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学校には幽霊がいた。
白い服を着た女の幽霊。
けれど俺は、
初めてその人を見て
初めて人を
美しいと思った。
救戸
あ、幸子さん
救戸
こんばんは。
幸子
幸子
こんばんは…。
救戸
元気が無いですね
幸子
幸子
なぜ、キミは私に親切に接してくれるの？
救戸
貴女が好きだからです
幸子
…私、幽霊だよ
幸子
わかってるよね？
救戸
わかってます。
幸子
さっさと寺の方を呼んで私を地獄へ連れて行けばいいものを…
寺のお坊さんを呼ぶと、
幽霊は地獄に行ってしまうのだという。
救戸
駄目です
幸子
なぜ？
救戸
貴女が傷つくから。
幸子
幸子
！
救戸
幽霊だろうが何だろうが
救戸
僕は貴女が好きだ
幸子
何回目なのよ、告白…
幸子
ただ私は成仏できないからここにいただけなのに。
幸子
貴方に会ってからは
幸子
毎日胸が苦しくて…
幸子
幸子
おかしい、よね。
救戸
いいえ、おかしくなんかないです。
幽霊に恋した僕がおかしいんです、きっと。
幽霊に恋した僕がおかしいんです、きっと。
救戸
でも、幽霊だろうが何だろうが
救戸
僕は貴女の側にいたい。
救戸
そう思っています。
幸子
幸子
キミ、名前なに？
救戸
救戸(すくいど)です。
幸子
変わった名前。
救戸
名字なんですけどね。
救戸
名字でも珍しいってよく言われます。
幸子
救戸くん。
幸子
私だって…
幸子
幸子
私だって、キミが好き。
幸子
けど私は幽霊で
幸子
この世に居ない存在だから
幸子
この想いを実らせるのは無理。
救戸
何で！？
救戸
きっと可能です…
幸子
可能じゃないよ！！
救戸
！
幸子
これから二人でデートに行って
幸子
カフェでお喋りをして
幸子
遊園地で遊んで、観覧車の頂上でロマンチックなキスをして
幸子
結婚して
幸子
子供を産んで
幸子
死ぬまで一緒に居るなんて
幸子
そんな幸せで当たり前の事が出来ないんだよ…？
救戸
救戸
それでもいいです
幸子
え…？
救戸
そんな当たり前の事も
救戸
大切かもしれないけど
救戸
僕は今この時間が1番幸せです
救戸
子供もいらない、
救戸
結婚しなくたっていい、
救戸
遊園地やカフェに行かなくてもいい。
救戸
ただ、
救戸
僕は。
救戸
救戸
貴女を幸せにしたいんです
幸子
幸子
…っ、っ…
幸子
あぁぁぁぁぁぁぁ！！
幸子さんは泣いた。
幸子
ありがとう…
幸子
救戸くん、ありがとう…！
幸子
ほんとに貴方は私を救ってくれた…
幸子
もう心残りは無い。
幸子
成仏してあの世に行ける。
救戸
救戸
心残り？
幸子
私ね、誰にも愛されず虐待死したから
幸子
誰かに愛されたかったの
幸子
それだけが心残りだった。
幸子
けど、今は
幸子
救戸くんが愛してくれた。
幸子
ありがとう…
救戸
ってことは…
幸子
うん。
幸子
天国に、行ってくるよ。
幸子
幸子
さよなら。
救戸
救戸
待って！！！
僕は幸子さんの腕を掴んだ。
何故かその時はしっかりと掴めた。
僕は幸子さんを引き寄せ
そっと彼女の唇に
キスをした。
幸子
幸子
…！？
救戸
さようなら、幸子さん。
幸子
救戸くんのばか。
幸子さんはそう笑って消えてった。
救戸
救戸
ん？
足元にメモが落ちていた。
『救戸くんへ 私の分まで長生きしてね。 天国で待っています。 幸子より』
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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