鮭盛り合わせ

今日は昼過ぎから動画の撮影があるのだが

俺はスマイルと2人でしっぽ会員用に出すWトークの収録をする為に、朝早くからワイテハウスを訪れていた。

1人1本持たされている鍵を用意していたけれど、玄関の扉は既に開いていて

ガチャリと音を鳴らし中へ入る。

すると先に到着していたスマイルが、リビングからひょっこり顔を出した。

分かってはいたけれど、家にはスマイルしか居ないらしい。

だって彼が態々出迎えてくれる時は、いつだって誰もいない時だから。

挨拶を返すと満足したようにまたリビングへ引っ込む。

この一連の流れが何だか犬みたいだなっていつも思うんだ。

待ちに待った飼い主を玄関まで出迎えて、姿を見たら安心して部屋に戻って行く姿が。

言葉には出さないけれど寂しかったのかもしれない。

部屋に入るとソファに座るスマイルの周りに本やらお菓子やらその他諸々が散りばめられていて

こういう所もオモチャやおやつを自分のテリトリーに持ち帰る犬とそっくりで何だか笑えてくる。

不審な目を向けてくるけれど、それを無視して来る途中に買ったものを鞄から出す。

テンション低いように見えて、実は目が輝いている。

スマイルって好き嫌いが多い癖に案外食に興味あるよね。

少なくともソファから降りて近寄ってくるくらいには。

人のもの欲しがるし、遠慮もしないし

食べ物が貰えそうな時だけ大人しく言うこと聞くし。

しれっと二口目を食べて知らん顔している所とか。

ずっと静かだったのに突然ワンワンキャンキャン饒舌になったり

何でそんなことしたのって意味不明な行動を取り出したり。

思い返してみれば犬みたいな行動が沢山出てくる。

思わず頭を撫でたくなってスマイルの髪をわしゃわしゃと掻き乱す。

しかしスマイルに腕を掴まれ止められてしまった。

スマイルは呆れた顔をして

でも何かを思いついたのかニヤッと笑ったかと思えば

俺の視界がぐるりと回った。

気づけば天井の方を向いていて、そんな俺をスマイルが覗き込む。

ソファに押し倒されている。

スマイルの顔が近づいてきて、思わず目を瞑った俺の頬に鼻を擦り付けた。

息がかかった所が熱くなる。

自分でも情けないくらい声が小さくなったけれど、スマイルはクスリと笑い耳に口を近付けてきた。

どういう意味？と聞こうとしたら、その前にスマイルが離れてしまった。

そして玄関の方から扉が開く音がして慌てて起き上がる。

何事も無かったかのようにBroooockときんときに挨拶をするスマイル。

俺はこんなに心臓がバクバク言っているのに。

そうやって直ぐ何処かへ行ってしまう所も犬に似ているんだから。

耳に飛び込んで来た言葉に思わず両手で顔を覆う。

帰りに本屋に寄って犬の飼い方を学ぼうかな。

END