって言うのね
呼び捨てでいいかしら
レイ
呼ばなくていい
僕はきみに興味がない
ミカ
ふーん
ミカ
じゃあ何て呼べばいいの?
ミカ
レイ君?
ミカ
それともレイちゃん?
レイ
……
はぁ
レイ
何でもいい
ミカ
じゃあレイね
ミカ
私の名前はミカ
私も呼び捨てでいいわよ
レイ
僕はきみに興味がない
ミカ
さっきからそればっかり
じゃないの?
レイ
話が進まないからだ
ミカ
そういうこと
レイ
本筋に戻るけど
君は今魂だけの存在だ
ミカ
魂だけの存在……
レイ
さっき
ここに来る前に
見たと思うけど
レイ
魂は悪魔の大好物なんだ
レイ
そして悪魔は
その魂をもっと美味しく
食べるために
その魂の生存時の時の最も
近い存在の人に化けて
魂を怖がらせる
ミカ
だからお父さんたちの
姿だったのね……
レイ
話を続けるけど
君が今どんな存在なのか
ミカ
……!
レイ
世の中には
人間界
霊界
妖界
魔界
レイ
四つの世界がある
レイ
そして君は
霊界と人間界の間の
存在だ
ミカ
どういうこと?
レイ
つまり
確実に死んでいない
ということさ
ミカ
そうなの?
ミカ
よかった……
レイ
体は四つの世界のどこかにある
レイ
君の体のなかに
君が入れば
生き返るだろう
ミカ
本当!?
ミカ
生き返れるのね?
レイ
ああ
レイ
でも
魂と体が長い時間
離れてしまうと
戻ったとしても
そのまま死んでしまう
ミカ
どうして……?
レイ
体のなかに
魂が入っていないと
体は永遠の眠りに
ついてしまう
レイ
長い時が経って
体に戻っても
永遠の眠りについてしまった
体は起きることはない
ミカ
どのくらいの時間で
見つければいいの?
不思議な少年
最長期限はおよそ一年間だ
ミカ
一年間…わかったわ
レイ
まだ生きたければ
体を探すんだな
ミカ
一人で?
レイ
僕は忙しいんだ
ミカ
だって
あんたのせいで死んだんでしょ?
ミカ
私
あなたに殺されたのよね
レイ
……それは
レイ
確かにそうだな
レイ
だが僕一人だけでは
体なんて探せない
レイ
持ち主が見つけて
初めて体に戻れる
レイ
仮に僕が見つけても
触れることはできない
ミカ
なんで?
レイ
僕は死神だからさ
レイ
だから君の期待に
答えるつもりはない
ミカ
なんでよ!
ミカ
私はまだやりたいこと
いっぱいあるわ!
ミカ
死神でも悪魔でも
何でもいい
ミカ
私の体を探すの手伝って!
レイ
僕と一緒にいても
危険なだけだ
ミカ
それでもいいの!
ミカ
私もっと生きたい!
ミカ
この世に未練なんて残したくない
ミカ
私だって……
ミカ
私だって好きで死んだわけじゃ
ない……のよ……ぐすっ
レイ
‥……
レイ
仕方ない
レイ
僕にも責任がある
レイ
それに
しつこく言われても
困るだけだ
レイ
君が体に戻れるまで
僕が君の用心棒
をすればいいな
ミカ
ホントに?
ミカ
ありがとう!
レイ
ありがとう……か
レイ
その代わり
僕も死神としての
仕事がある
レイ
だからずっと守れる
訳じゃない
レイ
だからこれを渡しておく
そうに言ってレイが
渡してきたのは
紫色の指輪だった
ミカ
なにこれ……
とてもきれいな色ね
宝石みたいだわ…
レイ
その指輪は霊を
肉眼でみることができる
レイ
霊がつけても人間が
つけても効果は同じだ
レイ
自分が人間ではないと
いうことを他人に
漏らすな
レイ
君が住んでいる町にも
人間に化けている悪魔なんて
いくらでもいる
レイ
僕の仕事は
その悪魔を浄化する事
レイ
他にもいろいろな
仕事をしているが
これが一番やっている仕事なんだ
ミカ
思った以上に
大変そうね
ミカ
そうだ!
ミカ
私あなたの仕事を
手伝ってあげてもいいわよ
ミカ
あなたも私のことを
守ってくれるって言ってたから
レイ
しなくて大丈夫だ
ミカ
いいじゃない
ミカ
それに
あの不気味な男をひっぱたいて
やりたいわ
レイ
君を殺した元凶か
レイ
確かに僕はあの男を追っている
ミカ
あの人
子猫ちゃんに
何かしたんじゃないのかしら
ミカ
とても怖がってる様子だったし
ミカ
でも
私が死んだ原因が
あの男の人なら
ミカ
あなたは何も悪くないじゃない
レイ
その黒猫は
僕だ
ミカ
……え?
ミカ
あの子猫ちゃん
あっ……あんただったのね?
レイ
そうだ
レイ
まさか
止まっていた
トラックが動き出すとは
思っていなかった
ミカ
そういうことなのね
レイ
今日は
ここまでだ
レイ
僕はこれから仕事がある
レイ
いいかい?
その指輪は絶対に
外してはだめだ
レイ
外したら君の正体がばれてしまう
から
レイ
くれぐれも
悪魔たちに気をつけてくれ
ミカ
わかったわ
ミカ
ありがとう
ミカがそうに言うと
少年は窓から飛び降りて
いなくなった
ミカはレイからもらった
指輪をはめると
そのまま深い眠りについた