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テラーノベル(Teller Novel)

美月

ごめんね?

美月

私のせいで、こんな時間になって

気にするなよ

押しに弱い俺は

いつも彼女に流される

もう遅いし

美月

うん

家まで送るよ

美月

……うん

秋のせいか日暮れが早く

外はすっかり 暗くなってきた

(俺ん家のほうが近いけど……)

(今日も誘えなかったな)

助手席に座る彼女を見つめ

そんな事を考えた

美月

ねえ、あの場所

美月

こんな時間に、人が居るよ

どこ?

美月

ほら、あの公園!

美月

なにかのお祭りなのかな?

美月

なんだか楽しそう……

そ、そうかもな?

(この公園って、隣は神社だよな?)

(今は彼岸だし)

(なんか出そうで怖い)

(正直、早く離れたい……)

美月

ねえ、行ってみない?

行くって……どこに?

美月

だから、公園!

美月

みんな、何してるんだろう?

うーん……

なんだろうな?

(なんでもいいから、早く帰りたい……)

(明日、仕事早いのに)

ゆら……

……っ!

(今……なんか光った……?)

美月

ねえねえ、今の見た!?

美月

なんだろう?

さ、さあ?

(まさか、火の玉!?)

(やめてくれよ!俺、怖いの苦手なのに!)

美月

ねえ行ってみようよ

え?

美月に手を引かれ

隣の神社へと進む

そこに居たのは……

人と……動物?

子どもと大人 そして動物たち

合わせて10人(?) ほどが輪になり

楽しそうに笑っていた

美月

何してるんだろう?

うーん。お参り、とか?

美月

こんな時間に?

変、だよな……

僕が首を傾げると

月明かりが 子どもを照らした

ひっ……

その姿を見て 思わず息をのむ

子どもの目は 1つしか無かった

顔の中心に まん丸な目玉が1つだけ

よく見てみると……

他の人も 顔面に口だけだったり

ヘビのように首を 長くしている者がいたり

(なんなんだ)

そして動物たちのシッポは

どれも2つに裂けている

(なんなんだよ、これ!)

幸いなことに

コチラには 気づいていないようだ

(こっちには気づいてないみたいだ)

(今のうちに、逃げるか!?)

美月……

隣の美月を見る

美月

楽しそう……

(笑って……る?)

月明かりの下

青白く輝く美月は とても綺麗で

「帰ろう」とは、 言えなくなった

だあれも知らない この場所で

モノノケたちが 宴をあげる

火の玉を投げ合う者

追いかけ合う者たち

モノノケたちの間には

人間も動物も境がなく

誰もが幸せそう

(まるで……)

(夜の運動会だな)

時を忘れ見守っていると

モノノケたちが ペアを組んで

暗がりへと向かう

少しだけ嬉しそうに

でもどこか恥ずかしげに

(そうか……)

(あの宴は)

(出会いの場でもあったのか……)

番を見つけた モノノケたちの

邪魔にならぬよう

息を殺して見守る

……

美月

……

帰った……?

美月

みたい、だね

美月

美月

ごめんね?

いや、全然

美月

でも、苦手でしょ?

美月

……怖いの

平気、平気!

ぜんっぜん、怖くなかったし!!

(本当は……)

(ちょっとだけ、怖かったけど)

美月

美月

……ごめんね?

えっ!?

美月の細い指がするりと

僕の指にからまった

美月

明日、早いんでしょ?

……うん

美月

……私たちも、する?

なっ!?

「なにを?」とは、 言えない

月の僅かな光でさえ

美月の頬が朱に染まるのを

教えてくれるから

美月……

今度は、俺の番

美月

ふっくらと柔らかな唇に

優しく口づけて

細い体を抱きしめる

(俺たちも……)

(見られてるのかな?)

物陰からそおっと

モノノケたちに……

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コメント

6

ユーザー

怖いけどロマンチックで素敵な物語ですね😊✨

ユーザー
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