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オリバー

夕食、出来たよ

アルバート

ありがとな

俺はアルバートの前にポトフを置く

碧色の瞳が、ポトフを覗き込む

俺の記憶が正しければ、アルバートの結構好きな料理の筈だ

オリバー

敢えて味とかは聞かないでおこうかな

アルバート

ローズヒップティーの事気にしてんのか?

オリバー

別に気にしてないけど?

オリバー

なんか美味しいって言うように強要させているみたいでしょ?

オリバー

俺的にはなんか違うなって

アルバート

……そうか

やっぱり気にしていたんだ

その言葉を俺は喉の奥へと飲み込む

今日は散々色んな事思い出させちゃったから、あまりからかったらダメだよね

アルバート

うーんでも…

アルバート

これは、美味い

オリバー

そう?

アルバート

ああ

アルバート

ありがとう

オリバー

いいよ、

アルバート

今日は色々

オリバー

………………!

アルバートはいつもお礼はしてくれるいいやつだ

でも、何でかな

今のお礼は、いつもより格段に嬉しかった

というか、初めてお礼されたかの様に感じちゃった

アルバート

……何ぼーっとしてんだよ

オリバー

ごめん、驚いてさ

アルバート

ふーん

アルバートは軽く息を吐いて応答すると、フランスの家庭料理を無言で口に含んでいく

よっぽど美味しいんだろうな

俺はそう思っておく事にし、自分で作ったポトフを一口食べてみる

フランス人の友人が作ったやつには遠く及ばないけれど、初めて作った時よりは結構マシになったかな

アルバート

ごちそうさま

アルバートは、ポトフを一滴残さず食べきると手を合わせそう言った

オリバー

おかわり、いる?

アルバート

うーん…そうだな

アルバートは、無意識に左上の方を見ながら考える

人間は過去の事を思い出すときは右上、未来の事を考える時は左上を見るって言われているからそれもあるんだろう

やがてアルバートは、こちらを向き俺の提案を断ると、ソファの方へ移動した

オリバー

手伝おうか?

アルバート

必要ない

アルバートはソファの前に行き、うまく体重を前にかけてソファに乗り、腕の力だけで向きを変えた

アルバート

どうだ?

オリバー

…なかなかやるね

俺は半分くらいになったポトフを口に入れ、そう答えた

アルバートの好きなラジオのチャンネルのドラマが聞こえてくる

アルバート

…なぁ、お前

オリバー

んー?どうしたの?

俺はラジオ越しに聞こえる叫び声を横に、オリバーに話しかけた

アルバート

寝る時、話があるんだ

オリバー

えー?何!?

予想通り、オリバーは目を輝かせる

ここ三年くらい考えていた事が、もしかしたら正解なのかもしれない

アルバート

内容は、その時になったら話すよ

オリバー

それって、楽しみにしてもいいやつ?

アルバート

そこはお前の自由だ

オリバー

はーい!

ああ……俺は残酷だ

オリバーに期待させている

でも、俺にはこう言うしかできない

そんなに、優れた人間じゃねーからな

オリバー

ふふふふーん

オリバー

何かなー、アルバートからの話って

もしかしたら、俺の気持ちに気付いてくれたのかもしれない

そうだったら、どれ程幸せだろうか

三年間、ケイティに失礼なくらいに嫉妬していた

それでも、ケイティを失ったアルバートの為にも、死んだケイティの為にも

絶対にその思いは顔にも口にも出さないと決めていた

この想いがやっと届くのか、また別の話なのかは分からないけれど

ワクワクするのは変わりない

オリバー

ふふーんふふふふ

アルバート

うるせー!ラジオ聞こえないだろ!

オリバー

ごめーん!

リビングからの声に応答した俺は、この何とも言えない気持ちをぶつけるかの様に

石鹸をつけたスポンジで、スープカップを擦り続けた

夜、俺はアルバートと寝室に行くタイミングで、話を聞く事になった

今は、アルバートを抱えて、ベッドに寝かせているところ

オリバー

それじゃあ、話聞くよ

ベッドから離れようとする俺にアルバートは

アルバート

待て、ここで聞いてくれ

オリバー

んー何?

