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ぬし
夜は、どこまでも深く、濡れた空気を含んでいた。 街灯の薄い光も、闇の前ではただの霞でしかない。 ロシアは影の中を歩く。 高く、長い背を屈めながら、寒さで震える指先を擦った。
ロシア
口には出さずとも、心は自分を責め、呪う。 目立つこと、それだけで罪に思える夜。 彼の周囲には、誰もいない。いや、誰も近づけない。
アメリカ
遠くで、明るい声が聞こえた。 アメリカだ。 腕に巻かれた包帯を隠すように、無邪気な笑顔を浮かべながら近づいてくる。 その笑顔は、救いでもあり、鋭利な刃でもあった。
ロシア
声は弱く、しかし拒絶の意思は明確だ。 それでもアメリカは、陽気に、彼を抱きしめる。 その瞬間、ロシアの中の小さな灯火が揺れる。
一方、少し離れた路地で、ニュージーランドが静かに見下ろしていた。 オーストラリアを、守りたげに。 その瞳には、怒りと愛情が混ざった冷たい光が宿る。
ニュージーランド
無意識の言葉が、暗い夜に溶けていった。
イタリア
遠くで笑うのは、イタリア。 派手な声と身振りで、空気を揺らす。 だがその笑顔は仮面に過ぎない。 笑わせる自分こそが、自分の存在意義だと、どこかで強く信じている。
フランス
フランスは鏡を覗き込みながら口角を上げる。 それは自信ではなく、自己暗示。 鏡の中の自分にしか信頼できない、脆い仮面。
日本は静かに和室で微笑む。 優しさで自分を縛り、他人の痛みを背負う。 その微笑みは、誰かを癒すためではなく、 自分を許すための鎖でもあった。
カナダは、遠くから冷静にすべてを見つめる。 優しそうに見えても、その内側には、誰も触れられない氷が広がっている。 オーストラリアの痛みも、無言で受け止める。 しかし、その視線は決して温かくはない。
ドイツは、規律に従い、静かに歩く。 表面上は冷静だが、胸の奥には哀れさが隠れている。 過去を背負った孤独が、歩く足音に溶け込んでいる。
オーストラリアは、マイペースに歩きながらも、腕を軽く掻く。 誰も気づかない痛みを抱えて、暑さのせいにして笑う。 自分のことを嫌いすぎて、どうにも止まらない。
深い夜の中で、世界は静かに狂っていた。 誰も悪くない。 誰も救われない。 それでも、表面には笑顔が咲き、光が揺れている。
――その光は、やがて影に飲まれるだろう。 狂い咲く影の下で、すべての国々は、それぞれの痛みを抱えたまま、夜を生きていた。