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フョードル修道士

ところで……

と、先生が話を切り出す。

フョードル修道士

私に何か用があったのではないですか?

フョードル修道士

ほら、朝食を食べてからまだ時間は経っていないし。

フョードル修道士

お腹が空いているわけではないでしょう?

アイラト・B・ゴーゴリ

あ、えっと……

相変わらず、先生の瞳は紫のままだ。

だが、ここで問うてみるべきか?

先生の瞳の色が違うという理由だけでここに来たのだと説明すべきか?

いや、聞かぬ方がいいだろう。

そもそもアイラト自身がおかしいのだと一蹴されてもおかしくない。

先生なら、そんなことはなさらないとは思うが

今日は、何も聞かないでおこう。

アイラト・B・ゴーゴリ

いえ、先生と一緒に遊びたくて。

ドロフェイが不思議そうにアイラトを見る。

そんなドロフェイの手をぎゅっとつかんで、先生を見る。

先生はいつも通り、優しく笑って、

フョードル修道士

そうですか。

フョードル修道士

では、何で遊びますか?

と頭を撫でてくれた。

なぜか、その笑顔が、怖いような気もした。

そんな修道院生活が7年も続いたのち、

先生はアイラトとドロフェイを連れて、修道院の図書室にやってきた。

その頃にはアイラトは15歳。ドロフェイは12歳になっていた。

アイラト・B・ゴーゴリ

先生。

フョードル修道士

はあい?

アイラト・B・ゴーゴリ

どうして、急に図書室なんかに?

ドロフェイ・ドストエフスキー

……父さまは本がお嫌いでは?

フョードル修道士

あら。いつ私がそんなこと言ったのでしょう?

ドロフェイ・ドストエフスキー

あれ、おっしゃっていませんでしたか?

アイラト・B・ゴーゴリ

僕も聞いた気がします。

アイラト・B・ゴーゴリ

昔、夜が怖くて眠れなかった時、

アイラト・B・ゴーゴリ

先生に童話を読んでとねだった時があったでしょう?

フョードル修道士

……ありましたっけ? そんなこと

アイラト・B・ゴーゴリ

ええ。その時、たしかに先生は断ったのです。

アイラト・B・ゴーゴリ

本は嫌いだから読みたくないと。

ドロフェイ・ドストエフスキー

ぼくも聞いていました。

ぴた、と先生が立ち止まった。

立ち止まった先は、窓の近くだった。

そこから見えるのはなだらかな丘で

まるで今にも羊がかけていきそうなほど生き生きとしている丘だった。

フョードル修道士

それは、きっと……もう一人の、私が言ったことでしょう

アイラト・B・ゴーゴリ

……はい?

先生はこちらを一切振り向かず、こう続けた。

フョードル修道士

今、私は十字架を手にしていますからよいのですが、

フョードル修道士

夜の時間帯では、どうして魔の力には勝てぬようです。

アイラト・B・ゴーゴリ

……は? 急に何をおっしゃって……

フョードル修道士

ドロフェイ。

先生の冷淡な声が図書室に響く。

いつもとは違う雰囲気に気圧されそうになる。

ドロフェイ・ドストエフスキー

あ、はい……

フョードル修道士

私が前、あなたを奇跡の子だと言ったこと、覚えていますか?

ドロフェイ・ドストエフスキー

あ、はい。覚えて、ます……

フョードル修道士

よかった。

よかった?

一体、何がだ?

フョードル修道士

アイラト。

アイラト・B・ゴーゴリ

は、はい!

フョードル修道士

悪魔とは、どのような存在ですか?

アイラト・B・ゴーゴリ

え? えっと……

アイラト・B・ゴーゴリ

醜くて欲深くて、なおかつ残虐非道で、

アイラト・B・ゴーゴリ

人に災いをもたらし、悪に誘い込む悪霊……

アイラト・B・ゴーゴリ

と、習いました

フョードル修道士

それなら、天使は?

アイラト・B・ゴーゴリ

えっと……万人に優しく、不正を許さず、

アイラト・B・ゴーゴリ

賢く、清らかで、迷える人を導くような高潔な存在……

フョードル修道士

そう。そうです。

フョードル修道士

その通り

先生はドロフェイの肩を掴む。

フョードル修道士

それが、その天使ことがこの子なのです。

フョードル修道士

そして、その悪魔こそがこの私、フョードルなのです。

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コメント

8

ユーザー

待ってそう言うこと?つまりそう言うこと?そう言うことね??私の脳細胞ちゃんが働いてるわ!!!!!!なんとなく理解した!!!繋がったー!!!!!!!いやマジで羊右さん神ですわ……いや、羊右様と呼ばせていただきます

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