皆沼 梨央
(7色にきらめくステンドグラス)
皆沼 梨央
(銀色のリボンをたばねたようなパイプオルガン)
皆沼 梨央
(入学式の日、私は空まで届きそうなくらい高い天井を見上げてつぶやいた)
皆沼 梨央
やっと高校生になれなんだ
皆沼 梨央
(入学式を体育館じゃなくて礼拝堂でやる所とか)
皆沼 梨央
(制服がブレザーじゃなくて白いセーラー服の所とか)
皆沼 梨央
(男子が居ないところとか、中学の時と全然違う
皆沼 梨央
(ゼロからのスタートって言葉が、今の私にはぴったりだ)
皆沼 梨央
(話し声が聞こえてきた)
皆沼 梨央
(私は背筋を伸ばして目をキョロキョロ動かした)
皆沼 梨央
(あそこだ。最前列の目鼻立ちの整った子が、体をひねって後ろの席の子たちと喋っている)
皆沼 梨央
(あの子たち、もうあんなに仲良くしてる)
皆沼 梨央
(同じ中学かな?それともSNSを通じて入学前に知り合っていた?)
皆沼 梨央
(そう言えばさっき女の子達が校門で「やっと会えたね!」)
皆沼 梨央
(とスマホを手にハグしていた)
皆沼 梨央
(出遅れちゃったかな、、、)
皆沼 梨央
(セーラー服のリボンをキュッとつかんだ)
皆沼 梨央
(中学の3年間黒歴史までとは言わないけど、かぎりなく黒に近い灰色の時代だった。)
皆沼 梨央
(3年の時、私のクラスには女子のグループが四つあって、それぞれが一軍、二軍、三軍、四軍と呼ばれていた)
皆沼 梨央
(私のグループは三軍。一軍や二軍みたいに華やかじゃないし、)
皆沼 梨央
(四軍みたいに人目を気にせず、自分たちだけの世界で生きていく度胸もない)
皆沼 梨央
(つまり三軍は地味な子の集まりというわけ)
皆沼 梨央
(高校生になったら変わりたい!ううん、変わるんだ!)
皆沼 梨央
(私の過去を知らない人達に囲まれて、新たなスタートを切る)
皆沼 梨央
(そのための高校選びの条件はこんな感じ)
皆沼 梨央
(①家から離れている
②男子がいない
③制服が可愛い(見栄えアップのため))
皆沼 梨央
(3つの条件を全て満たしていたのが聖空女子学院高校だった)
皆沼 梨央
(私は必死に勉強した。親や塾の先生から「無理、無謀、最大チャレンジ校」と言われた聖空女子学院に見事合格!)
皆沼 梨央
(自分を変えるための第一ステージをクリアした
第二ステージはオシャレな子と友達になること!
でも、、、。)
皆沼 梨央
(楽しそうにおしゃべりしているのは、最前列の子達だけじゃなかった。あちこちに笑顔の花が咲いてる。)
皆沼 梨央
(胸がざわついた。礼拝堂を埋めるセーラー服の白い海におぼれて、私だけがしずんでいくような感じ。)
皆沼 梨央
(その時、誰かの手があたしの右肩に触れた)
喜久里 詩桜
名字、なんて読むの?みなぬま?
皆沼 梨央
(隣の女の子が胸元につけた私の名字を見つめていた
ステンドグラスみたいにかがやく大きな目。最前列のあの子よりも可愛い。)
皆沼 梨央
(あきれるほど聞かれた質問だけど、私ははじめてのような顔をしてこたえた)
皆沼 梨央
ううん、みなぬまと書いて『皆沼』って読むの。皆沼梨央。間違えやすいよね、、、
喜久里 詩桜
へぇー
喜久里 詩桜
かいぬまって貝に沼しか会ったことない。いいじゃん!ずっとみんなと一緒にいられそう!
喜久里 詩桜
みんなって誰って思うよねw
皆沼 梨央
ありがとう。、、、あなたは?
喜久里 詩桜
あたし?あたしは喜久里 詩桜
皆沼 梨央
え~可愛い!
喜久里 詩桜
かいりおちゃんの方が、ずっと可愛いよ!
皆沼 梨央
(すると、左に座った色白の子まで、私の名札をのぞきこんで「可愛い」と微笑んだ)
皆沼 梨央
(名札を見つめ返すと、その子はこたえた)
桜木 亜空
これ、あくあって読むの。あっ名字は桜木です
喜久里 詩桜
そこは読めるし
入学式が始まるまで、私は首をせわしなく左右に振りながら、詩桜と亜空とおしゃべりした。
中学はどこ?歩き?バス通?電車通?
部活何やってた?
中学んときなんて呼ばれてたの?、、、
詩桜がこれから、かいりおとあくあって呼ぶね!と言ったので私もじゃあ喜久里さんはシオンちゃんねと返した
礼拝堂にひびくパイプオルガンの音色。長イスにそえられた花の匂い。
春の日差しがステンドグラスをすり抜けて、マホガニー材の床板に虹を描いている。
喜久里 詩桜
なんかすごいね
皆沼 梨央
うん
喜久里 詩桜
あたしこの学校、制服で選んだんだ
皆沼 梨央
えっ、シオンちゃんも?私もだよ
喜久里 詩桜
マジッ?
桜木 亜空
あたしもそう!
喜久里 詩桜
えーアクアまで!?
皆沼 梨央
笑える〜
壇上の校長先生が私たちをにらんだ。三つの口が貝のように閉じる
皆沼 梨央
(シオンちゃんとアクアが隣でよかった)
皆沼 梨央
(さっきまでの不安はなんだったんだろう)
皆沼 梨央
(パイプオルガンの音色と一緒に気分も上昇。最高にハッピーな入学式だ。)
皆沼 梨央
(高校生活、このままハッピーでいけたらいいな)
私は両腕に2人の体温を感じながら、聖歌隊による祝福の歌に耳をすました