本当に俺の心臓は今バクバクしている

本当に、俺の願いは叶うのか!

アルバート

実は…お前が言いたい事があるんじゃないかって思って呼んだんだ

アルバート

普段言いにくい事でもいい、俺を罵倒してくれてもいい

アルバート

だから、俺に…正直に思った事を言ってくれ!

オリバー

…………!

オリバー

じゃあ、言わせてもらうよ!

これはチャンスだ

神はまだ、俺を見捨ててはいなかったんだ!

アルバート

あ、ああ…

オリバー

俺、…いつだったかな

オリバー

確か、ケイティが死んで一年くらい経った頃

オリバー

つまり、2年前くらいからは、確実に

オリバー

お前の事が好きだったんだ!

アルバート

…やっぱりな

オリバー

は?お前知ってたの

オリバー

お前はその気持ちを知ってて、いつまでも俺にケイティの話を続けたのか!

俺ははらわたが煮えくりかえりそうになった

俺の気持ちを知って、こいつは…

何も知らないという顔をしていたのか!

きっとこんな事をするのは間違っている

それでも、それでも!

俺は許す事が出来なかった

アルバート

なぁ待ってくれ!

オリバー

黙れよ!

ああ、これが俺の本性か

足が不随になっている人間の胸ぐらを掴んで、罵倒する

なんて情けない

アルバート

お前はすぐに他人の意見も考えずに突っ走る!

アルバート

目が見えなくなったのも、そのせいだっただろ!

アルバート

勝手に胸ぐら掴むんじゃねえよ

オリバー

いてっ

思いっきり顔面に頭突きを食らって、思わず数歩後ずさる

アルバート

俺だってこの話の為にお前を読んだ

アルバート

まずは俺の解答と話を聞いてもらう!

オリバー

え、あはい!

あまりの剣幕に、思わず返事をしてしまう

ふつうに軍の上官よりも怖かったとか言ったら後で怒られそうだけど

アルバート

…答えはノーだ

アルバート

俺はバイセクシャルだが、お前とは付き合えない

アルバート

もちろん他の奴ともだ

オリバー

うん

あれ?なんでだろ

さっきは、はらわたが本当に煮えくりかえりそうだったのに

いざ事実を突きつけられても、大して怒りは湧いてこない

こうなることは、分かっていたからだろうか

アルバート

それほど、俺は…

アルバート

ケイティ・マイラスを忘れられないんだ…

オリバー

うん、知ってる

アルバート

お前の気持ちは、とっくに気付いていたのに

アルバート

俺は何もいえなかった

アルバート

本当にすまなかった…いつも楽しそうに笑うお前に、何も出来なくって

アルバート

ケイティ…俺は、どうしたらいいんだ

アルバートは、掛け布団に顔を埋める

うう…ううと嗚咽を圧し殺す声が聞こえてくる

あーあ、気付かれていないと思ってたのになぁ

俺はそんなに演技が下手かと、少し残念に思った

でも、今は俺の事なんかよりも

オリバー

アルバート・エヴァンズ

アルバート

な、なんだ?

フルネームを呼ばれたからか、アルバートは驚いて顔を上げた

少し目が腫れている

オリバー

君は何もしなくていい

オリバー

俺はケイティを愛し続けるお前も好きだ

オリバー

お前がケイティとの思い出と共に生きるのが幸せなら、俺は別にお前が俺を好きになってくれなくてもいい

アルバート

…本当か

オリバー

勿論

あれ?どうしてこんなに簡単に諦められちゃうのかな

あれほど執着していたのに

それほどケイティとアルバートがお似合いだったのだろうか

俺は好きなやつとその彼女がお似合いだからって、簡単に諦められる様な男か?

ケイティ

アルバート!

アルバート

ん?ケイティか

ケイティ

私、何かとアンタの事怒ったり、間抜けって言ってるけど

ケイティ

あなたの事が大好きよ

アルバート

…ありがとな

ケイティ

ねぇ、アルバート

アルバート

どうしたんだよ

ケイティ

もしも私が先に死んでも、馬鹿みたいに墓に縋り付いて泣くんじゃないからね

アルバート

いきなり不謹慎だなあ

ケイティ

そこに私はいないわ

ケイティ

私がいるのはアルバート

ケイティ

あなたの心の中だけよ

ケイティ

他のやつの心の中になんかいないから

ケイティ

後、絶対にあんな石の中には入らん!

