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夏の音が聞こえる

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夏の音が聞こえる

1 - 夏の音が聞こえる

♥

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2019年08月11日

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ミーンミーン。

ジリジリジリ。

???

ふー!あつい、あつい

???

やっと着いた~~!

汗だくなスーツ姿の男性が、ひとり。

???

んもー、遅いよ!!!

???

ずっと待ってたんだから!!

白いワンピースに麦わら帽を被った華奢な少女が男を叱る。

???

遅れてごめんな、朱里。

男性は愛おしげに見つめる。

朱里

ホントだよ!!!

朱里

智は東京に行っちゃって、1年に1回しか会えないんだから。

朱里

もっと私との再会のために必死になってくれてもいいんじゃないの~??

朱里はふくれっ面でぷいとそっぽを向いた。

智哉

怒ってんの?(笑)

朱里

怒ってるよ!!!

智哉

……

智哉は1人ふ、と笑う。

智哉

まあほら、いつもの花、持ってきてやったからさ。

智哉

これで機嫌直してくれねえかな~、…なんつって

朱里

うわあ!向日葵だ!!!

朱里

やっぱこれがないと夏って感じしませんよねっ!!

朱里

この辺、花っていえば一種類しか咲かないからさあ、向日葵、見たかったんだあ!!

朱里は向日葵を目にしぴょんぴょん飛び跳ねた。

ミーンミーン、ジリジリジリ。

輝く太陽が容赦なく照りつけ、 蝉が命いっぱいに、鳴く。

智哉

なあ、俺、さ

朱里

何よ

智哉

夢を叶えるために東京に行ったつもりだったんだ。

智哉

お前と約束しただろ。俺、夢を叶えるって。

智哉

でも、この村にいちゃ夢は叶わない

智哉

だから…お前をここに置いてでも、村を出て、東京に行った

朱里

ん、そうだったね

智哉

でも…何もかも、全然、上手くいかなくて。お前には才能がない、諦めろってこの間師匠にも言われちまってさ…

智哉

なんかさ。わかんなくなっちまったんだよなあ…このまま夢を追いかけていいのかな。俺もいい歳だしさ…

智哉

忙しくてお前に会いに行けるのもこの夏の1年に1回。

智哉

なんかさ…おれ、情けなくてたまんねえよ。朱里。

朱里

智…

智哉

って!なんか、俺ばっかり話しちまって、ごめんな!!

朱里

ううん、智の気持ち、伝わるよ。

朱里

すごく、すごく伝わってるよ……

智哉

おれ、村に戻ろうかな…

智哉

ごめんな、朱里。応援してくれたのに。お前がそばにいないのも、もう耐えられないよ

…………

ビュオオオッ

突然、凄まじい風が吹いた。

向日葵が、揺れる。

朱里

駄目だよ!!!

朱里

何言ってるの!!!

朱里

智には、小さい頃から、ずっと!ずっと……!!!見てきた夢がある!!

朱里

たとえ叶わなくても…!!智がその夢を追い続けることは、誰にも止められないんだよ。

朱里

お師匠様にも…私にだって。

朱里

智、諦めないで。とも。

朱里

私は大丈夫だから。ここで、ずっと待ってるから……

たとえ……

智哉

風……?

智哉

はは。なんか、朱里に諭されてるみてーじゃん。

智哉

お前、死んだ後も、俺の事励ましてくれてんのかよ。

たとえ、智に言葉が届かなくたって。

朱里

智…………
聞こえなくたって…ここにいるよ…

朱里

ここに居るの…ずっと智を見てる

智哉

朱里。そこにいるんだよな。なあ。

…… 返事なんか聞こえない。

ミーンミーン、ジリジリジリ。

聞こえるのは、蝉の声だけ。 目の前には、お前の墓だけ。

でも、確かに感じる。朱里が俺を見てる。

智哉

…うっし。

智哉

東京、戻るよ。

朱里

夢、追い続けるんだね…

朱里

また、来てね。

智哉

また、夏に必ず来るから。

朱里

うん。向日葵ないとダメだからね。

智哉

向日葵もかかさず持ってくるよ。

朱里

うん。来なかったら、私から行って智に取り憑いちゃうんだからね。

智哉

朱里のことだから、行かなかったら向こうから来るんだろうなー(笑)

朱里

うん。行っちゃうから……

智哉

じゃあ、そろそろ行くな。

朱里

うん。

朱里

ね、ね、智。

智哉

なあ、朱里。

大好きだよ……

智哉

じゃあ、な。

朱里

うん。

ミーンミーン、ジリジリジリ。

聞こえるのは、蝉の音だけ…

でも。

確かに聞こえた、2人だけの夏の音。

終わり。

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