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前回の続き。 (特殊な会話)
「愛の方向性」
希求×偏愛
神々の「理の外側」と、 悪魔の「夜の喫茶」の中間にある 境界線のカフェ。
二人は向かい合って座り、 コーヒーを飲んでいる。
(希求) 「偏愛。あなたの愛は、いつも一つのものに集中しすぎて、孤独に見えますわ。わたくしの希求は、全ての生命の小さな願いを集めて、世界全体を暖かくするもの。 愛は、分かち合うものよ。」
(偏愛) 「希求。君の愛は水のようだね。 広くて優しいが、誰のものでもない。 僕の偏愛は炎だよ。一つの対象に全てを注ぎ、独占する。 誰にも渡さないからこそ、その対象の価値は絶対的になるんだ。」
(希求) 「でも、独占することで、その対象の自由と輝きを奪ってしまうでしょう?わたくしが回収する願いは、常に希望に向かっている。 あなたの愛は、愛しい対象を停滞させてしまう。」
(偏愛) 「いいや。それは愛が強い証拠だ。 自由なんて、刹那の幻想だよ。 僕の永遠の執着こそが、その愛しい存在の価値を永遠に保証する。 君の普遍的な愛は、特別な愛を知らない。」
(希求) 「わたくしは、特別な愛を否定しているのではないわ、偏愛。特別な愛も、普遍的な願いの一部。 ただ、自分だけのものにしようとする執着が、均衡を破る。 貴方は愛しているからこそ、独占を手放すべきですわ。」
(偏愛) 「手放す?ありえないね。手放した愛に価値はない。 まあいい。君の優しい愛も、僕の歪んだ愛も、結局は世界を動かすエネルギー。創世が創ったんだから、 僕たちはそれぞれの方法で愛し続ければいい。」
偏愛の悪魔はコーヒーカップに 残ったミルクを指で弄び、満足そうに微笑む。
(希求) 「...ええ。それが、均衡が許す限り、私たちに与えられた役割ですわね。」
希求の神は優しく微笑んで立ち上がり、 偏愛の悪魔は席を立つことなく、 その場に残されたコーヒーカップに 愛しいものへの執着の視線を注ぎ続けていた。
「仕事はきっちり」
破滅×盲信
神々と悪魔が、 人間界の境界線にある寂れた カフェで遭遇。
破滅の神は完璧な紅茶を、 盲信の悪魔は濃すぎるエスプレッソ を飲んでいる。
(破滅) 「あら、盲信。貴方の支配は、最近少し大雑把すぎないかしら。わたくしが完璧な静寂を用意した場所で、 貴方の信者たちが不要な熱狂を残していく。 掃除の手間が増えるでしょう。」
(盲信) 「チッ。破滅。分かっているさ。盲信させるのは簡単だが、奴らの情熱は止め時が難しいんだ。 俺の計画では静かに信じさせたいのに、刹那の奴の享楽に流されたり、虚飾の偽物に飛びついたり... 俺の支配のラインを超えるんだ。」
(破滅) 「盲信が、盲信のせいで仕事が増えているなんて、皮肉ね。わたくしも、貴方の情熱の残滓を完全な無に還すのに、いつもよりエネルギーを使っているわ。 静寂は優雅であるべきよ。」
(盲信) 「だから、俺も愚痴っているんだろう。支配も破壊も、仕事はきっちりするのが美学のはずだ。 停滞みたいに動きたくないならともかく、俺たちはプロだ。」
(破滅) 「そう。プロよ。ならば、次回から破滅の後の静寂を邪魔しないよう、盲信の熱量を三分の一ほどに抑えなさい。それがお互いのためよ。」
(盲信) 「分かったよ、破滅。その代わり、均衡に静寂の美学について説教されないように、俺の仕事場を優先的に静かにしてくれ。」
破滅の神は口元に微笑を浮かべ、 盲信の悪魔はエスプレッソを 一気に飲み干して立ち上がった。
二人の間の仕事に対するプロ意識だけは、 なぜか一致していた。
「真実の美」
永遠×虚像
神々の領域の一角にある、 時が止まったような静かな庭園。
永遠の神がお茶を淹れているところに、 虚飾の悪魔が最新の人間界のファッション雑誌を持って現れた。
(虚飾) 「やあ、永遠。君の淹れる紅茶は、いつの時代も完璧だね。 今日の僕のテーマは、『一瞬で過ぎ去る流行を、 いかに永遠のものに見せかけるか』だよ。」
(永遠) 「あら、虚飾。貴方にしては哲学的なテーマですこと。貴方の虚飾は、刹那の流行を追うものだと思っていたわ。 永遠に興味がおありなの?」
(虚飾) 「もちろんさ。偽りこそが真の美だ。 だが、その偽りが一瞬で崩れ去るのでは、 創世が創った本物に負けてしまう。 僕の目標は、この雑誌のモデルが着ている最新のドレスを、一万年後も『美しい』と人間に錯覚させることだ。」
