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今回はりょう目線の話でした。みらい目線ではないので、りょうの今までの気持ちや昔のことが書かれています。
その日は久しぶりに部活がない放課後だった
いつもより時間が早かったから普段帰りは街頭だけで暗い橋も今日は明るくハッキリと見えた
りょう
そんなことを小さく呟いて白い息を無意識に零す
大きい橋だけど道路に車が走ってるだけで いつも人通りは少なかった
本当にたまたまだった
本当に、無意識に下を見た
橋の下に緩やかに流れる川を見下ろした
りょう
りょう
冷や汗が次々と吹き出た
緩やかに流れる川には
その流れに合わせて浮いている女の子がいた
りょう
溺れている、というより、本当に気を失って川の上で倒れたかのように浮いていた
りょう
焦りと共に溢れ出す言葉と一緒に体は動いていた
橋を走り抜けて河川敷へ続く階段を 2段飛ばしで下りた
川へ辿り着くとすぐに制服のブレザーを脱いで ワイシャツとスラックス姿のまま川へ入った
靴は全部沈むほどの深さだった
深さというより、とてつもなく冷たかった
12月の川は冷たく氷が敷きつめられた様だった
本当に凍えるほどの冷たさだったが 俺の足は止まらなかった
りょう
りょう
近づきながら呼びかけたが返答はなかった
りょう
嫌なことを考えてしまった
やっと女の子にたどり着いて俺はすぐに抱き上げた
りょう
りょう
りょう
女の子の口許に顔を近付ける
細かく小さく息をしていた
りょう
すぐに川辺に上がり、ブレザーを畳み枕替わりにして女の子を寝かせた
りょう
一言呟いて女の子の胸元あたりで心肺蘇生をした
何回かした辺りで女の子の口から 大量の水が吹き出された
みらい
りょう
りょう
みらい
か細い声で呟いた
りょう
みらい
女の子は水か涙かは分からないが濡れた目で 細くこちらを見つめていた
今にも消えてしまいそうだった
消えてしまいそうなほど儚かった
りょう
みらい
りょう
俺は女の子をもう一度抱き上げた
家に向かって走った
必死に、
助けたくて、
どうしようもない焦りと戦いながら しっかりと抱きかかえて走った
その女の子は
間違いなく俺が見た中で1番美しい子だった
長いまつげに薄い上唇とぷっくりと膨らんだ下唇
消えそうな程に白い肌
目が惹かれた
苦しそうに眉間に皺を寄せる顔を見て
守りたいって心底思った
女の子…みらい、は、いつも悲しそうな目をしていた
黒く凛とした瞳の奥には虚しさと悲しさ、寂しさ
そんな感情で溢れているようだった
みらいはまだ眠っていた
12月には丁度いい暖かさの道場で静かに寝かせていた
さっきまで凍ってるかと思うほどに冷たかった身体も 今は平熱ほどに戻っていた
りょう
無意識に頭を撫でていた
サラサラとした髪が手をすり抜けていく
みらい
少し動いたが、目覚める気配はなかった
初めてあった君を
今にも消えてしまいそうな程に儚い君を
必死になって助けた
そして、これからも助けたいと思った
りょう
りょう
りょう
りょう
りょう
りょうの父
りょう
りょうの父
りょうの父
りょうの父
りょう
りょうの父
りょうの父
りょうの父
りょう
りょうの父
りょう
りょうの父
りょうの父
りょう
りょうの父
りょう
その後みらいは目覚め、話を聞いてるうちに 1悶着あったが、それも落ち着き詳しく話を聞いた
学校ではいじめを受け
家では母親に酷い扱いを受け
居場所がない、と苦しんでいたそうだ
なんて酷い話だと思った
みらいは今までずっと耐えてきたんだ
そう考えると何も分からない俺だったけど、 とても苦しかった
そんな俺の気持ちの数倍、いや、数億倍 も苦しんでいたんだ
あの日から数日
みらいの顔には少し笑顔が取り戻されてきた
俺たち家族と過ごす時間を幸せだと言ってくれる
そんなみらいを、もっと、ちゃんと、幸せにしたい
そう思った
初めてそう思えた
初めて、誰かに対して幸せにしたいと思った
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みらいを見ると
小学校の頃の自分を見てるみたいだった
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小学生のりょう
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小学生のりょう
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小学生のりょう
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小学生のりょう
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小学生のりょう
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小学生のりょう
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小学生のりょう
小学生のりょう
みらい
みらいからそう聞かれたことがあった
りょう
俺はそう答えた
みらいにはまだ
これが嘘だということを伝えていない
俺は小学生の頃、 ある男の子からいじめを受けていた
その時は本当に、辛くて辛くて
毎日泣いていた
でも
みらいのように、死にたい、死んでしまいたい、
そう思うことは1度もなかった
だって、幸いにも俺には家族がいた
守ってくれる人がいたから
親はその時から学校を休ませるわけでもなく
先生に何か訴えに行くわけでもなく
ただひたすらに俺を強くした
うちでやってる空手は、 稽古日以外にも俺に教えこんでくれた
俺は、体も心も強くなれた
それでも人を信じるのは怖かった
でも、みらいに出会った日から
俺の中の何かが少しずつ動き出したような気がする
それが何かは分からない
けど、何かが確実に変わった
いつかわかる日が来るだろうか
みらいに対してのこの気持ちに名前があるとするなら
それは何だろうか
いつか
きっとわかる日が来る
ただそれまでは、みらいを守りたい
幸せに過ごさせてあげたい
もう二度と死にたいだなんて思わないように