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花梨
148
『危険ですので、絶対に家から出ないでください』
そう言って降谷が出て行った日から、もう数日。あの人は、一度も帰ってきていない。
深緒はソファに座ったまま、ぼんやりスマホを見つめていた。 そのまま無意識にカメラロールを開く。
そして、ある1枚の写真で指先が止まる。
松田深緒
片手で車のハンドルを握りながら、前を見て笑ってる。 深緒は少しだけ口元を緩める。
松田深緒
写真を横へ送る。また研二。今度は動画だった。
ーーーーー
萩原研二
笑い声。風の音。信号待ち。
萩原研二
萩原研二
萩原研二
そこで動画がぶれる。たぶん深緒が笑った。
松田深緒
萩原研二
松田深緒
萩原研二
動画の中で、二人が笑っている。なんでもない、ただの日常。
動画が終わる。部屋が静かになる。
松田深緒
画面に映る研二をみて、思わず零れる。もちろん返事なんてない。 でも、聞いてほしかった。
松田深緒
掠れた声。
松田深緒
松田深緒
松田深緒
それは分かる。危険なことも。自分が狙われる可能性があることも。全部。 でも。
松田深緒
ぽつりと落ちる。
松田深緒
静かな声だった。責めるでもなく。怒るでもなく。ただ、本音だった。
松田深緒
松田深緒
松田深緒
分からない。知らされない。
置いていかれている感覚だけが残る。
深緒は目を閉じた。そして。ふと、昔を思い出した。
ーーーーー
モブ
女子更衣室に悲鳴が響いた。
盗撮だ。
泣き出す女子達。震えている子。
モブ
モブ
そんな声が飛び交う。深緒は、泣いている友達を見た。
モブ
その言葉を聞いた瞬間。気づけば走り出していた。
校門を飛び出す。逃げる男子生徒三人。一人の手にはスマホ。
松田深緒
男子生徒
振り返った男子へ、深緒の蹴りが飛ぶ。一人転倒。スマホが飛ぶ。
男子生徒
残り二人が逃げようとする。深緒は止まらなかった。
落ちていた空き缶を蹴り飛ばす。男子の足へ直撃。バランスを崩したところを、壁へ叩きつけた。
男子生徒
松田深緒
男子生徒
松田深緒
完全に頭へ血が上っていた。
男子生徒
松田深緒
その瞬間。背後から、聞き慣れた声が飛ぶ。
萩原研二
逃げようとしたもう1人の男子の首根っこを、長い腕がひょいと掴む。
男子生徒
萩原研二
制服姿の研二。だいぶ息が上がっている。たぶん、全力で追いかけてきた。
萩原研二
松田深緒
萩原研二
第一声がそれだった。深緒は少し目を瞬く。
萩原研二
萩原研二
松田深緒
研二は心底安心したみたいに、大きく息を吐いた。
萩原研二
研二は男子生徒達と、拳を握った深緒を見比べる。
萩原研二
でも。男子のスマホ画面を見て、研二の目が変わる。
女子更衣室の動画。深緒はスマホを拾い上げ、低く言った。
松田深緒
男子生徒
萩原研二
低い声。さっきまでの軽さが消えていた。
男子が怯む。研二は笑みを浮かべた。でも、目だけ笑っていない。
萩原研二
萩原研二
結局。動画は、クラウド含め全て削除させた。
その後。当然のように、二人まとめて職員室へ連行された。
ーー職員室ーー
教師
怒鳴り声が響く。
教師
頭を抱える教師。
教師
松田深緒
そして今度は研二を見る。
教師
教師
萩原研二
教師
萩原研二
教師
その後、一時間しっかり怒られた。
でも。 職員室を出たあと、女子達が泣きながら「ありがとう」と言ってくれた。 それだけで、少し救われた気がした。
帰り道。 研二はしばらく黙って歩いていた。その静けさが、少しだけ怖い。
松田深緒
萩原研二
松田深緒
松田深緒
萩原研二
即答だった。深緒が視線を逸らす。
研二が、深緒の頭を軽く小突く。
萩原研二
萩原研二
怒鳴ることはしなかった。頭ごなしに否定もされなかった。
松田深緒
萩原研二
松田深緒
松田深緒
すると研二は、
萩原研二
納得したみたいに頷いた。そして。
萩原研二
少しだけ真面目な声になる。
萩原研二
松田深緒
萩原研二
萩原研二
珍しく、はっきり怒っていた。
萩原研二
萩原研二
萩原研二
松田深緒
萩原研二
萩原研二
深緒は小さく謝った。
松田深緒
研二は短く息を吐く。
萩原研二
萩原研二
松田深緒
松田深緒
萩原研二
そのあと、研二は小さく笑った。
萩原研二
松田深緒
萩原研二
図星だった。研二は困ったみたいに笑う。
萩原研二
萩原研二
夕焼けの光が、横顔を照らす。
萩原研二
本当に自然に、そう言った。
ーーーーー
松田深緒
深緒は唇を噛む。
そうだった。 研二は、「危ない、だからやめろ」じゃなくて。“何がしたいのか”を聞いてくれた。 正直な気持ちを。
その上で、危なくない方法を一緒に考えてくれた。
逆もまた然りだ。隠したままにしない人だった。
ーーーーー
危険な現場のあと。珍しく遅く帰ってきた日。
萩原研二
萩原研二
深緒は、“何かあった”とすぐ分かった。研二は誤魔化さなかった。
萩原研二
そう言って。話せる範囲で、ちゃんと説明してくれた。
萩原研二
萩原研二
萩原研二
ーーーーー
最後はふざけて笑っていたけど。 それでも、 “何も知らされない不安” を放っておかない人だった。
一緒に背負おうとする人だった。
松田深緒
胸が痛い。今なら分かる。
自分はたぶん、守られたいわけじゃない。一緒に背負いたいんだ。
仲間が拘束されて。 所長が死んで。 何かが起きてる。
なのに、自分だけ何もできない。それが苦しい。
深緒はゆっくり立ち上がり、鞄を手にする。ふと、窓の外へ目を向けた。
窓ガラスに映る人影。 マンションの下、同じ場所にずっと停まっている車。 数日前から変わらない。
松田深緒
監視がつけられている。 気付かないほど鈍くはない。深緒は静かにバッグを持った。
松田深緒
コメント
2件
おお~!ついにルンルンお出k(((殴 相手多いだろ~なぁ…深緒ちゃん頑張れ! あと返信してくれてありがとう!