(永遠) 「フフ。それは難しい願いね。時は、偽りを必ず風化させるから。貴方の装飾は、偽りの上に偽りを重ねることで、真実を一瞬で覆い隠すのが得意でしょう?」
(虚飾) 「その通り!だから、君に聞きたいんだ。 永遠の観点から見て、この美に『本質』のようなものを一滴だけ加えるとしたら、何が必要だと思う? そうすれば、僕の虚飾は最強になる!」
(永遠) 「...そうね。本質を真似る必要はないわ、虚飾。 貴方がその美を心から愛し、信じているなら、 その一瞬の情熱が貴方の虚飾に『永遠』という時間を与えるでしょう。」
(虚飾) 「情熱...。それは盲信の領分だが...フム。 僕の嘘への絶対的な自信、か。 分かったよ、永遠。 君のアドバイス、最高に美しいね。」
虚飾の悪魔は、雑誌を永遠の神に見せびらかした後、誇らしげに去っていく。
永遠の神は、その場に残った雑誌の最新のドレスを、優しく見つめながら微笑んだ。
「一瞬の哲学」
有無×刹那
人間界で最も賑やかな街の、 高いビルの屋上。
刹那の悪魔が景色を見下ろしているところに、有無の神が静かに現れた。
(有無) 「刹那。貴方が今見ているその一瞬の景色は、有るのかしら。それとも、過ぎ去った瞬間は無となるのかしら。貴方は、無を恐れて刹那を追い続けているの?」
(刹那) 「やあ、有無。君の問いかけはいつも退屈で魅力的だね。僕にとって、過ぎ去った瞬間は無だよ。 だからこそ、この一瞬が有るのだ。有る瞬間だけが価値を持つ。」
(有無) 「しかし、次から次へと刹那を追い求め続けるその行為は、結局は永遠を希求している裏返しではないかしら。 貴方の存在は、一瞬で消えてしまうことを受け入れられないからこそ、動き続けるのでしょう?」
(刹那) 「鋭いね。だが、永遠とは停滞だ。 僕が求めているのは情熱的な一瞬の連鎖だよ。 無になる瞬間も、快楽であれば喜んで受け入れる。 さあ、有無。君もその哲学的な問いを一瞬だけ捨てて、この風と光の快楽を共に楽しんでみないか?」
(有無) 「...快楽は刹那の領分。わたくしは、快楽が有るのか無いのかを観察する役割よ。 でも...(目を細めて)貴方が追い求める一瞬の光は、確かに真実の輝きを内包している。 有る、と認めましょう。」
(刹那) 「そうだろう?君の真実は、冷たすぎるんだ。 有るなら楽しめばいい!ねぇ、有無。 この街で最も美味い一瞬の料理を一緒に味わわないか?次の瞬間には、無になるかもしれないがね!」
刹那の悪魔は有無の神の手を取り、 屋上から街の中へと閃光のように飛び降りていった。
有無の神は、わずかに驚きながらも、 その一瞬の行動力に静かな肯定を示したのだった。
「オリジナルの価値」
均衡×模倣
神々の図書館。
均衡の神が世界の理についての分厚い文献を読んでいるところに、 模倣の悪魔が人間界の精巧な贋作を数点持って現れた。
(模倣) 「やあ、均衡。君はいつも世界の真実という名の退屈な規則を読んでいるね。教えて欲しい。 オリジナルと贋作。 この二つを完璧に均衡させるために、最も必要な要素は何だ?」
(均衡) 「あら、模倣。貴方が規則に興味を示すなんて珍しいことですわね。貴方の偽りの創造は、均衡を乱す最大の原因よ。必要な要素は『欠陥の有無』です。」
(模倣) 「欠陥?馬鹿げている。完璧こそ模倣の美学だ。 僕の贋作は、創世の創造物より美しく、完璧にできている。」
(均衡) 「その完璧さが欠陥よ。オリジナル、つまり真実には、必ず不完全さ、矛盾、一瞬の揺らぎが有る。 わたくしが司る均衡とは、完全な対称ではなく、不完全なものの調和のこと。 貴方の贋作は完璧すぎて、真実の不均衡を模倣できていない。」
(模倣) 「...不完全なものの調和...?真実には矛盾が必須だと? 虚飾には分からない深遠な理だね。 では、均衡。この贋作に、不完全さをどの程度加えるべきか、計算式を教えてくれないか?」
(均衡) 「計算式などないわ、模倣。貴方の鋭い観察眼で、真実の矛盾を愛すること。 それが、貴方の贋作に『本物らしい価値』を与えるでしょう。完璧さを手放す勇気を持つことです。」
模倣の悪魔は、計算式がもらえなかったことに不満を漏らしつつも、 均衡の神の言葉を深く考え込む表情を見せた。
