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蘭side
プールで泳いだ後のような 疲労感に包まれ私は電車の窓に 頭をもたせかける。
桃瀬らん
電車組の私を見送ってからバス停に 向かった親友の姿を捜し 駅前のバスターミナルを眺める。
既に発車した後なのかバスも 恋醒の姿も見当たらない。
桃瀬らん
スカートのポケットに 手を突っ込みスマホを取り出す。
ロック画面パッとついた瞬間 美琴から新着通知が 来ていたのに気が付いた。
桃瀬らん
急ぎの用事ではないことを祈りながら 慌てて美琴とのトーク画面を開く。
桜黄みこと
桜黄みこと
美琴の優しい文面に緩み切った涙腺が 堪えきれずに視界が滲む。
私は指先で目元を拭い 返信を 打とうとする。
だがいつまで経ってもキーボードを フリックすることは出来なかった。
桃瀬らん
桃瀬らん
私が聞いた限りではコンクールが 終わると今度は澄絺の方から一緒には 帰れないと言われたらしい。
映画作りの追い込み中だからと いうのが理由らしいがなんとなく それだけではないような気がして 胸がざわついたのを覚えている。
桃瀬らん
そんそわと落ち着かないのは 澄絺が誰かに告白をする つもりだと知ったからだ。
桃瀬らん
コツッと窓ガラスに頭をぶつけ 余計なことを考えないようにする。
口を挟まない、見守ると 決めたのは自分だ。
不意に手の中でスマホが振動した。
びくりと肩を揺らし私は恐る恐る 相手を確認する。
桃瀬らん
意外な相手からの連絡に 咄嗟に声が洩れた。
帰宅ラッシュ前の車両は 乗客がまばらで思った以上に 響いてしまったがこちらに視線を 向けてくる人は殆どいない。
ほっと胸を撫で下ろし私は改めて 奈唯心くんとのトーク画面を開く。
乾ないこ
たった一行、時間の指定もなかった。
几帳面で丁寧に文を書く 奈唯心くんとは思えない内容に 思わず差出人を二度見する。
だがやはりLINEは奈唯心くんからの もので私は途方に暮れてしまう。
桃瀬らん
用事があったとか、適当に言い訳 すれば済むのかもしれない。
それよりは返信してどういうことか 聞いた方がいいだろう。
しかし、どちらの方法を取ることも 気が進まなかった。
桃瀬らん
やはりこれも根拠のない勘だったが 何となくそれが正しいような 気がしていた。
最寄り駅まで残り2分もない。
駅から公園までは10分程だ。
15分程で到着するとだけ 打ち込みぎゅっと目を瞑って 送信ボタンを押した。
すぐに奈唯心くんから『ありがとう』 と返信が届き今更心臓が騒ぎ出した。
桃瀬らん
桃瀬らん
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