その日は秋祭りだった。
ただの秋祭りだった。
でもその日は 君といられる最後の日。
麻里奈
凜音
凜音
彼女は祖母のいる田舎に引っ越すのだ。
今日が終われば またいつもと同じ日常がやってくるのに
それなのに…
明日から君はいない。
凜音
ずっと好きだった。
大好きだった。
大好きな人が自分の前から 消えてしまうなんて
嫌に決まってる。
麻里奈
凜音
凜音
いつもと違うのは 可愛らしい着物ただそれだけなのに
なぜかいつもより ずっと色っぽく見える君を…
僕は君を見つめていた。
そして時間だけが過ぎていった。
麻里奈
ふと君は眉をよせて尋ねた。
凜音
街灯に照らされて影ができていた。
麻里奈
麻里奈
麻里奈
やがて2つあった影の片方が 自分の影から離れていく…
凜音
僕は手を振った。
君の姿が遠くへと消えていく…
僕を置いていって。
完全にバイバイだ。
夜が沈んでいくのが 何故かわかった。
凜音
泣いちゃだめ…
泣いちゃだめだ………
でも………
凜音
本当はいいたいんだ……
『いかないで』
って……
嫌だ…離れたくない……っ
凜音
凜音
麻里奈
麻里奈
遠くに行ったはずの 君がまだそこにいた。
凜音
凜音
麻里奈
凜音
麻里奈
彼女は表情を一瞬曇らせたが… やがて……
麻里奈
麻里奈
少しだけ笑った。
それなのに、
駅のホームにつくまで 僕はなにも言えなかった。
最終便の電車が カタンカタンと揺れてやってくる…
麻里奈
麻里奈
麻里奈
麻里奈
彼女らしい シンプルな別れの言葉だった。
今度こそ止めなきゃ……
僕は大きく息を吸う。
凜音
凜音
麻里奈
麻里奈
凜音
『いかないで』
何度もその言葉が出てこない……
今度こそ言うはずだったのに…
凜音
凜音
僕は口をつぐんだ。
麻里奈
本当は……
本当はちょっとでもいいから…
君の足を止めたかった…
ううん。
行かないでほしかった。
麻里奈
だけども君は早足ですっと 前を行く。
言いたかった言葉…
叫びたかった言葉があったのに…
涙がこみ上げてくる………
凜音
泣いちゃだめだ………
泣いてもどうにもならないのに…
でもどうしても嫌なんだ……
麻里奈は最終便に乗り込んだ。
僕を置いてって。
ドアが閉まった。
もう彼女は振り返らなかった。
凜音
もう君には会えない。
深い夜が僕にそう思わせた。
カタンカタン
走り出す。ゆっくりと…
地面がずれていく………
凜音
君の乗った電車が…、
もう随分と見えなくなった頃…
明るい夜が崩れていった。
そして静寂がおとずれる……
凜音
あぁ…最後まで駄目だった。
凜音
なんだよ…… 今泣いたって仕方ないんだって…
今も…さっきも……ずっと。
でも本当に嫌だった。
大好きな君を手放したくなかったんだ
凜音
凜音
凜音
凜音
凜音
僕は1人 虚しい夜に叫んだ。
駅のホームで… たった1人で……
コメント
1件
引き留めていれば、の話ですね