(模倣) 「チッ。真実を愛せ、か。 僕にとっては最も面倒な模倣になりそうだ。 まあいい。今日の知識は有益だったよ、 均衡。また不完全な質問をしに来る。」
模倣の悪魔は、手元の贋作をわざと少し歪ませ、 満足そうな皮肉な笑みを浮かべると、 知識の影に溶け込むように静かに去っていった。
(均衡) 「...完璧な模倣は、不完全な均衡によって破られる。面白い法則ですわ。」
「情熱の暴走計画」
希求×盲信
希求の神が、 人間界の「願いのエネルギー」を 分析している場所。
盲信の悪魔が、次の支配計画について相談にやってきた。
(盲信) 「希求。君の願いのエネルギーは、いつも前向きで鬱陶しいほど輝いているな。俺の次の支配計画の『情熱の源』に、何か素敵なアイデアを一つくれないか? 奴らを盲信させる、最高の計画を!」
(希求) 「あら、盲信。支配ではなく、皆が幸せになる素敵な願いを叶えてみればよろしいのに。 そうね...『世界中の人々が、毎日笑顔で挨拶を交わせるように、太陽の下で大きな歌を歌う』というのは、 いかがでしょう?」
(盲信) 「『毎日笑顔で挨拶...大きな歌を...太陽の下で...』 素晴らしい!純粋で熱狂的だ!これだ! 俺の盲信の情熱を全て注ぎ込むに値する願いだ!」
(希求) 「ええ、きっと心が温かくなりますわよ。」
(盲信) 「温かいどころか燃え上がる!よし!作戦開始だ! 奴らには歌を盲信させる!まず、音程を一つに定め、 毎日、夜通し、歌い続けさせよう! 食事も睡眠も無用!純粋な熱狂のみが存在の真実だ!」
(希求) 「あら、待って!盲信!それは素敵な願いではなく、強制よ!毎日笑顔で、というのは心が伴ってこその希求であって、夜通し歌い続けるのは疲弊させるだけだわ!」
(盲信) 「うるさい、希求!情熱には犠牲がつきものだ! 君の純粋な願いを完璧に実現させるには、 絶対的な支配が必要だ!さあ、行くぞ! 『盲信の太陽歌唱計画』実行!」
盲信の悪魔は、希求の神の静止も聞かず、 熱狂的な光を放ちながら「全人類歌唱キャンペーン」 と書かれたプラカードを掲げて 勢いよく飛び出していった。
(希求) 「ああ...わたくしの素敵な願いが、盲信のせいで強制労働の道具になってしまったわ...。あれは失敗の希求として、なかったことに回収すべきかしら... (疲れた様子で、頭を抱える)」
「存在と怠惰の問答」
有無×停滞
神々の領域の片隅にある、 静かで誰もいない空間。
有無の神が「存在の是非」について瞑想していると、停滞の悪魔がその場で寝転がっていた。
(有無) 「停滞。貴方は、なぜ存在しているのかしら。 貴方が動かないことで、有るはずの進歩が無になっている。貴方の存在に、価値は有るのかしら?」
(停滞) 「...有無。退屈な問いだね。動くのさえ面倒なのに、 存在する理由を考えるなんて、もっと面倒じゃないか。俺が動かないのは、面倒だからだ。 そこに価値なんて、有るかい?無いかい? どっちでもいい。」
(有無) 「しかし、存在するということは、行動によって証明されるものよ。貴方が何もしないなら、貴方は有ると言えるのかしら? それとも、無と見なすべきなのかしら?」
(停滞) 「無でいい。無の方が、面倒な仕事や責任から解放される。俺が有ると主張するのは、紅茶を飲むときだけだ。 紅茶を飲むには、有るという状態が必要だからね。」
(有無) 「では、紅茶を飲むという行動こそが、貴方の存在の証明と価値になるのね! (真面目にメモを取り始める) 有るという概念の最小単位は、紅茶...。」
(停滞) 「やめろ、有無。紅茶も、面倒な定義を加えると美味しくなくなる。俺は今、動きたくない。 有るとか無いとか、考えるのも面倒だ。 この場の空気ごと停滞させて、全てを無に帰してくれないか?」
(有無) 「それは、破滅の領分。わたくしには、概念を問うことしかできないわ。」
(停滞) 「チッ...役立たずだね。じゃあ、この会話はもう無かったことにしてくれないか? 考えること自体が疲れる。」
停滞の悪魔は、そのまま深く欠伸をすると、 その場に溶け込むように目を閉じた。
有無の神は、その究極の怠惰という名の 『無』の証明に、満足とも困惑ともつかない 表情で頷いた。
(有無) 「...この会話が無かったことになったら、貴方の怠惰も無になってしまうかしら。ふふ。やはり有るのね。」