死なないで

別れを告げた君は

とても明るそうな顔をして

とても苦しそうな顔をした

思わず口から飛び出た

死なないでという言葉

それに対して蒼は

とだけ応えた

その後話すのが

気まづくなり

家に帰ることにした

蒼は緩和ケアにするそうだ

蒼が生きているだけで

世界が輝くのに

蒼が居ない空間は

息が詰まる

僕は緩和ケアをすることにした

別れを告げた桃くんは

やっぱり毎日

僕に会いに来てくれる

緩和ケアをしてるせいで

僕は口を麻痺してきていて

喋りにくくなった

僕は理解してる

この体はもう持たない

桃くんに迷惑をかける

でもこれだけは知ってて欲しい

蒼が亡くなった

そう聞いて駆けつけたのは

君が俺に死なないで

そういった次の日だった

まだ朝日すら昇っていない

暗い部屋で

蒼は1人で亡くなった

蒼のお葬式は

簡素なものだった

写真の君は

眩いほどの笑顔なのに

棺の中で眠る

蒼は少しも笑っていなかった

幸せだったよ

そう蒼が応えてくれたように

俺には聞こえた