アルバート

分かったから、もっと俺らが年取ってからもう一度話してくれ

ケイティ

ええ、勿論よ

ケイティ

忘れん坊のアンタには、何度でも話してあげるわ

ケイティ

アルバート…

アルバート

なんだ

ケイティ

…愛してるわ、永遠に

アルバート

…俺もだ

アルバート

絶対生還するからな

ケイティ

ええ、ええ!

いいや、あの二人は本気で愛し合っていた

似合う似合わないって話じゃない

あれほど心の底から繋がりあっている恋人同士はなかなかいない

きっとケイティは、死してなお

アルバートと繋がっている

アルバートがケイティを忘れないのはそのお陰だ

もう俺には、二人の中に入る余地はない

いや、最初から

なかった

オリバー

うん…そうだよな…うん

あれ?目頭が熱い

そうか…そうか

また俺

オリバー

泣いてるん…だな

アルバート

わ、悪い…泣かせる気なんて…

オリバー

いいの、悲しいわけじゃない…嬉しいんだ

オリバー

お前とケイティ、本当に幸せそうで

ケイティ

アルバート!アルバート!

オリバー

本当に…本当に…

ケイティの澄んだ声が、俺の脳内でこだまする

ケイティ

大好きよ、アルバート

オリバー

ああああああああああああああああああああああああああああ!

おかしくなってしまう程に

アルバート

オリバー!

あ、お前今…叫んだでしょ

ごめん、今は涙で前が見えなくて

でも、倒れてる…気がするなあ

翌朝

アルバート

おい、オリバー…起きろよ!

アルバート

昨日から起こしてて…いつの間にか俺も寝ちまったみたいだけど

アルバート

頼むから起きてくれ!

なんかアルバートの声がする

昨日あのまま、発狂して疲れて寝ちゃったんだ

もうケイティの声はしない

大丈夫、俺は再び笑える

オリバー

ん…ああ

アルバート

オリバー!

オリバー

おはよ、お前に起こされるの何年ぶりだっけ?

アルバート

さぁ…ケイティに会う前だから…あっ

アルバートが慌てて口を押さえる

それが少し面白くって、俺は笑って

オリバー

いいよもう、気にしないで

オリバー

俺たち幼なじみだろ?

アルバート

…そうだな

アルバート

寝坊したお前を起こした高校生以来じゃないか?

オリバー

えー?もうそんなに長期間俺起こされてないのー?

アルバート

多分な

オリバー

いやー、時の流れは早いねー

そこまで話したところで、俺たちは床に寝転んでいるのに気づいた

俺はともかく、アルバートはどうやって下に?

オリバー

ってお前、足大丈夫なのか?

アルバート

ベッドから落ちたから、気にしてんのか?

アルバート

全く問題ねえよ

アルバート

ただ一つあるとすれば…

オリバー

どっか、痛めたのか?

アルバート

ここから移動する為の車椅子が無い事だな

ったく、こいつは

オリバー

分かった、取ってくるよ

俺たちの日常は変わらない

でも、何となく互いに吹っ切れた

アルバートは永遠の愛を守り続け

俺は永遠に愛を見つめる傍観者とし在り続ける

アルバート

なぁオリバー、今日の朝食はなんだ?

オリバー

まだ決めてないっ!何にしようか?

アルバート

そうだなぁ…たまには俺も一緒に作っていいか?

オリバー

勿論、何作りたい?

アルバート

うーん…料理初心者でも簡単に作れるもの…かな

オリバー

うわー抽象的!何にしよう

大丈夫、俺はこれからも笑っていける

ケイティ・マイラス

俺はいつまでもお前達を愛してる

勿論likeの方でね!

この作品はいかがでしたか?

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コメント

6

ユーザー

うわあ…すごい(´;ω;`)( オリバーは失恋してしまってけれども… アルバートとケイティのことを…(´;ω;`) テキストや壁紙の使い方がすごく良かったです! 参加ありがとうございました(´;ω;`)(((

ユーザー

d(^q^).。o(尊い)

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